夜通しアンアン

戸影絵麻

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第6章 アンアン魔界行

#40 アンアン、ミドルバベルへ③

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 いったん部屋へ行き、アンアンと阿修羅がおそろいのセーラー服に着替えて戻ってきた。
 阿修羅まで着替えたのは、発火したせいで、身に着けていたタンクトップとショーパンが焦げてしまったからである。
「やっぱ、いいね、夏服は」
 白いセーラー服に赤いスカーフ。
 そして超ミニの紺色ひだスカートを履いたふたりを眺め、一ノ瀬が鼻の下を伸ばした。
 僕も同感だった。
 このふたりの戦闘服は、やはりこれだろう。
「玉も同じ制服着てるんですけど」
 不満そうに玉が言ったけど、服は同じでもほかが色々違うんだから仕方がない。
「こっちですのん。お湯の取り入れ口は」
 ろくろ首の女将さんに案内されて建物の裏に回ると、建物から伸びる太いパイプラインに突き当たった。
「どこに続いてるの?」
「はあ、裏の空き地に温泉が湧き出てまして」
「そこが異次元的に草津につながってるってわけね」
 第一人格に戻った阿修羅が言う。
 彼女はやはりこの美少女フェイズが一番である。 
 できればずっとこのままでいてほしいと思う。
 が、パイプラインの終点まで来て、僕らは棒を呑んだように立ちすくんだ。
 空き地の真ん中に、禍々しいものが鎮座している。
 でっかいタンクを荷台に積んだ、武骨なバキュームカーである。
 そのホースが、パイプラインの先に取り付けられているのだ。
「こいつのせいか」
 アンアンが一歩前に踏み出した。
「けっ、見つかっちまったか」
 運転席から顔を出したのは、ペリカンと天狗の合いの子みたいな妖怪だ。
「おまえは、陰摩羅鬼!」
 阿修羅が叫んだ。
「いんもらき?」
 首をかしげる一ノ瀬。
 聞いたことがあるような、ないような。
 するするとホースを巻き取ると、臭い茶色の液体をまき散らしながら、バキュームカーが走り出す。
「逃げるぞ! 玉、行け!」
 アンアンが怒鳴る。
「え? 玉の出番ですか? そ、そんな、急に言われても」
 泡を喰ってキョドる玉。
 それでも四つん這いになって、プリケツ状態になる。
 僕は手伝ってやることにした。
 楽器ケースの蓋を開けると、
 ウイーン!
 でかいチンポコみたいなミサイルが一基、せり出してきた。
「おい、まさかこれ、核ミサイルじゃないだろうな」
「違います違います。これはただの冷凍弾です」
「冷凍弾?」
「撃ってみればわかりかすからあ」
「代わるよ」
 阿修羅が戻ってきた。
 玉の尻を支えて照準を定めると、
「どっちかわたしの身体を押さえて」
「え? いいの?」
 うれしそうに阿修羅の腰に腕を回す一ノ瀬。
「おっぱいに触ったら、殺すからね」
「あ、はい、肝に銘じます」
 どん。
 腹に響く音がして、ミサイルが放物線を描いて飛んだ。
 視界から消えようとしていたバキュームカーに、みるみるうちに接近していく。
 パキ。
 白い煙が上がり、
 ぱりぱりぱりぱり。
 澄んだ音を立ててバキュームカーが凍りつく。
「お見事」
 腰に両手を当て、首尾を見守っていたアンアンが、満足げにうなずいた。
「やっぱ、ウンチは凍らせるに限るな」



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