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ACT7 アリア奪回

#7 ハル③

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「もちろん、今ではない。まあ、楽しみに待っているんだな」
 言いながら、上を向けた手のひらに3Dマップを出現させる。
 今度は広域ではなく、特定の建物の立体ホログラムだ。
 欅の並木の向こうにそびえるマンションとその映像を見比べ、ハルは言った。
「すぐそこに5階建ての煉瓦色のマンションが見えるだろう。アリアはあそこの4階に監禁されている。402号室の一番奥の部屋だ」
「まだ生きてるのか? 今から行っても間に合うのか?」
 リコの声には、焦燥がにじんでいる。
 アリアはほとんど赤の他人のはずなのに、ここまで必死になるのはなぜなのだ。
 鈍い嫉妬の念がきざし、ハルはかすかに顔をしかめた。
 あの時の記憶が、リコの身体に刻み込まれているとでもいうのだろうか。
 ゆうべ、ハルが立ち去った後、アリアにイかされていたリコ。
 あの時、いったい何が起こったというのだろう。
 そもそも、あのアリアという少女、何者なのか。
 リコの正体がつかめたら、次はアリアだ。
 そのためにも、今はアリア救出を第一義にすべき時だろう。
 愛くるしいアリアの面影を反芻しながら、ハルは答えた。
「殺すなら、きのう集団で襲ってきた時にすでに殺しているはずだろう。敵はあくまでもアリアを生け捕りにしたかったのさ。拷問して、何か吐かせるつもりなのかもしれない」
「拷問…?」
 リコの頬が赤らんだ。
 自分がハルから受けた性的な拷問を思い出したに違いない。
「私はここから見張っている。リコ、おまえが部屋に突入して、アリアを助け出せ」
「あの毛珍坊とかいう怪人がいたらどうする?」
「そうだな。できれば生け捕りにしてほしい。腸詰帝国とやらについて、詳しく聞きたいからな」
「わかった。じゃ、屋上から潜入する。この等身大モードの持続時間は約30分だ。もしもの時は、援護を頼む」
「OK.任せろ」
 リコは、軽く膝を曲げただけだった。
 それだけで、ロケットのようにほぼ垂直に飛び上がった。
 ミニスカの裾を翻し、大胆なパンチラを披露しながら、マンションの屋上に立つ。
 リコの姿が見えなくなると、ハルは前頭葉のセラフィムに話しかけた。
『どうだ、セラフィー。MILKYのデータは取れたか?』
『へい。ただいま、本部のデータバンクと照合中』
『出自を明らかにしろ。少しでもジラフと関連があるようなら、抹殺する』
『あんさん、まだ疑ってるんかい? 執念深いお人やな』
『疑ってはいない。が、念には念を入れる。それだけのこと』
 植え込みの陰にしゃがみこみ、ハルはおもむろにブレスレットを解き放った。

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