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#37 あずみ、自慢の美尻でヘタレ兄を尻に敷く⑨

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 あずみは片手で僕の下顎をつかみ、片手を口の中に突っ込んできた。

「や、やへろ、ろ、ろうして、く、口の中にそんな…うぎゃあああっ!」

 僕は悲鳴を上げた。

 上げざるを得なかった。
 
 ずぼっ。

 こじ開けた僕の口にずぶりと手を突っ込むと、あずみは指で奥歯の一本をつまみ、やおらギリッとひねった。

「ほら、取れた!」

 勝ち誇ったように叫んで、目の前にかざしたのは、血にまみれた僕の奥歯である。

 いや、正確にいうと、奥歯そのものではなく、先週歯医者に行って虫歯に詰めてもらった銀色の詰め物である。

「そ、それが、爆弾…?」

「たぶんそう。こんなにちっちゃいけど、下手に触るとヤバいよ、だって、これ、反物質爆弾だから。姑息なコースケのやりそうなことだよね」

 あずみが得意げに可愛い鼻をひくひくさせた。

「は、反物質爆弾?」

 マルデックの戦士、あずみが言うならきっとそうなのだろう。

 やっぱりコースケの脅迫はマジでガチの本物だったのだ。

「くそ。歯医者までグルだったとは…」

 悔しがる僕を尻目に、あずみが取り出した爆弾をぱくんと口に放り込み、ごくんと呑み込んだ。

「お、おまえ…」

 信じられない思いで、僕は目をしばたたいた。

「な、なにやってんの?」

「いつか使えるかもしれないから、これはあずみが預かっておく。ところでお兄ちゃん、わかってるよね?」

 がばっとあずみが立ち上がった。

 トップレスの女神の裸身が僕の前で全貌をさらけ出す。

 つんと上を向いた美の極致のような美乳。

 なめらかな下腹の下を、申し訳程度の総レースのパンティが覆っている。

「どう?」

 くるりと半回転すると、パンティが小さすぎて、白桃みたいな美尻が半分はみ出していた。

「さ、もう障害物はなくなったんだよ。一緒にお風呂、入るんでしょ? 早くお兄ちゃんも裸になって」

 なにもここで脱がなくても、とは思ったが、危険物を除去してもらった手前、あずみには逆らえなかった。

 僕はのろのろ服を脱ぎ捨て、パンツ一丁になると、膨らんだ前を両手で隠してあずみと向かい合った。

 こうして対峙してみると、まったく同じ人種とはとても思えない体格差である。

「あのさ、確認だけど、ほんとに風呂に入るだけなんだよな?」

 悪魔のささやきを押さえつけ、僕は努めて冷静を装い、言った。

「その後の…あれやこれやは、今回はなしってことでいいんだよな?」

「あれやこれやって?」

 とたんにあずみの目つきが険しくなる。

「それはその…いろいろさ。たとえば、恋人同士とか、夫婦とかがよくするやつだよ…」

「でも、お兄ちゃんは、本当はそのあれやこれやがしたいんじゃないの? あずみだって…」

「ま、待て。忘れては困る」
 
 あずみの怒りが沸点に達しないうちにと、僕はあわててつけ足した。

「俺たちは暗くなったら青ひげ薬局を探りに行くんだろ? また何かあったらまずい。ここで今、体力を使い果たすわけにはいかないんだ。な、そうじゃないか?」

 ほんとはもうひとつ、理由があった。

 僕がまぎれもなく童貞で、あれのやり方がよくわからないというそのことだ。

 でも、そいつはあえて黙っておくことにした。
 
 あずみがそれで僕に愛想を尽かすことはないだろうけど、兄という立場上、やはりかっこ悪すぎる。

 そう思ったからだった。
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