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ACT10 淫靡な特訓

#23 リコ⑯

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「い、言うな!」
 ビュンビュン丸が真っ赤になって叫んだ。
「俺だって、これが変な名前だってことくらい、わかってる! でも、しょうがないだろ? 俺たち改造人間は、名前を選べないんだから!」
 リコは首をかしげ、怪訝そうに眉をひそめて相手を観察した。
 顔の複眼を除けば、このキモ汁ビュンビュン丸、まだ高校生くらいの少年である。
 頬にはニキビができ、身体にフィットしたタイツの前がもっこりと膨らんでいる。
「ううん。キモ汁ビュンビュン丸って、いい名前だと思うわ」
 そこに突然口を挟んだのは、野戸珍子だ。
 恋人同士なのか、なにやらうっとりとした表情で少年の股間を見上げている。
「どうする?」
 判断に迷い、リコはハルのほうを振り返った。
 リクルートスーツ、黒縁眼鏡のハルは、興味深げに3人のやりとりを眺めている。
「おまえ、男だな」
 パンプスを履いた足を、ビュンビュン丸のほうへ一歩踏み出すと、やにわにその股間のふくらみを右手でつかんでそう言った。
「リコを見て欲情している。このふくらみがその証拠だろう」
「だ、だって…」
 ビュンビュン丸の顔は、今にも火を噴きそうなほど赤い。
「そのお姉さん、いくらなんでもエロすぎるだろ? そ、そんなエロい恰好で、朝っぱらからこんなところで何してるんだよ」
 リコのブラとパンティは、変身が解けた後もちゃんと再生されるよう、極力情報量の少ない極小サイズに留めてある。
 だから今にも乳首が見えそうだし、股間の部分もしっかりあそこに食い込んでいる。
「そうなの? そのふくらみは、そういう意味だったの?」
 野戸珍子の顔に、裏切りに遭った者特有の、痛々しい表情が浮かんだ。
「い、いや、違うんだ、チンコ、ぼ、僕は決して、浮気をしたいわけじゃない。これは不倫なんてものでもないし、わかるだろ? 男って、こういう生き物なんだよ」
 じたばた慌て出すビュンビュン丸。
 顔から滝のような汗を流し、全体タイツの腋の下も汗でじっとりと湿っている。
 そして、この匂い。
 強烈な腋臭の匂いが、少年の全身から、オーラのごとく噴出しているのだ。
 ははん。
 その様子を見、匂いを嗅いで、リコはようやく納得した。
 だからこいつ、キモ汁ビュンビュン丸なのか。
 確かにキモいし、相当臭い。
「連れていこう」
 ビュンビュン丸のタイツの前を揉みながら、さらりとハルが言った。
「たまには男を拷問するのも悪くない。その恋人の前で、アナルを犯してやるというのも一興だ」
「はあ?」
 リコは呆れた。
 相変わらず、ハルの頭はぶっ壊れている。
 おまえ、宇宙刑事なんだろ?
 もう少し真面目日働けよ。
 危うくそう言いかけて、あわてて言葉を飲み込んだ。
 ハルの機嫌を損ねたら、今度はこっちが何をされるかわからない。
 ふとそう思ったからだった。
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