あばたとえくぼの異界怪奇事件帳

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　大久保重明はその夜のうちに速攻で逮捕され、あたしらバタクボペアに平和な日々が戻ってきた。

　久保は地団太を踏んで悔しがったけど、こればっかりは仕方がない。
　警察が有能、というより、タイミングが悪すぎたのだ。
　翌朝からテレビは『女子大生バラバラ殺人犯人逮捕』の報道一色になった。
　ここ二ヶ月近く、世間の耳目を集めていた事件である。
　この大ニュースの前では、遠くの国の戦争の話も、どこぞの宗教団体と与党の癒着の話も、みんな一気にかすんでしまった。
　かくいうあたしも、にわかニュースウォッチャーと化した。
　被疑者の大久保重明は、青鬼山の近辺に住むニートで、自営業を営む両親と同居していた。
　本人はあくまでも犯行を否定し続けており、それは同居する両親も同じだった。
　女子大生の死亡推定時刻にも、死体のパーツが捨てられたと思しき日にも、息子は家に居たと言い張った。
　就職先を半年で辞め、家に引きこもった重明は、それ以来ほとんど自室から出ない生活を送っているのだという。
　重明の自宅は徹底的に捜索されたが、殺害及び死体解体の物的証拠は見つからなかった。
　が、何よりも精液の一致という事実は大きく、また自宅には軽ワゴン車が1台あり、大久保自身が普通免許を所有していることも警察の心証を悪くしたようだ。
　運転ができ、車があれば、バラバラにした死体のパーツを捨てに行くことも可能だからである。