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第321話 鼻うがい
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鼻うがいをすることにした。
右の鼻から薬液を吸い込み、左の鼻の穴から出すという、例のやつである。
テレビのCMでタレントが実演しているのを見た時には、なんだかひどくマヌケな感じがしたものだが、花粉症がここまでひどくなると、そうも言ってはいられない。
もう夏だというのに、今年は杉の花粉が多いのか、いっこうによくならないのだ。
近所の薬局で購入して、さっそく試してみることにした。
鼻から薬を吸い込むなんてきっと痛いに違いないー。
試す前はなんとなくそう思い込んでいたのだが、いざやってみると、そんなことは全然なかった。
薬液はとても滑らかな感触で、痛いどころか、むしろさわやかであることこの上ない。
気持ち良すぎて、すぐに病みつきになった。
右の鼻の穴から吸って、左の鼻の穴から出す。
たったこれだけの行為が、いつまでたってもやめられないのだ。
そのうちに、少し気になることが起こってきた。
左の鼻の穴から出てくる液が、だんだんと濁り始めたのだ。
灰色っぽくなったかと思うと、そこに赤茶色が混じって…。
あれえ、あらまが、なんか、ぼんやり、してきら、ぞ?
『今朝未明、都心のマンションの一室で、若い男性の死体が発見されました。死体には不思議なことに脳がなく、警察では事故死と他殺の両方を視野に、捜査を始めているということです…』
『大森製薬からのお願いです。このたび、弊社が発売した鼻うがい薬、〈ハナスッキリ〉に、人体に有害な成分が含まれていることが判明いたしました。つきましては、当該商品をお買い上げの方は、ご使用になる前に、至急当社までお申し出をお願いいたします。〈ハナスッキリ〉による死亡事故は、すでに200件にのぼっています。報告されている症状は、記憶力の著しい減退、言語能力の消失、重篤な場合は、脳の溶解による死亡、などです。なにとぞ、ご協力のほど、お願いいたします…』
右の鼻から薬液を吸い込み、左の鼻の穴から出すという、例のやつである。
テレビのCMでタレントが実演しているのを見た時には、なんだかひどくマヌケな感じがしたものだが、花粉症がここまでひどくなると、そうも言ってはいられない。
もう夏だというのに、今年は杉の花粉が多いのか、いっこうによくならないのだ。
近所の薬局で購入して、さっそく試してみることにした。
鼻から薬を吸い込むなんてきっと痛いに違いないー。
試す前はなんとなくそう思い込んでいたのだが、いざやってみると、そんなことは全然なかった。
薬液はとても滑らかな感触で、痛いどころか、むしろさわやかであることこの上ない。
気持ち良すぎて、すぐに病みつきになった。
右の鼻の穴から吸って、左の鼻の穴から出す。
たったこれだけの行為が、いつまでたってもやめられないのだ。
そのうちに、少し気になることが起こってきた。
左の鼻の穴から出てくる液が、だんだんと濁り始めたのだ。
灰色っぽくなったかと思うと、そこに赤茶色が混じって…。
あれえ、あらまが、なんか、ぼんやり、してきら、ぞ?
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