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第6章 アンアン魔界行
#137 アンアン、死す④
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グギッ。
ギッ。
ギギッ。
軋みを上げて、阿修羅の首が一回転した。
その瞬間、僕は玉の絶望する理由を悟って青ざめた。
阿修羅は首をねじられたくらいで、死にはしない。
玉はそのことに絶望の声を上げたのではなかったのだ。
首が360度回転すると、阿修羅はペルソナ・チェンジをしてしまう。
つまり、第2人格が現れる。
そして彼女の第2人格と言えば…。
「な、なんだ、おまえ?」
前鬼が初めて、人語を発した。
それほど阿修羅の人格変換に驚いたのだろう。
そう、阿修羅はあのスタイル抜群の美少女から、男に変わり始めていた。
胸がしぼみ、平たくなって、ブラがぶかぶかになった。
つんと突き出したかっこいいお尻も、なんだかひとまわりサイズが縮んでしまったようだ。
女物のブラとショーツをつけた若い男。
今、前鬼に組み伏せられようとしているのは、あの美少女戦士ではなく、単なる変態なのだ。
「いてえんだよ! おっさん! 手え、放せよ!」
例の草食系イケメン少年に変身した阿修羅がわめいた。
「なんで男が? げ、キモい、キモ過ぎる!」
前鬼が負けず劣らず大声でわめき、男阿修羅を投げ飛ばす。
「うわっ! な、なんだこりゃ? げ、し、しびれるぅ!」
ロープに引っかかって感電した阿修羅が、全身から焦臭い匂いをさせて僕らの足元に転がってきた。
「こんな大事な時に、どうしておまえが出てくるんだよ!」
すっかりボンクラと化した阿修羅を引きずり起こして、僕は毒づいた。
「早く元に戻るか、第3人格に変身しろよ! おまえじゃクソの役にもたないじゃないか!」
「クソの役? 相変わらず下品なやつだな」
シートに這い上がると、焦げた前髪を気にしながら、ボンクラでくのぼうが、威張った口調で言い返してきた。
「そんなんじゃ、いつまでたっても、女の子にモテないぞ」
「モテるモテないはこの際関係ない。いいか? おまえは今、アンアンと組んで、魔界・地獄界対抗格闘技選手権の試合中なんだ。早くリングに戻らないと、アンアンが大変なことになる」
「無理だね」
男阿修羅の返事はそっけなかった。
「俺はペンより重いものは持ったことがないんだ。もちろん、格闘技なんて、興味もない。ゲームだって、格闘ゲーより、RPG系のが好きなんでね。ここは下ろさせてもらうよ」
「勝手なこというなよ、このヘタレ!」
業を煮やして、一ノ瀬が阿修羅に飛びかかった。
「こうなったら、俺がもう一度、その首、ねじ切ってやる!」
「や、やめろ! 痛いって!」
一ノ瀬にスリーパーホールドをかけられて、男阿修羅がバタバタ暴れ出す。
「間に合うといいですけど…」
心配そうにリングのほうに目をやって、玉がつぶやいた。
その時、リング上では、新たな動きが起ころうとしていたのだ。
ギッ。
ギギッ。
軋みを上げて、阿修羅の首が一回転した。
その瞬間、僕は玉の絶望する理由を悟って青ざめた。
阿修羅は首をねじられたくらいで、死にはしない。
玉はそのことに絶望の声を上げたのではなかったのだ。
首が360度回転すると、阿修羅はペルソナ・チェンジをしてしまう。
つまり、第2人格が現れる。
そして彼女の第2人格と言えば…。
「な、なんだ、おまえ?」
前鬼が初めて、人語を発した。
それほど阿修羅の人格変換に驚いたのだろう。
そう、阿修羅はあのスタイル抜群の美少女から、男に変わり始めていた。
胸がしぼみ、平たくなって、ブラがぶかぶかになった。
つんと突き出したかっこいいお尻も、なんだかひとまわりサイズが縮んでしまったようだ。
女物のブラとショーツをつけた若い男。
今、前鬼に組み伏せられようとしているのは、あの美少女戦士ではなく、単なる変態なのだ。
「いてえんだよ! おっさん! 手え、放せよ!」
例の草食系イケメン少年に変身した阿修羅がわめいた。
「なんで男が? げ、キモい、キモ過ぎる!」
前鬼が負けず劣らず大声でわめき、男阿修羅を投げ飛ばす。
「うわっ! な、なんだこりゃ? げ、し、しびれるぅ!」
ロープに引っかかって感電した阿修羅が、全身から焦臭い匂いをさせて僕らの足元に転がってきた。
「こんな大事な時に、どうしておまえが出てくるんだよ!」
すっかりボンクラと化した阿修羅を引きずり起こして、僕は毒づいた。
「早く元に戻るか、第3人格に変身しろよ! おまえじゃクソの役にもたないじゃないか!」
「クソの役? 相変わらず下品なやつだな」
シートに這い上がると、焦げた前髪を気にしながら、ボンクラでくのぼうが、威張った口調で言い返してきた。
「そんなんじゃ、いつまでたっても、女の子にモテないぞ」
「モテるモテないはこの際関係ない。いいか? おまえは今、アンアンと組んで、魔界・地獄界対抗格闘技選手権の試合中なんだ。早くリングに戻らないと、アンアンが大変なことになる」
「無理だね」
男阿修羅の返事はそっけなかった。
「俺はペンより重いものは持ったことがないんだ。もちろん、格闘技なんて、興味もない。ゲームだって、格闘ゲーより、RPG系のが好きなんでね。ここは下ろさせてもらうよ」
「勝手なこというなよ、このヘタレ!」
業を煮やして、一ノ瀬が阿修羅に飛びかかった。
「こうなったら、俺がもう一度、その首、ねじ切ってやる!」
「や、やめろ! 痛いって!」
一ノ瀬にスリーパーホールドをかけられて、男阿修羅がバタバタ暴れ出す。
「間に合うといいですけど…」
心配そうにリングのほうに目をやって、玉がつぶやいた。
その時、リング上では、新たな動きが起ころうとしていたのだ。
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