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#28 あずみ、得意のパンチラで怪異を圧倒する⑩

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「あずみ…」

 僕はうめいた。

 およそ信じがたい光景だった。

 あずみの背中に、日本刀が突き立っている。

 背後から近寄った巨人が、動けないあずみに容赦なく日本刀を突き刺したのだ。

 肩甲骨の間から体に中に入った刀の刃は、あずみの身体を姦通して鳩尾のあたりから外に飛び出ている。

 切っ先から鮮血がしたたり落ち、地面にぽたぽた落ちていた。

 あずみの両腕から力が抜けた。

 あずみの前にいた巨人が、自由になった日本刀を改めて頭上に振りかぶる。

「やめろ!」

 叫んだけど、無駄だった。

 巨人が刀を逆手に持ち替え、声にならぬ気合とともにあずみの胸に突き立てた。

 乳房と乳房の間を貫かれ、あずみの全身がびくんと硬直する。

 遠目にも、その横顔から血の気が引いていくのがわかった。

「お兄ちゃん…」

 あずみの口から、力のない声が漏れた。

 信じられないといった表情で、のろのろとあずみが僕のほうを振り返った、その時だった。

 ふたりの巨人が同時にあずみの身体から刀を抜いた。

 ずぼっという嫌な音が響き渡り、大量の血があずみの背中と胸から噴き上がる。

 ぐらり。

 あずみの躰がゆらいだ。

「お兄ちゃん…たす、けて…」

 あずみがもう一度つぶやいた瞬間、唸りを上げて二本の刀が宙を凪いだ。

「あうっ!」

 あずみが痙攣した。

 両肩から腕が落ち、鈍い音を立てて地面に転がった。

 傷口から噴水のように血が噴き出し、真夏の陽光を浴びて束の間虹をつくった。

「あずみ!」

 駆けだそうとした。

 だが、巨人たちの動きのほうが速かった。

 袈裟懸けに振り下ろされた日本刀が、あずみの胸から腹にかけての正中線を断ち切った。

 更にもう一本が横殴りにあずみを襲い、一撃のもとにその細い首を叩き切る。

 切断面から爆発するように血潮が噴き上がり、バレーボールよろしくあずみの首が空中に舞い上がった。

「うわああああああっ!」

 僕は絶叫した。

 信じられなかった。

 あのあずみが、死んだ…?

 マルデックの超戦士であるあずみが、こんなにもあっけなく…?

 金縛りに遭ったかのように動けないでいる僕の目の前で、巨人たちが首と両腕をなくしたあずみの身体から紙でも引き千切るように衣服を引き剥がし始めた。

 あろうことか、巨人たちは、血まみれのあずみを犯そうとしているのだ。

 その証拠に、二体の巨人の腰布がめくれあがり、その間からは節くれだった巨大な肉の僕が屹立している。

 白日のもとに、美しいあずみの裸身がさらされていく。

 綺麗に突き出した紡錘形の乳房がぷるんと弾み、なめらかな体のラインと形のいい臀部があらわになる。

 グローブのような二対の手が、あずみの華奢な肩とくびれた腰をつかむ。

 傷口からあふれ出す多量の血で、白い肌は見る間に真っ赤に染まっていく。

「やめろ…やめてくれ…」

 ぐちゃっ。

 僕の抗議もむなしく、全裸にされたあずみの躰を、凶器のような肉棒でふたりの巨人が前と後ろから同時に貫いた。

 壊れたマリオネットのように、衝撃で大きく反り返るあずみの裸体。

 そ、そんな…。

 僕はその場にくずれ落ちた。

 薄れゆく視界の隅に、地面に転がったあずみの頭部が見えた。

 生気を失い、うつろに見開かれたガラス玉のようなあずみの目には、抜けるように青い夏空が映っていた…。 
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