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 グッ。
 ベーグルの最期の欠片が、喉に詰まった。
 朱里ちゃん・・・。
 色白の、あどけない幼女の顏が、一瞬、フラッシュバックした。
 そう来たか。
 という思いと、
 来ると思った。
 という諦めが、頭の中をぐるぐる回った。
「事件自体は、全然似てないぞ」
 無駄だとわかっていたが、一応、反論することにした。
「でも、匂いがそっくり。とてもヒトとは思えない、残忍なところとか」
 天然カールのまつ毛に縁どられた久保の大きな眼が妖しく光る。
「・・・」
 椎名朱里ちゃん、4歳。
 犯人は彼女をレイプした挙句、痕跡を隠すために、歩道橋の上から交通量の多い車道に死体を落とし・・・。
 いきなりあの時の怒りがこみあげてきて、目の前が真っ赤になった。
「いいのか」
 思わず久保に詰め寄った。
「問題なのは、あたしよりおまえだ」
「いいもなにも」
 私の鼻先すれすれまで、久保が顔を近づける。
「こんなキモい絶対悪は許せません」
「あたしたちは神様じゃない」
 ふん。
 鼻で笑う久保。
「何それ、ですよ。どこの小説の台詞、って感じじゃないですか」
「だってそうだろ」
 正確に言うと、神様じゃなくて、アレなんだが・・・。
「神様なんかに頼ってるから、人類はダメになっちゃったんです。腐った果実は、自分の手で取り除かないとね」
 
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