あばたとえくぼの異界怪奇事件帳

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「あー、なるほど」
　それでか。
　大して記憶力のよくないあたしが事件のことをぼんやり覚えていたのも、それだったのかもしれない。
「ともかく、その大久保重明のDNAと、今回の事件の死体の一部から発見された精液のDNAが一致したというわけですね」
「え、ええ、まあ。精液と精液だから、間違いないと科捜研も」
　気を取り直した久保の質問に、刑事が答えた。
「よく半年前の事件の精液が残ってましたね」
「精液そのものというより、当時調べたDNAのデータが、です」
「ですよね。遺留品とはいえ、精液ですからね。それで、今警察は？」
　久保はわざとのように可愛い顏で”精液”を連発する。
　まるでこの若い刑事の反応を楽しんでいるかのようだ。
「一課のメンバーが大久保重明の家に向かっているところです。被疑者はいわゆるニートってやつで、在宅の可能性が高いということですから。あ、僕もそろそろ応援に向かわないといけないので」
「あーあ、残念」
　久保があたしのほうを見て、小さく肩をすくめた。
　警察がすでに動いているなら、あたしたちの出る幕はない。
　そう言いたいのだ。