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第6章 アンアン魔界行
#131 アンアン、無間地獄に堕ちる⑦
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それは、ずいぶんとまたシュールな眺めだった。
スタイル抜群のふたりの美少女が犬みたいに四つん這いなり、形のいい尻を高々と突き出している。
アンアンはちぎれかけたTバックのハイレグアーマー。
阿修羅は小麦色の肌に純白の下着姿である。
ふたりとも巨大化しているから、そのミラクルなボディの迫力ときたら、相当なものだ。
その証拠に僕の隣で一ノ瀬はすでに鼻血で顔を真っ赤に染めているのだが、問題はぺちぺちという尻を平手でたたく音である。
巨大な幼女、酒呑童女がふたりの背後に仁王立ちになり、素手でせっかんを加えているところなのだ。
魔界を代表するふたりの王女も、さすがに年端も行かぬ子供には力をふるえず、ただされるがままになっているというわけだ。
「どうします? これじゃ、らちがあきませんよ?」
困ったように、玉が言った。
「かといって、さすがの玉も、いくら大きいとはいっても、あんな幼女に火器を使用する気にはなれません」
「同感だな。まあ、酒呑童女がお仕置きに飽きるのを待つしかないか」
僕がうなずくと、
「甘いですよ」
ナイアルラトホテップが、話にならないといった顔で首を振った。
「子どもという生き物は、いったん興味を引くことを見つけると、何時間でもそれを繰り返して飽きないものです。なにしろ、大人とは、時間の流れ方が違うわけですから。まごまごしていると、もっとやっかいなことになりかねません。ここは早く城門を抜けて、敵地に乗り込まないと」
「でも、どうしたらいいんだい? アンアンたち、まったく抵抗する気、ないみたいだぜ?」
「仕方ないですね。ここは私が」
わざとらしくため息をつくと、ナイアルラトホテップが杖を支えにすっくと立ち上がった。
そのまま、するすると背が伸びていく。
僕は目を剥いた。
なんと!
こいつも巨大化できるんじゃないか!
まあ、考えてみれば、当たり前のことである。
彼はあのクトゥルフの眷属なのである。
変身も巨大化も、朝飯前であるのに違いない。
これまでその能力を発揮しなかったのは、おそらく誰も頼まなかったからなのだ。
「名付けて、ハーメルンの笛吹き男作戦です」
酒呑童女をしのぐサイズにまで巨大化すると、ナイアルラトホテップが僕らを見降ろして、真顔でそう言った。
そのままツカツカと幼女に近づいて行くと、気取った声で話しかける。
「お嬢さん、ちょっといいですか?」
せっかんの手を止めて何気なく見上げた養女の顔に、驚きの色が浮かぶのが遠目にも見て取れた。
「ひょええ、しゅごいイケメンぢゃないでちゅか」
目をきらきら輝かせ、うっとりした声で言う。
「道に迷ってしまってね。できれば、あなたのパパ、暗黒大皇帝さまのところに、案内してほしいんだが」
すました声で、邪神が言った。
なるほど。
幼女はイケメンに弱い。
その弱みにつけ込んで、こっちの味方にしてしまおうという腹なのだろう。
でも、そんなにうまくいくだろうか。
曲がりなりにも、相手は地獄の四天王なんだぞ。
が、僕は間違っていた。
案ずるより産むが易し、とはこのことだ。
「パパのとこでちゅかあ? いいでちゅよお! じゃあ、お手々、つなぎましょうね!」
巨大幼女は、いともあっさりと、イケメン邪神の門下に下ってしまったのである。
スタイル抜群のふたりの美少女が犬みたいに四つん這いなり、形のいい尻を高々と突き出している。
アンアンはちぎれかけたTバックのハイレグアーマー。
阿修羅は小麦色の肌に純白の下着姿である。
ふたりとも巨大化しているから、そのミラクルなボディの迫力ときたら、相当なものだ。
その証拠に僕の隣で一ノ瀬はすでに鼻血で顔を真っ赤に染めているのだが、問題はぺちぺちという尻を平手でたたく音である。
巨大な幼女、酒呑童女がふたりの背後に仁王立ちになり、素手でせっかんを加えているところなのだ。
魔界を代表するふたりの王女も、さすがに年端も行かぬ子供には力をふるえず、ただされるがままになっているというわけだ。
「どうします? これじゃ、らちがあきませんよ?」
困ったように、玉が言った。
「かといって、さすがの玉も、いくら大きいとはいっても、あんな幼女に火器を使用する気にはなれません」
「同感だな。まあ、酒呑童女がお仕置きに飽きるのを待つしかないか」
僕がうなずくと、
「甘いですよ」
ナイアルラトホテップが、話にならないといった顔で首を振った。
「子どもという生き物は、いったん興味を引くことを見つけると、何時間でもそれを繰り返して飽きないものです。なにしろ、大人とは、時間の流れ方が違うわけですから。まごまごしていると、もっとやっかいなことになりかねません。ここは早く城門を抜けて、敵地に乗り込まないと」
「でも、どうしたらいいんだい? アンアンたち、まったく抵抗する気、ないみたいだぜ?」
「仕方ないですね。ここは私が」
わざとらしくため息をつくと、ナイアルラトホテップが杖を支えにすっくと立ち上がった。
そのまま、するすると背が伸びていく。
僕は目を剥いた。
なんと!
こいつも巨大化できるんじゃないか!
まあ、考えてみれば、当たり前のことである。
彼はあのクトゥルフの眷属なのである。
変身も巨大化も、朝飯前であるのに違いない。
これまでその能力を発揮しなかったのは、おそらく誰も頼まなかったからなのだ。
「名付けて、ハーメルンの笛吹き男作戦です」
酒呑童女をしのぐサイズにまで巨大化すると、ナイアルラトホテップが僕らを見降ろして、真顔でそう言った。
そのままツカツカと幼女に近づいて行くと、気取った声で話しかける。
「お嬢さん、ちょっといいですか?」
せっかんの手を止めて何気なく見上げた養女の顔に、驚きの色が浮かぶのが遠目にも見て取れた。
「ひょええ、しゅごいイケメンぢゃないでちゅか」
目をきらきら輝かせ、うっとりした声で言う。
「道に迷ってしまってね。できれば、あなたのパパ、暗黒大皇帝さまのところに、案内してほしいんだが」
すました声で、邪神が言った。
なるほど。
幼女はイケメンに弱い。
その弱みにつけ込んで、こっちの味方にしてしまおうという腹なのだろう。
でも、そんなにうまくいくだろうか。
曲がりなりにも、相手は地獄の四天王なんだぞ。
が、僕は間違っていた。
案ずるより産むが易し、とはこのことだ。
「パパのとこでちゅかあ? いいでちゅよお! じゃあ、お手々、つなぎましょうね!」
巨大幼女は、いともあっさりと、イケメン邪神の門下に下ってしまったのである。
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