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第4章 海底原人
#15 アンアンと海底原人②
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水族館主催の抜き打ちアトラクション。
そう勘違いしたのだろうか。
犠牲者が出ているにも関わらず、客たちの大半が残っていた。
プールサイドにひしめき合い、誰もがスマホ片手に動画撮影だ。
この動画が拡散すれば、セクシーコスのアンアンは一気に人気爆発に違いない。
だが、もしここでアンアンが敗北を喫してしまったら…。
あの半魚人に蹂躙されるアンアンのあられもない姿が、全世界に広まることになる。
そう思うと居ても立ってもいられなかった。
なのに、阿修羅ときたらサングラスまでかけ、あくまで高みの見物を決め込もうとしている。
この距離では、僕の”時魔法”もアンアンには作用しないし、一ノ瀬なんかが役に立つはずないから、これはまったくもって大問題だった。
そうこうするうちに、衆人環視の中、巨大美少女VS巨大半魚人のバトルの幕はついに切って落とされたのだ。
「おほほほほ、愛しのアンアン、お待たせしたねえ。さあ、婚約パーティーの始まりだよーん!」
妙にひょうきんな口調で、ダゴンが言った。
なんかしゃべり方がオカマっぽいのは、僕の気のせいだろうか。
「誰がおまえみたいな魚臭いやつと婚約なんてするもんか! 鏡を見てからモノを言え!」
アンアンは相変わらず口が悪い。
「まあまあ、魔界の王女様ってば、ガチでツンデレなんだねえ。本当はあたしのこと、好きで好きでたまらないくせにさ。たっぷり可愛がってあげるから、ほうら、もっと近くにおいでよお」
「うるさい! このタコ!」
アンアンが飛んだ。
飛びながら右腕をスイングバック。
あれはアンアンパンチの構えだろうか。
それとも必殺ディメンション・クラッシュで、一気にカタをつけるつもりなのか。
だが、アンアンの鉄拳がダゴンに迫った瞬間、まったく予想外の事態が発生した。
ダゴンが口をすぼめたかと思うと、ぴゅっと黒い液体をアンアンに吐きかけたのだ。
「うわ」
目つぶしをくらって、針路を狂わすアンアン。
渾身のストレートが空しく空を切ったとたん、ダゴンが動いた。
右腕を一閃させ、二の腕に生えた剃刀のように鋭いヒレでアンアンに襲いかかったのだ。
赤いものが飛んだ。
血?
と思ったら、そうではなかった。
それはアンアンの紐水着の一部だった。
その証拠に、一回転して着地したアンアンは、はだけた胸を両腕で隠している。
だが、その努力も空しく、股間を覆う部分でも水着がずれ始め、大事なところが見えそうになっていた。
ひも状水着の最大の欠点。
それは一か所切断されると、簡単に分解してしまうという点にある。
「くそっ」
焦ったアンアンが、右手で胸を覆ったまま、急いで股間に左手を伸ばす。
僕は絶望的な気分に陥った。
アンアンは今や、”貝殻の上のビーナス”状態である。
これじゃ、とても戦うどころではないだろう。
「阿修羅、頼む、助けてやってくれ」
僕はデッキチェアに寝そべる阿修羅の足元にひざまずいて、土下座した。
だが、この可愛い顔した破壊神は、ファッション雑誌で顔を隠してすやすや寝息を立てている。
「おい、お願いだ。起きてくれ」
阿修羅の足首に手を伸ばしかけた時である。
「うわああああああっ!」
後ろですさまじい悲鳴が爆発した。
僕は背筋に氷の塊を当てられたように、ぎくりとなった。
その悲鳴が、まぎれもなくアンアンのものだったからである。
そう勘違いしたのだろうか。
犠牲者が出ているにも関わらず、客たちの大半が残っていた。
プールサイドにひしめき合い、誰もがスマホ片手に動画撮影だ。
この動画が拡散すれば、セクシーコスのアンアンは一気に人気爆発に違いない。
だが、もしここでアンアンが敗北を喫してしまったら…。
あの半魚人に蹂躙されるアンアンのあられもない姿が、全世界に広まることになる。
そう思うと居ても立ってもいられなかった。
なのに、阿修羅ときたらサングラスまでかけ、あくまで高みの見物を決め込もうとしている。
この距離では、僕の”時魔法”もアンアンには作用しないし、一ノ瀬なんかが役に立つはずないから、これはまったくもって大問題だった。
そうこうするうちに、衆人環視の中、巨大美少女VS巨大半魚人のバトルの幕はついに切って落とされたのだ。
「おほほほほ、愛しのアンアン、お待たせしたねえ。さあ、婚約パーティーの始まりだよーん!」
妙にひょうきんな口調で、ダゴンが言った。
なんかしゃべり方がオカマっぽいのは、僕の気のせいだろうか。
「誰がおまえみたいな魚臭いやつと婚約なんてするもんか! 鏡を見てからモノを言え!」
アンアンは相変わらず口が悪い。
「まあまあ、魔界の王女様ってば、ガチでツンデレなんだねえ。本当はあたしのこと、好きで好きでたまらないくせにさ。たっぷり可愛がってあげるから、ほうら、もっと近くにおいでよお」
「うるさい! このタコ!」
アンアンが飛んだ。
飛びながら右腕をスイングバック。
あれはアンアンパンチの構えだろうか。
それとも必殺ディメンション・クラッシュで、一気にカタをつけるつもりなのか。
だが、アンアンの鉄拳がダゴンに迫った瞬間、まったく予想外の事態が発生した。
ダゴンが口をすぼめたかと思うと、ぴゅっと黒い液体をアンアンに吐きかけたのだ。
「うわ」
目つぶしをくらって、針路を狂わすアンアン。
渾身のストレートが空しく空を切ったとたん、ダゴンが動いた。
右腕を一閃させ、二の腕に生えた剃刀のように鋭いヒレでアンアンに襲いかかったのだ。
赤いものが飛んだ。
血?
と思ったら、そうではなかった。
それはアンアンの紐水着の一部だった。
その証拠に、一回転して着地したアンアンは、はだけた胸を両腕で隠している。
だが、その努力も空しく、股間を覆う部分でも水着がずれ始め、大事なところが見えそうになっていた。
ひも状水着の最大の欠点。
それは一か所切断されると、簡単に分解してしまうという点にある。
「くそっ」
焦ったアンアンが、右手で胸を覆ったまま、急いで股間に左手を伸ばす。
僕は絶望的な気分に陥った。
アンアンは今や、”貝殻の上のビーナス”状態である。
これじゃ、とても戦うどころではないだろう。
「阿修羅、頼む、助けてやってくれ」
僕はデッキチェアに寝そべる阿修羅の足元にひざまずいて、土下座した。
だが、この可愛い顔した破壊神は、ファッション雑誌で顔を隠してすやすや寝息を立てている。
「おい、お願いだ。起きてくれ」
阿修羅の足首に手を伸ばしかけた時である。
「うわああああああっ!」
後ろですさまじい悲鳴が爆発した。
僕は背筋に氷の塊を当てられたように、ぎくりとなった。
その悲鳴が、まぎれもなくアンアンのものだったからである。
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