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ACT10 淫靡な特訓

#2 リコ②

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 ハルの運転するポメラリアンで向かった先は、市の中心にある緑地公園だった。
 マネージャーの荒巻からの連絡によると、今回は屋外撮影なのだという。
 無料駐車場で車を降り、色とりどりの花の咲く花壇の間を縫って歩くと、噴水のある広場に出た。
 スタッフはすでにそろっていて、反射板やらカメラやらの準備におおわらわの様子である。
「リコ、遅いよぉ、またバックレたかと思って、心配しちゃったじゃない!」
 駆け寄ってきたのは、アフロヘアで短躯の荒巻卓だった。
「もう、この前みたいな無茶はやめてよね! 頼むからこれ以上あたしにお詫び行脚をさせないでよ!」
「大丈夫だって。あん時は緊急事態だったんだよ」
 ニキビだらけの顔を真っ赤にして怒る荒巻に、リコはかすかな胸の痛みを覚えてそう弁解した。
 荒巻は、天涯孤独な身の上のリコのことを気にかけてくれる数少ない人間である。
 仕事上の付き合いに過ぎないとはいえ、そんな彼を困らせたのは本当に申し訳ないと思う。
「頼んだよ。リコはただでさえ態度でかいんだから、これ以上やらかしたらいくらあたしでもかばいきれなくなっちゃうからね!」
「わかった。もうしないって。で、きょうはどんなシチュエーションなんだ?」
「えーっとね、最初はテニスルックでパンチラ、それから少しずつ脱いでいって、最後は噴水の前で手ぶらM字開脚って寸法よ」
「おいおい、この寒空にセミヌードかよ」
 やれやれ。
 思わず肩をすくめた時、
「なんなら私も手伝おうか?」
 クールな声がして、リクルートスーツのハルが進み出た。
「あー、ずるうい! アリアも出たい!」
 その後ろから、ぴょんぴょんと学ラン姿のアリアが踊り出る。
「え? 誰、あなたたち?」
 荒巻がきょとんとした顔をする。
 リコはバツの悪そうな表情で、頭をかいた。
 勘弁してくれよ。
 大人しくしてろって、言ったのに。
「こ、このふたりは、うちの同居人だ。どうしても撮影見たいっていうから、連れてきた」
「リコひとりのヌードでは刺激が少なすぎるだろう。3人のカラミのほうが、よくないか?」
 ハルはあくまで、真剣そのものである。
「いや、これはそのう、AVの撮影じゃないんで」
 そのハルの威圧感におされ、荒巻がたじたじとなる。
「ふたりともビジュアルいいから、撮影したいのはやまやまなんだけどね」
「レズプレイも乙なものだと思うぞ。ま、アリアは児童福祉法違反になりかねないから、少々問題ありだがな」
「えー、そんなことないですよお! だってアリアのほうが、ハルより胸、おっきいんだしい!」
 真赤になって、アリアがハルにつっかかる。
「そういう問題じゃない」
「だいたいハルは、貧乳のくせにいつもえらそうなんですう!」
「何だと。もういっぺん言ってみろ」
「わー、怒った! やっぱりハル、気にしてるんだ! 自分が貧乳だってこと!」
「アリア、きさま」
 追いかけっこが始まった。
 ふたりのその後姿を眺めながら、疲れた口調でリコは言った。
「今のうちだ。さっさと撮影、始めてくれ」

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