上 下
141 / 419

第141話 公衆浴場にて

しおりを挟む
 久しぶりの銭湯だった。
 少し熱めの湯が、疲れた身体に心地よい。
 時間が早いせいか、今のところ、客は私ひとりだ。
 湯船につかってゆったりと手足を伸ばしていると、湯気の向こうに薄桃色の影が動いた。
 入ってきたのは、まだ10代ではないかと思われる若い女性である。
 若鮎のようなスリムな肢体を、恥ずかしそうに小さなタオルで隠している。
 女性はシャワーだけ浴びると、私に会釈をして、こちらに背を向け、バスチェアに坐って身体を洗い始めた。
「こんにちは。よかったら、お背中流しましょうか」
 時間を見計らい、明るく声をかけて、私は湯船から立ち上がった。
「え? あ、はい」
 振り向いた女性の目がいっぱいに見開かれたかと思うと、
「きゃあっ!」
 その可愛らしい口から悲鳴がほとばしった。
「へ、変態です! だ、誰か、助けて!」

 数分後。
 私は脱衣所で警察官に囲まれていた。
「困りますね。男性が女湯に入っては」
 銭湯の女主人が迷惑顔で言う。
「だから何度も言ってるでしょ!」
 私は警官と女主人をにらみつけた。
「あんたたち、トランスジェンダーって言葉、知らないの? あたしは身体は男だけど、心は女なの! 女が女湯に入って、何が悪いのよ!」
「そうは言いますけどね」
 中年のほうの警官が困ったように頭をかきながら、顎で示してみせた。
「それじゃ、説得力jないですよ。ごらんなさい、ご自分の”息子”さんを」
「え?」
 股間に視線を落とし、私は赤面した。
 そこでは、腰に巻いたタオルを大きく押し上げ、いきり立ったモノがギンギンに屹立していたのだ。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

意味がわかると下ネタにしかならない話

黒猫
ホラー
意味がわかると怖い話に影響されて作成した作品意味がわかると下ネタにしかならない話(ちなみに作者ががんばって考えているの更新遅れるっす)

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

意味がわかるとえろい話

山本みんみ
ホラー
意味が分かれば下ネタに感じるかもしれない話です(意味深)

生意気な女の子久しぶりのお仕置き

恩知らずなわんこ
現代文学
久しくお仕置きを受けていなかった女の子彩花はすっかり調子に乗っていた。そんな彩花はある事から久しぶりに厳しいお仕置きを受けてしまう。

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜おっぱい編〜♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート詰め合わせ♡

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

雌犬、女子高生になる

フルーツパフェ
大衆娯楽
最近は犬が人間になるアニメが流行りの様子。 流行に乗って元は犬だった女子高生美少女達の日常を描く

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

処理中です...