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ACT13 怪獣牧場

#15 ビュンビュン丸②

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 ビュンビュン丸を目に留めたとたん、クァールが顔をしかめた。
 
 ばっとアリアの上から飛びのき、姿勢を低くしてグルルルッと唸った。

「ふふふふ、俺が怖いか」

 すでに一体を葬り去ったビュンビュン丸は、自信に満ちあふれている。

 興奮のあまり、全身に滝のような汗をかいているのだが、それがたまらなく臭いのだ。

「ビュンビュン丸…」

 はだけた胸を右手で隠し、左手を地面について身を起こすと、アリアがつぶやいた。

 養護施設からの恋人、野戸珍子を失ったビュンビュン丸にとって、アリアは心の支えのようなものである。

 むろんリコのダイナマイトボディにも惹かれるが、リコは半ばヤンキーなので、どちらかというと近寄り難い。

 恋人にするならアリアのほうだと、一方的に思っている。

「アリア、もう大丈夫だ。俺が本気になったら、こんな猫怪獣の一匹や二匹」

「ありがとう…。でも、お願いだから、近寄らないでね。あなた、鬼のように臭いから」

 ぐふ。

 アリアのストレートなひと言に、さすがのビュンビュン丸もひるまずにはいられない。

 今は亡き恋人の野戸珍子は蓄膿症気味だった。

 だからうまくいっていたのだが、アリアがそこまで鼻がいいとなると、前途は多難である。

 そんなどうでもいいことに頭を悩ませている時だった。

 シュッ。

 空を切る音がして、見ると、クァールの2本の触角が襲いかかってくるところだった。

 触れた者を麻痺させる、電撃鞭みたいな武器である。

「させるか!」

 ビュンビュン丸は跳んだ。

 半勃ちのペニスを振り回し、身体をねじって触角と触角との間をすり抜けた。

 そのままミサイルのように、正面からクァールにぶつかっていく。

「くらえ! キモ汁タイフーン!」

 ビュンビュン丸の身体が回り出す。

 その回転に弾き飛ばされ、異臭を放つ汗が驟雨のように怪獣に降りかかる。

 臭豆腐にくさやの干物を混ぜて煮込んだような壮絶な悪臭である。

 キャウウンッ!

 ひと声鳴いて、クァールが悶絶した。

 白目を剥き、口からよだれを垂らして動かなくなる。

「どうだ! 雑魚モンスターどもめ。無敵のキモ汁ビュンビュン丸さまの力を思い知ったか!」

 有頂天になり、高らかに叫んだ時だった。

 ふいに影が差した。

 人工太陽の光が遮られ、見る間に世界が闇に覆われていく。

 突如として、雷のような声が響いた。

 どこか聞き覚えのある声だった。

「なんだ、貴様は? わしの秘密基地を臭くするヘッピリムシみたいなおのれは、いったい何者なのだ?」
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