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#385話 施餓鬼会㊽
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アパートに帰ると、私はまっすぐ浴室に入った。
湯船に水を張り、その中に”あれ”を放す。
ひも状の謎生物は、突然広い所へ放たれた驚きで少し固まったかに見えたが、すぐにすいすい泳ぎ出した。
それを確認して、脱衣所で鏡に向かい、裸になる。
鏡に映る自分の裸体は、思わずため息が出るほど醜かった。
飛び出た鎖骨。
鳥籠のような肋骨が透けて見える胸には、隆起と呼べるものはほとんどない。
その代わり、干しレーズンそっくりの黒ずんだ醜悪な突起が二つ、平らな胸板の左右についている。
下腹まで隠れる厚手の木綿のショーツを脱ぐと、骨と皮だけのX脚と、ナプキンで覆われた陰部が現れた。
今朝から替えていないナプキンは、経血をたっぷり吸って赤黒い色に染まっている。
生理はきのうから始まっていた。
未成熟な体型をしているくせに、私は昔から生理が重い。
特に2日目以降が最悪だ。
経血の量が多すぎて、うっかりしていると下着やボトムを汚してしまう。
そんな己の身体が憎くてしようがなかったのだが、それがようやく役に立つ時が来たのだ。
べりべりと音を立ててナプキンをはがすと、血にまみれた二列の肉襞が露わになった。
第二次性徴に見放された私の身体には、陰毛がない。
つるりとしたマネキン人形の陰部のようなそこには、肉の赤身みたいなむき出しの亀裂がじかに刻まれている。
見ているうちにも、鮑に酷似した肉襞の隙間から滲み出た新たな経血が、糸を引いて内腿を伝い落ちていく。
全裸の身体に血を流しながら、浴室に戻る。
浴槽の中をのぞきこむと、血の匂いに気づいたのか、いきなり”舌”が大暴れし始めた。
水面から首を出し、私のほうへと必死で伸び上がろうとするのだ。
ヤツメウナギの口がふたつ並んだようなその口吻をパクパクさせて…。
正円形の口の内径にびっしり植わった細かい歯に、私は瞬間、凍りつく。
が、意を決して右足を浴槽に差し入れた。
”舌”は警戒するように飛びのくと、浴槽の反対側の隅に丸まって私の所作をうかがう体勢を取る。
すぐには襲ってこないらしい。
そう見て取った私は、下半身を水の中に沈め、尻を底につけて縁にもたれ、”舌”に向かって両足を開いてみせた。
Mの字に開脚した足と足の間から、墨を流すように赤い血の糸が水中へと漂い出す。
「おいで」
私が呼びかけるのと、”舌”が動くのとが、ほとんど同時だった。
次の瞬間、陰部に激痛が走り、私は声を限りに絶叫していた。
湯船に水を張り、その中に”あれ”を放す。
ひも状の謎生物は、突然広い所へ放たれた驚きで少し固まったかに見えたが、すぐにすいすい泳ぎ出した。
それを確認して、脱衣所で鏡に向かい、裸になる。
鏡に映る自分の裸体は、思わずため息が出るほど醜かった。
飛び出た鎖骨。
鳥籠のような肋骨が透けて見える胸には、隆起と呼べるものはほとんどない。
その代わり、干しレーズンそっくりの黒ずんだ醜悪な突起が二つ、平らな胸板の左右についている。
下腹まで隠れる厚手の木綿のショーツを脱ぐと、骨と皮だけのX脚と、ナプキンで覆われた陰部が現れた。
今朝から替えていないナプキンは、経血をたっぷり吸って赤黒い色に染まっている。
生理はきのうから始まっていた。
未成熟な体型をしているくせに、私は昔から生理が重い。
特に2日目以降が最悪だ。
経血の量が多すぎて、うっかりしていると下着やボトムを汚してしまう。
そんな己の身体が憎くてしようがなかったのだが、それがようやく役に立つ時が来たのだ。
べりべりと音を立ててナプキンをはがすと、血にまみれた二列の肉襞が露わになった。
第二次性徴に見放された私の身体には、陰毛がない。
つるりとしたマネキン人形の陰部のようなそこには、肉の赤身みたいなむき出しの亀裂がじかに刻まれている。
見ているうちにも、鮑に酷似した肉襞の隙間から滲み出た新たな経血が、糸を引いて内腿を伝い落ちていく。
全裸の身体に血を流しながら、浴室に戻る。
浴槽の中をのぞきこむと、血の匂いに気づいたのか、いきなり”舌”が大暴れし始めた。
水面から首を出し、私のほうへと必死で伸び上がろうとするのだ。
ヤツメウナギの口がふたつ並んだようなその口吻をパクパクさせて…。
正円形の口の内径にびっしり植わった細かい歯に、私は瞬間、凍りつく。
が、意を決して右足を浴槽に差し入れた。
”舌”は警戒するように飛びのくと、浴槽の反対側の隅に丸まって私の所作をうかがう体勢を取る。
すぐには襲ってこないらしい。
そう見て取った私は、下半身を水の中に沈め、尻を底につけて縁にもたれ、”舌”に向かって両足を開いてみせた。
Mの字に開脚した足と足の間から、墨を流すように赤い血の糸が水中へと漂い出す。
「おいで」
私が呼びかけるのと、”舌”が動くのとが、ほとんど同時だった。
次の瞬間、陰部に激痛が走り、私は声を限りに絶叫していた。
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