156 / 464
第156話 真昼の死闘【前編】
しおりを挟む
久しぶりの小春日和だった。
うららかな陽射しに誘われて、公園広場に出た。
私の職場はこの公園の中にある図書館だ。
本が好きで入った職場だが、昼休みくらい、外の空気が吸いたくなる。
ベンチに座り、コンビニで買ったサンドイッチを袋から出す。
私は背が高いので、坐ると制服がずり上がってしまい、ただでさえミニ丈になってしまう。
こういう時、正面から見られたら中が丸見えでアウトんあおだが、幸い今は近くに人の気配はない。
と、油断していたら、そうではなかった。
嫌な視線を感じて顔を上げると、ありえない生き物が目に飛び込んできた。
犬である。
いつの間にやってきたのか、私の真ん前にちょこんと腰を下ろして、スカートの中を覗き込んでいる。
気色悪いのは、その犬が人間の顔をしていることだった。
しかも、見るからにすけべそうな、オヤジの顔である。
人面犬?
ぞぞっとうなじの産毛が総毛立った。
犬が腰を上げた。
視線を私のスカートの中に向けたまま、ゆっくり近づいてくる。
人面犬は明らかに卑猥な目的で私を見ていた。
そのことは、その舐めるような視線から明らかだった。
満員電車の中で時折感じる視線。
あれと同じだ。
「来ないで」
私ははじかれたように立ち上がった。
まだ手も付けていないサンドイッチが地面に転がった。
膝の内側がベンチに当たった。
これ以上、後ろには下がれない。
左右どちらか、横に動いて逃げるには、犬との距離が近すぎる。
まずい。
顔から血の気が引くのが分かった。
まるで投了間際の将棋盤。
私には逃げ場がない。
グルルルル…。
人面犬が喉を鳴らすような音を立て、耳まで裂けた口でにたりと笑った。
長い舌でべろりと濡れた鼻面を舐める。
「あっち、行きなさいよ!」
しっしと手で追い払おうとしても、犬は動じる様子もない。
それどころか、股間のイチモツを竿のように固くして、完全に私の下半身に狙いを定めているようだ。
グフフフフフ…。
人面犬の唸り声が、オヤジの笑い声に変わった。
そしてやにわに後ろ足で立ち上がると、愛犬が飼い主に甘えるように、前足を動けない私の身体に伸ばしてきた。
うららかな陽射しに誘われて、公園広場に出た。
私の職場はこの公園の中にある図書館だ。
本が好きで入った職場だが、昼休みくらい、外の空気が吸いたくなる。
ベンチに座り、コンビニで買ったサンドイッチを袋から出す。
私は背が高いので、坐ると制服がずり上がってしまい、ただでさえミニ丈になってしまう。
こういう時、正面から見られたら中が丸見えでアウトんあおだが、幸い今は近くに人の気配はない。
と、油断していたら、そうではなかった。
嫌な視線を感じて顔を上げると、ありえない生き物が目に飛び込んできた。
犬である。
いつの間にやってきたのか、私の真ん前にちょこんと腰を下ろして、スカートの中を覗き込んでいる。
気色悪いのは、その犬が人間の顔をしていることだった。
しかも、見るからにすけべそうな、オヤジの顔である。
人面犬?
ぞぞっとうなじの産毛が総毛立った。
犬が腰を上げた。
視線を私のスカートの中に向けたまま、ゆっくり近づいてくる。
人面犬は明らかに卑猥な目的で私を見ていた。
そのことは、その舐めるような視線から明らかだった。
満員電車の中で時折感じる視線。
あれと同じだ。
「来ないで」
私ははじかれたように立ち上がった。
まだ手も付けていないサンドイッチが地面に転がった。
膝の内側がベンチに当たった。
これ以上、後ろには下がれない。
左右どちらか、横に動いて逃げるには、犬との距離が近すぎる。
まずい。
顔から血の気が引くのが分かった。
まるで投了間際の将棋盤。
私には逃げ場がない。
グルルルル…。
人面犬が喉を鳴らすような音を立て、耳まで裂けた口でにたりと笑った。
長い舌でべろりと濡れた鼻面を舐める。
「あっち、行きなさいよ!」
しっしと手で追い払おうとしても、犬は動じる様子もない。
それどころか、股間のイチモツを竿のように固くして、完全に私の下半身に狙いを定めているようだ。
グフフフフフ…。
人面犬の唸り声が、オヤジの笑い声に変わった。
そしてやにわに後ろ足で立ち上がると、愛犬が飼い主に甘えるように、前足を動けない私の身体に伸ばしてきた。
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
意味がわかると怖い話
邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き
基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。
※完結としますが、追加次第随時更新※
YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*)
お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕
https://youtube.com/@yuachanRio
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。


体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる