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第6章 アンアン魔界行
#83 アンアン、地底軍艦に乗る⑮
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匍匐前進でじりじり床を這って行くと、前方にようやく回廊の突き当りが見えてきた。
凝った意匠を施した、見上げるほど大きな両開きの扉が、突き当りにそびえ立っているのだ。
あの向こうに、地下へと下りるらせん階段が隠されているというわけなのだろう。
それを降りた先に、念願の地底軍艦”轟天号#が待っているというわけだ。
が、問題は、その前に立ちはだかっているあの影である。
大蛇の下半身を持つ、蛇女。
うねうねとのたくる髪の毛は、一本一本が太く、マジで蛇になっているようだ。
「そろそろメデューサの射程に入ると思われます。万能傘の準備はいいですか?」
先を行く玉が、僕らを振り返ってそう言った。
「じゃあ、あたしとアンアンは、このへんの柱の陰に隠れてるから」
阿修羅がそう言い残し、アンアンともども列柱の間に姿を消してしまう。
うう。いよいよだ。
僕は腋の下にじっとりと冷たい汗がにじむのを感じた。
おそるおそる傘を前に突き出し、押しボタンを押した。
開いた傘の内側を見て、思わず、おお、と唸ってしまった。
外から見ると黒いのに、中から見ると、この傘、透明なのだ。
なんと、マジックミラーと同じ原理でできているのである。
しかも取っ手にはちゃんとトリガーがあるから、軽機関銃の機能もちゃんと備えているようだ。
これなら、もしかして…いけるかもしれない。
希望が湧いてきた。
あとは、「ワンクッション何かを間に置けば、石化の呪いにはかからない」という玉の推理が当たっていることを祈るばかりである。
「あ、メデューサがこっちに気づいたみたいです。私のほうをじっと見ています。でも、大丈夫。思った通りです。眼鏡のレンズ越しなら、石にはならずに済みそうです」
やった。
いいぞ、玉。
じゃ、あとはバリバリ撃ちまくるだけじゃないか!
ところがだ。
せっかく士気が上がってきたのに、そこに水を差すやつがいた。
「うは。まずっ!」
一ノ瀬が、例によって、すっとぼけた声を上げたのだ。
「どうしたんですか? 一ノ瀬君?」
立ち上がりかけて、玉が振り返る。
見ると、一ノ瀬は、僕同様、ちょうど傘を開いたところである。
「元気ィ、どうしよう?」
今にも泣き出しそうな顔をしている。
「なんだ? どうした?」
そこへ、隠れたはずのアンアンが戻ってきた。
「こ、これ…」
一ノ瀬が、開いた傘を指さして見せた。
「どう見てもさあ、ただのこうもり傘なんだけど…」
凝った意匠を施した、見上げるほど大きな両開きの扉が、突き当りにそびえ立っているのだ。
あの向こうに、地下へと下りるらせん階段が隠されているというわけなのだろう。
それを降りた先に、念願の地底軍艦”轟天号#が待っているというわけだ。
が、問題は、その前に立ちはだかっているあの影である。
大蛇の下半身を持つ、蛇女。
うねうねとのたくる髪の毛は、一本一本が太く、マジで蛇になっているようだ。
「そろそろメデューサの射程に入ると思われます。万能傘の準備はいいですか?」
先を行く玉が、僕らを振り返ってそう言った。
「じゃあ、あたしとアンアンは、このへんの柱の陰に隠れてるから」
阿修羅がそう言い残し、アンアンともども列柱の間に姿を消してしまう。
うう。いよいよだ。
僕は腋の下にじっとりと冷たい汗がにじむのを感じた。
おそるおそる傘を前に突き出し、押しボタンを押した。
開いた傘の内側を見て、思わず、おお、と唸ってしまった。
外から見ると黒いのに、中から見ると、この傘、透明なのだ。
なんと、マジックミラーと同じ原理でできているのである。
しかも取っ手にはちゃんとトリガーがあるから、軽機関銃の機能もちゃんと備えているようだ。
これなら、もしかして…いけるかもしれない。
希望が湧いてきた。
あとは、「ワンクッション何かを間に置けば、石化の呪いにはかからない」という玉の推理が当たっていることを祈るばかりである。
「あ、メデューサがこっちに気づいたみたいです。私のほうをじっと見ています。でも、大丈夫。思った通りです。眼鏡のレンズ越しなら、石にはならずに済みそうです」
やった。
いいぞ、玉。
じゃ、あとはバリバリ撃ちまくるだけじゃないか!
ところがだ。
せっかく士気が上がってきたのに、そこに水を差すやつがいた。
「うは。まずっ!」
一ノ瀬が、例によって、すっとぼけた声を上げたのだ。
「どうしたんですか? 一ノ瀬君?」
立ち上がりかけて、玉が振り返る。
見ると、一ノ瀬は、僕同様、ちょうど傘を開いたところである。
「元気ィ、どうしよう?」
今にも泣き出しそうな顔をしている。
「なんだ? どうした?」
そこへ、隠れたはずのアンアンが戻ってきた。
「こ、これ…」
一ノ瀬が、開いた傘を指さして見せた。
「どう見てもさあ、ただのこうもり傘なんだけど…」
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