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#24 あずみ、得意のパンチラで怪異を圧倒する⑥
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真夏の太陽を背に、中天高く舞い上がったあずみが、錐揉み状態でミサイルのように落下する。
長く伸ばした足のつま先が、あずみのスカートを切り裂いたもう一頭の狛犬の頸筋にめりこんだ。
ギャウッ!
苦しげに吠えて、跳ねあがる黒い巨体。
その背後に華麗に着地を決めると、あずみがその太い腹を羽交い絞めにして、狛犬の躰を軽々と持ち上げた。
そしてそのままブリッジでもするように後ろに反り返り、白いパンティも露わに怪物の頭を地面に叩きつけた。
グシャッ。
頭蓋の潰れる嫌な音が境内の静寂を引き裂いた。
あずみの強烈なバックドロップを食らい、西瓜割りの西瓜よろしく脳天を潰された怪物がどたりと倒れ込む。
手を放したあずみが、腰のばねを効かせてブリッジの体勢から立ち上がる。
「狛犬が生き返るだなんて…いったい全体、どうなってるの?」
自分が仕留めた二頭の怪物の死骸を交互に眺めながら、手についた血を破れたスカートで拭う。
「あずみ、ちょっと」
駆け寄ると、僕はあずみの手を引いて耳元でささやいた。
「こんなのやりすぎだ。おまえ、目立ちすぎてるぞ。ほら、みんなこっち、見てるじゃないか」
見ているだけならまだいいのだが、中には今の大立ち回りをスマホで撮影している輩もいるようだ。
「だって、私がやらなきゃ、誰がやるの? 放っておいたら、今頃ここ、阿鼻叫喚の大惨事だよ」
あずみが不満そうに口を尖らせた。
「それはそうだけど…。とにかく、来いよ。すぐこの場を離れよう」
そして、有無を言わさずあずみの肩を抱くと、人垣をかき分けて石段を駆け下りた。
「ちょっと、お兄ちゃん、放して。痛いって。もう、わかったから!」
路地に入ったところで、あずみが僕の手を振り払った。
「何よ、いきなり。それより、あずみ、大丈夫だったか? のひと言ぐらい、言ってくれないの?」
「あ? ああ」
人気のない所まで来て、僕はようやく自分を取り戻した。
「そういや、そうだった。で、大丈夫だったか? あずみ?」
口にしてみたけれど、明らかに大丈夫でなかったのはあずみではなく、狛犬の化け物たちのほうである。
「大丈夫じゃないよ。んもう、あずみ、傷ついちゃったんだから!」
あずみの目に、おもむろに涙のしずくが盛り上がった。
長く伸ばした足のつま先が、あずみのスカートを切り裂いたもう一頭の狛犬の頸筋にめりこんだ。
ギャウッ!
苦しげに吠えて、跳ねあがる黒い巨体。
その背後に華麗に着地を決めると、あずみがその太い腹を羽交い絞めにして、狛犬の躰を軽々と持ち上げた。
そしてそのままブリッジでもするように後ろに反り返り、白いパンティも露わに怪物の頭を地面に叩きつけた。
グシャッ。
頭蓋の潰れる嫌な音が境内の静寂を引き裂いた。
あずみの強烈なバックドロップを食らい、西瓜割りの西瓜よろしく脳天を潰された怪物がどたりと倒れ込む。
手を放したあずみが、腰のばねを効かせてブリッジの体勢から立ち上がる。
「狛犬が生き返るだなんて…いったい全体、どうなってるの?」
自分が仕留めた二頭の怪物の死骸を交互に眺めながら、手についた血を破れたスカートで拭う。
「あずみ、ちょっと」
駆け寄ると、僕はあずみの手を引いて耳元でささやいた。
「こんなのやりすぎだ。おまえ、目立ちすぎてるぞ。ほら、みんなこっち、見てるじゃないか」
見ているだけならまだいいのだが、中には今の大立ち回りをスマホで撮影している輩もいるようだ。
「だって、私がやらなきゃ、誰がやるの? 放っておいたら、今頃ここ、阿鼻叫喚の大惨事だよ」
あずみが不満そうに口を尖らせた。
「それはそうだけど…。とにかく、来いよ。すぐこの場を離れよう」
そして、有無を言わさずあずみの肩を抱くと、人垣をかき分けて石段を駆け下りた。
「ちょっと、お兄ちゃん、放して。痛いって。もう、わかったから!」
路地に入ったところで、あずみが僕の手を振り払った。
「何よ、いきなり。それより、あずみ、大丈夫だったか? のひと言ぐらい、言ってくれないの?」
「あ? ああ」
人気のない所まで来て、僕はようやく自分を取り戻した。
「そういや、そうだった。で、大丈夫だったか? あずみ?」
口にしてみたけれど、明らかに大丈夫でなかったのはあずみではなく、狛犬の化け物たちのほうである。
「大丈夫じゃないよ。んもう、あずみ、傷ついちゃったんだから!」
あずみの目に、おもむろに涙のしずくが盛り上がった。
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