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第262話 宅配便
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インターフォンが鳴った。
「宅配便で~す」
「はあい」
ドアを開けると、作業着姿の若者が息を切らして立っていた。
足元には腰の高さほどもある段ボール。
有名家電メーカーのロゴが見える。
なんだろう?
家電なんて、買ったっけ?
最近、忙しすぎて記憶が定かじゃない。
昼間はコンビニのバイト、夜は地下アイドルとしての活動で、ろくに眠る暇もないのだ。
段ボールの表示からすると、中身はどうやら小型冷蔵庫のようだ。
確かに最近、冷え方が甘い気がするから、無意識のうちにネット注文してたとしても不思議じゃない。
なんて考えてると、
「よければ、中まで運びましょうか」
露出度の高いあたしの姿に顔を赤らめながら、業者の人が訊いてきた。
あたしってば、さっき起きたばかりで、スケスケのベビードールにレースのパンティしか身に着けていないのだ。
「いいんですか? じゃ、お願いします」
ワンルームの居間まで運んでもらい、
「ちょっと待っててください」
古いほうの冷蔵庫のコンセントを抜いて、たいして入っていない中身を出すと、代わりに持って帰ってもらった。
設置ぐらいは自分でできる。
第一、たとえ宅配業者のお兄さんといえども、赤の他人にあまり長い時間、部屋の中に居てほしくない。
そもそもあたし、こんなセクシーな格好、してるわけだし。
ガムテープをはがし、フタを開けた。
最悪の事態が起きたのは、その瞬間だ。
「ぎゃ」
悲鳴とともに、あたしは固まってしまった。
ありえないことに、全裸の男が膝を抱えてうずくまり、あたしのほうを見上げているのだ。
牛乳瓶の底みたいな分厚いレンズの眼鏡をかけているくせに、男は意外に敏捷だった。
立ちすくむあたしを尻目に身軽な動きで箱の中から出てくると、
「ちいちゃん、つ~かまえた!」
素早く背後に回って羽交い絞めにしてきたのである。
”ちいちゃん”というのは、あたしの地下アイドルグループでの芸名だ。
とするとこの闖入者、あたしのファンということか。
「お、おねがい、こ、殺さないで」
わざといたいけな少女を装って震えてみせる。
隙を見てキッチンの包丁で応戦してやる。
そのつもりで。
なのに、男の返事はあたしの予想のナナメ上を行くものだった。
「殺す? アハッ。ボクがちいちゃんにそんなことするはずないだろ? これから君を箱詰めにして、宅配便でボクの家へ送るのさ。そうすれば、晴れてちいちゃんも、ボクの美少女コレクションの仲間入りだよ」
変態男は有言実行だった。
数分後、あたしは手足を緊縛されて段ボール箱に詰め込まれ、新たな配送業者を待つばかりの身になっていた。
「宅配便で~す」
「はあい」
ドアを開けると、作業着姿の若者が息を切らして立っていた。
足元には腰の高さほどもある段ボール。
有名家電メーカーのロゴが見える。
なんだろう?
家電なんて、買ったっけ?
最近、忙しすぎて記憶が定かじゃない。
昼間はコンビニのバイト、夜は地下アイドルとしての活動で、ろくに眠る暇もないのだ。
段ボールの表示からすると、中身はどうやら小型冷蔵庫のようだ。
確かに最近、冷え方が甘い気がするから、無意識のうちにネット注文してたとしても不思議じゃない。
なんて考えてると、
「よければ、中まで運びましょうか」
露出度の高いあたしの姿に顔を赤らめながら、業者の人が訊いてきた。
あたしってば、さっき起きたばかりで、スケスケのベビードールにレースのパンティしか身に着けていないのだ。
「いいんですか? じゃ、お願いします」
ワンルームの居間まで運んでもらい、
「ちょっと待っててください」
古いほうの冷蔵庫のコンセントを抜いて、たいして入っていない中身を出すと、代わりに持って帰ってもらった。
設置ぐらいは自分でできる。
第一、たとえ宅配業者のお兄さんといえども、赤の他人にあまり長い時間、部屋の中に居てほしくない。
そもそもあたし、こんなセクシーな格好、してるわけだし。
ガムテープをはがし、フタを開けた。
最悪の事態が起きたのは、その瞬間だ。
「ぎゃ」
悲鳴とともに、あたしは固まってしまった。
ありえないことに、全裸の男が膝を抱えてうずくまり、あたしのほうを見上げているのだ。
牛乳瓶の底みたいな分厚いレンズの眼鏡をかけているくせに、男は意外に敏捷だった。
立ちすくむあたしを尻目に身軽な動きで箱の中から出てくると、
「ちいちゃん、つ~かまえた!」
素早く背後に回って羽交い絞めにしてきたのである。
”ちいちゃん”というのは、あたしの地下アイドルグループでの芸名だ。
とするとこの闖入者、あたしのファンということか。
「お、おねがい、こ、殺さないで」
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隙を見てキッチンの包丁で応戦してやる。
そのつもりで。
なのに、男の返事はあたしの予想のナナメ上を行くものだった。
「殺す? アハッ。ボクがちいちゃんにそんなことするはずないだろ? これから君を箱詰めにして、宅配便でボクの家へ送るのさ。そうすれば、晴れてちいちゃんも、ボクの美少女コレクションの仲間入りだよ」
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