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第6章 アンアン魔界行
#62 アンアンバラバラ殺人事件①
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ギギギギ。
軋みながら、鉄の処女の蓋が開いていく。
僕はごくりと唾を飲み込んだ。
これがアニメや小説だったら、と思う。
実はアンアンは鋼鉄の皮膚の持ち主で、身体には1本もトゲが刺さらなかったとか、あるいは奇跡的に新たな超能力が開花して、蓋が閉まる瞬間、間一髪テレポートで難を逃れていたとかー。
そうしたご都合主義のオチが待ち受けているはずだ。
ところが。
次の瞬間、心のどこかに巣食っていた僕の楽観主義は、ものの見事に粉砕されてしまった。
中から転げ出てきたのは、全身を穴だらけにされた血まみれの身体。
どこが目鼻でどこが口なのかもわからない、ぼろぼろになったアンアンだったのである。
「うわあああああっ!」
すぐそばで獣のような咆哮が聞えてきた。
それが一ノ瀬や玉のものではなく、自分の喉から発せられていることに気づくのに、しばらく時間がかかった。
「おーほほほほほっ! これはまたなんて無様な姿でしょう! あのムチムチボディもアイドル顔も、穴だらけでどぼどぼ血が噴き出てるじゃありませんか! さーあ、こうなったら、とことん行きますよお! お次は、はい、これ! フィナーレよ!」
阿修羅が高らかに宣言した。
極度の興奮で、声が裏返ってしまっている。
と同時に、鉄の処女が消え、新たに出現したのは5本のロープである。
4本がアンアンの手足に巻きつき、5本目がその首を締め上げる。
空中に大の字にされ、手足と首を引き延ばされていくアンアン。
見ると、ロープの先は、5頭の空飛ぶ馬にくくりつけられている。
漆黒の身体をした、口から火を吐く不気味な天馬だった。
鷲の翼を生やした、悪鬼のようなペガサスたちが、対角線上に飛びながら、アンアンの四肢をぐいぐい引っ張っているのだ。
「や、やめろ! やめてくれ!」
無駄を承知で、僕は叫んだ。
「ひどいよ、ひどすぎる…」
「アンアンが、アンアンが、死んじゃう…」
むせび泣く一ノ瀬と玉。
が、僕らの必死の願いも空しく、それが起こった。
ブチッ。
肉と腱の引きちぎれる音があたりにこだましたかと思うと、次の一瞬、アンアンの首と手足がバラバラに吹っ飛んだのだ!
無残な5つの穴から血を吹き出して、胴体が落ちていく。
「あ、アンアン…」
全身から力が抜けた。
絶望のあまり、僕はシートにぐったりと沈み込んだ。
まさか…。
あのアンアンが…。
無敵のはずの魔界の王女アンアンが、こんなにもあっさり死んでしまうだなんて…。
と、その時である。
黒い塊が飛んできて、僕の膝の上にどさりと落ちた。
「わ」
膝の上の物体に目をやるなり、僕は文字通り腰を抜かしてしまっていた。
異様に重いその球体は、胴体から引き抜かれたアンアンの首だったからである。
軋みながら、鉄の処女の蓋が開いていく。
僕はごくりと唾を飲み込んだ。
これがアニメや小説だったら、と思う。
実はアンアンは鋼鉄の皮膚の持ち主で、身体には1本もトゲが刺さらなかったとか、あるいは奇跡的に新たな超能力が開花して、蓋が閉まる瞬間、間一髪テレポートで難を逃れていたとかー。
そうしたご都合主義のオチが待ち受けているはずだ。
ところが。
次の瞬間、心のどこかに巣食っていた僕の楽観主義は、ものの見事に粉砕されてしまった。
中から転げ出てきたのは、全身を穴だらけにされた血まみれの身体。
どこが目鼻でどこが口なのかもわからない、ぼろぼろになったアンアンだったのである。
「うわあああああっ!」
すぐそばで獣のような咆哮が聞えてきた。
それが一ノ瀬や玉のものではなく、自分の喉から発せられていることに気づくのに、しばらく時間がかかった。
「おーほほほほほっ! これはまたなんて無様な姿でしょう! あのムチムチボディもアイドル顔も、穴だらけでどぼどぼ血が噴き出てるじゃありませんか! さーあ、こうなったら、とことん行きますよお! お次は、はい、これ! フィナーレよ!」
阿修羅が高らかに宣言した。
極度の興奮で、声が裏返ってしまっている。
と同時に、鉄の処女が消え、新たに出現したのは5本のロープである。
4本がアンアンの手足に巻きつき、5本目がその首を締め上げる。
空中に大の字にされ、手足と首を引き延ばされていくアンアン。
見ると、ロープの先は、5頭の空飛ぶ馬にくくりつけられている。
漆黒の身体をした、口から火を吐く不気味な天馬だった。
鷲の翼を生やした、悪鬼のようなペガサスたちが、対角線上に飛びながら、アンアンの四肢をぐいぐい引っ張っているのだ。
「や、やめろ! やめてくれ!」
無駄を承知で、僕は叫んだ。
「ひどいよ、ひどすぎる…」
「アンアンが、アンアンが、死んじゃう…」
むせび泣く一ノ瀬と玉。
が、僕らの必死の願いも空しく、それが起こった。
ブチッ。
肉と腱の引きちぎれる音があたりにこだましたかと思うと、次の一瞬、アンアンの首と手足がバラバラに吹っ飛んだのだ!
無残な5つの穴から血を吹き出して、胴体が落ちていく。
「あ、アンアン…」
全身から力が抜けた。
絶望のあまり、僕はシートにぐったりと沈み込んだ。
まさか…。
あのアンアンが…。
無敵のはずの魔界の王女アンアンが、こんなにもあっさり死んでしまうだなんて…。
と、その時である。
黒い塊が飛んできて、僕の膝の上にどさりと落ちた。
「わ」
膝の上の物体に目をやるなり、僕は文字通り腰を抜かしてしまっていた。
異様に重いその球体は、胴体から引き抜かれたアンアンの首だったからである。
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