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#19 あずみ、得意のパンチラで怪異を圧倒する①

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 サンセット興業は、グーグルマップによると、市内の中心部に位置しているようだった。

 JR駅に向かう目抜き通りから少し外れた繁華街である。

 あずみはMARVELのロゴの入った白いTシャツにデニムのミニスカートといった、いかにも夏らしいカジュアルな出で立ちで、まあ、それはそれでいいのだが、持ち前の巨乳とセクシーな長い脚のおかげで行きの地下鉄の中でもとにかく目立ちまくっていた。

 地下鉄の階段を上がると、夏休みということもあり、地上は若いカップルや女子のグループであふれ返っていた。

 目指す雑居ビルのある通りにはファーストフード店やスイーツの店がひしめき合い、人気のタピオカ専門店の前には行列までできている始末だった。

 正午が近いせいで頭上から強烈な陽射しが照りつけてきて、人混みを縫って少し歩くだけで滝のような汗が流れ落ちてくる。

「お兄ちゃんとデートなんて、久しぶりだね」

 手の甲で額の汗を拭いながら、うれしそうに目を細めてあずみが言った。

「去年の夏休みは、私もう、戦場だったから。その前のゴールデンウィークは、ずっとゾンビだったしね」

 あずみは汗のせいでTシャツが濡れ、見事にブラのラインが浮き出ている。

 僕の忠告に従ってちゃんとブラジャーをしてきたのは感心だが、それは妙に面積の狭い眼帯型をしていて、よく見るとMARVELのロゴの下、危ないくらいに乳房のあちこちがはみ出ている。

 そんなわけで、すれ違う男たちの視線は、老いも若きもそのたっぷり盛り上がった肉の丘に釘付けだった。

 なかには連れのカノジョをほっぽらかしてあずみの胸を一心に追尾する不届き者も多く、当然の如く恋人や妻の不興を買っていた。

「まあな。俺が高3の時が最後だったかもな」

 大学に上がる前の年。

 あの夏は僕らはどうしていたのだろう。

 こんなふうにあずみと手をつないで街を歩きながら、たわいもない会話を交わしていた気がする。

 あの頃あずみはまだ中学生になったばかりで、あどけなさ全開の少女だった。

 ただ、当時からもう、女子高生に間違えられるくらい、発育のほうはなりよかったのだけれど…。

「あの頃が懐かしいよね。なーんにも考えずに、ただ笑ってればよかったあの頃が」

 遠い眼をして、あずみが言った。

 僕はなんとなくつられて、あずみの横顔を見た。

 髪をポニーテールにまとめたあずみは、僕の記憶にある彼女と比べて、ずいぶん凛々しくなっている。

 確かに、今のあずみはあの頃のあずみから、はるか遠いところに来ているのだ。

「でも、しばらくは大丈夫なんだろ? その、神々の傭兵活動のほうは」

「まあね。何か突発的な重大事案がおこんない限りは。あーあ、ずーっと平和が続いて、死ぬまでこうしてお兄ちゃんとふたり、のんびり暮らせたらいいのにな」

 ひとり言のようにつぶやいて、あずみが柔らかい身体を寄せてくる。

 こみあげる多幸感を全身で感じながら、でも、と僕は思う。

 おそらくあずみも気づいているのだろう。

 その平和な日常というやつが、早くも乱されようとしていることに…。
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