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ACT9 殲滅! 人肉工場
#3 リコ①
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その日の深夜。
リコたち3人は、ポメラリアンの中にいた。
路地を挟んだ向かい側には、工場の建物の四角いシルエット。
門柱の腸詰フーズの看板が、折からの満月に照らされて鈍色に光っている。
昼間の活気はどこへやら、工場の敷地は不気味なほどに静まり返っていた。
「リコ、よく眠れたか」
運転席からバックミラー越しにリコを見て、ハルが言う。
変装のつもりか、ハルは夜中にもかかわらず、黒いサングラスをかけている。
だが、リクルートスーツに赤いコートといった出で立ちはいつもの通りである。
「おかげさまで」
トレンチコートのボタンをはずしながら、リコは答えた。
部屋の入口に家具を置き、ハルやアリアの侵入を防いでベッドに入ったため、睡眠時間は足りていた。
しかも起きがけに栄養ドリンクを3本飲んできたから、アドレナリン量も十分である。
「なら、巨大化して一撃で破壊しろ。時間がかかって周囲の注意を引くと、何かと面倒だからな」
「ああ。この規模の施設なら、VOL.20で十分だろう」
リコの乳輪ダイヤルは、時計の文字盤のように60の目盛が刻まれている。
VOL.20というのは身長の20倍ということだから、変身後の身長は約35メートルということになる。
理論上リコはVOL.60、すなわち身長の60倍のサイズまで巨大化可能なのだが、まだ試したことはない。
これまでの最高が、VOL.30。
今のところ、それを超えるサイズの怪獣に遭遇していないせいもあるが、一番の理由は生身のリコの体力だ。
「その大きさだと、変身持続時間はどのくらいだ?」
「長くて10分かな。それ以上はうちの体力がもたないから」
「要は、リアルで体を鍛えれば、その時間はもっと延びるということか」
「ああ。家にトレーニング用のジムがあるのはそのためさ。今現在のうちの体力では、VOL.30で10分というのが最高記録なんだ。変身には60段階あるけれど、MAXまでにはまだほど遠い。破滅の天使降臨までには、なんとかそこまでレベルアップしなきゃならないと思ってる」
「破滅の天使…無の鉄槌か。おまえの予言とやらでは、確か西暦2020年の7月だったな」
「うちの予言じゃない。MILKYをつくったやつらの未来予測さ」
「その件に関しては、落ち着いたらいずれゆっくり話し合おう。とりあえず、今は腸詰帝国殲滅が緊急課題だ。準備ができたら、すぐに出撃しろ」
「もういける。ハルとアリアはここで待ててくれ」
ポメラリアンのドアは、テントウムシの翅みたいに上へ向かって開く。
その間から流れるような身のこなしで滑り出ると、リコは門扉の前に立った。
威勢よくコートを脱ぎ捨てると、その下から現れたのは、月光に輝く大理石の裸婦像のような裸体である。
が、よく見ると全裸ではなく、紐状の下着がかろうじてバストトップと股間の局部を覆い隠していた。
「飛行モードで、空中からおっぱいビーム。それでいいか」
頭の中のイオに訊く。
『ですね。時間をかけないのが第一であるならば、それが手っ取り早いでしょう』
となると、使うのは左の銀の乳首である。
リコが左胸のトップを縦断する紐をわずかにずらし、片方の乳首を露出させた時だった。
『ん? これは?』
ふいにイオの”声”が緊迫した響きを帯びた。
「どうした?」
思わず口に出してそうたずねると、イオが驚きの思念を返してきた。
『信じられません。つい今さっきまでは、何もなかったのに。気をつけてリコ。怪獣反応です』
リコたち3人は、ポメラリアンの中にいた。
路地を挟んだ向かい側には、工場の建物の四角いシルエット。
門柱の腸詰フーズの看板が、折からの満月に照らされて鈍色に光っている。
昼間の活気はどこへやら、工場の敷地は不気味なほどに静まり返っていた。
「リコ、よく眠れたか」
運転席からバックミラー越しにリコを見て、ハルが言う。
変装のつもりか、ハルは夜中にもかかわらず、黒いサングラスをかけている。
だが、リクルートスーツに赤いコートといった出で立ちはいつもの通りである。
「おかげさまで」
トレンチコートのボタンをはずしながら、リコは答えた。
部屋の入口に家具を置き、ハルやアリアの侵入を防いでベッドに入ったため、睡眠時間は足りていた。
しかも起きがけに栄養ドリンクを3本飲んできたから、アドレナリン量も十分である。
「なら、巨大化して一撃で破壊しろ。時間がかかって周囲の注意を引くと、何かと面倒だからな」
「ああ。この規模の施設なら、VOL.20で十分だろう」
リコの乳輪ダイヤルは、時計の文字盤のように60の目盛が刻まれている。
VOL.20というのは身長の20倍ということだから、変身後の身長は約35メートルということになる。
理論上リコはVOL.60、すなわち身長の60倍のサイズまで巨大化可能なのだが、まだ試したことはない。
これまでの最高が、VOL.30。
今のところ、それを超えるサイズの怪獣に遭遇していないせいもあるが、一番の理由は生身のリコの体力だ。
「その大きさだと、変身持続時間はどのくらいだ?」
「長くて10分かな。それ以上はうちの体力がもたないから」
「要は、リアルで体を鍛えれば、その時間はもっと延びるということか」
「ああ。家にトレーニング用のジムがあるのはそのためさ。今現在のうちの体力では、VOL.30で10分というのが最高記録なんだ。変身には60段階あるけれど、MAXまでにはまだほど遠い。破滅の天使降臨までには、なんとかそこまでレベルアップしなきゃならないと思ってる」
「破滅の天使…無の鉄槌か。おまえの予言とやらでは、確か西暦2020年の7月だったな」
「うちの予言じゃない。MILKYをつくったやつらの未来予測さ」
「その件に関しては、落ち着いたらいずれゆっくり話し合おう。とりあえず、今は腸詰帝国殲滅が緊急課題だ。準備ができたら、すぐに出撃しろ」
「もういける。ハルとアリアはここで待ててくれ」
ポメラリアンのドアは、テントウムシの翅みたいに上へ向かって開く。
その間から流れるような身のこなしで滑り出ると、リコは門扉の前に立った。
威勢よくコートを脱ぎ捨てると、その下から現れたのは、月光に輝く大理石の裸婦像のような裸体である。
が、よく見ると全裸ではなく、紐状の下着がかろうじてバストトップと股間の局部を覆い隠していた。
「飛行モードで、空中からおっぱいビーム。それでいいか」
頭の中のイオに訊く。
『ですね。時間をかけないのが第一であるならば、それが手っ取り早いでしょう』
となると、使うのは左の銀の乳首である。
リコが左胸のトップを縦断する紐をわずかにずらし、片方の乳首を露出させた時だった。
『ん? これは?』
ふいにイオの”声”が緊迫した響きを帯びた。
「どうした?」
思わず口に出してそうたずねると、イオが驚きの思念を返してきた。
『信じられません。つい今さっきまでは、何もなかったのに。気をつけてリコ。怪獣反応です』
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