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第131話 収穫
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家族団らんでテレビを見ていたら、突然、臨時ニュースが始まった。
東京、大阪、名古屋の中心部に、巨大なUFOが出現したという。
中継の画像を見て、
「すっげー、ほんものだ」
中学生の次男が感嘆の声を上げた。
「んなの、どうせやらせじゃないの? フェイク動画ってやつだよ。今はやりの」
高校生の長女は食後のネイルに余念がない。
そのうちに、宇宙人にテレビが乗っ取られた。
イースター島のモアイ像みたいなのが画面に大写しになり、日本語でしゃべり始めたのである。
ー地球人のみなさん、おつかれさまでした。あなたたちはわれわれX星人の家畜です。立派に育ってくれてありがとう。本日はいよいよ、収穫にやってまいりましたー
「昔読んだSF小説に、こんなのがあったな」
電子タバコをくゆらせながら義父がつぶやいた。
「いやですよ、じいさん、何のんびりしてるんですか」
編み物しながら、義母がたしなめる。
「まあ、これが本当なら、そのうち避難命令が出るだろう。今は様子見だな」
夫の発言に、私は内心舌を巻いた。
さすが親子。肝が据わっているのか、あるいは単なる馬鹿なのか。
家族はあんなだけど、これはひそかに逃げる準備をしておいたほうがいいかもしれない。
ひとりそう心に決めた時である。
画面が東京都心に切り替わり、恐ろしい光景が映し出された。
着陸した巨大UFOの側面にぽっかり四角い穴が開き、そこに大勢の人間たちが吸い込まれていくのである。
まるで何かに操られているかのようにー。
「さすがにこれ、ヤバくね?」
トーストをくわえて次男が目を丸くする。
「だからそんなのフェイク動画だって!」
うるさそうに長女が言った時、画面が更なる衝撃的な映像に切り替わった。
ーでは、さっそく試食してみたいと思います。2万年待った甲斐がありました。うわあ、おいしそうですねえ。
UFOの中にはあのモアイに似た巨人たちが待ち構えていて、引き入れた人間たちを裸に剥くと、頭からむしゃむしゃ食べ始めたのだ。
「エグっ。あいつら、ガチみたいだよ」
「うえ、キモッ! 朝っぱらからこんなキショい番組やんないでよ!」
「うーん、これが本当だったら、きょうは会社、休みかもなあ」
「老人クラブの会合も、お流れかな」
「困りますねえ、今夜は推しのライブだっていうのに」
呆れるほど牧歌的な一家である。
こいつらのことは放っておいて、これは私一人、今すぐ遁走すべきかもしれない。
決心した瞬間である。
ーうげええええええっ!
絶叫とともに、画面の中の巨人たちが、嘔吐し始めた。
ーなんだ、こいつら! 中身、腐ってる!
それが侵略者たちの、最後の言葉だった。
東京、大阪、名古屋の中心部に、巨大なUFOが出現したという。
中継の画像を見て、
「すっげー、ほんものだ」
中学生の次男が感嘆の声を上げた。
「んなの、どうせやらせじゃないの? フェイク動画ってやつだよ。今はやりの」
高校生の長女は食後のネイルに余念がない。
そのうちに、宇宙人にテレビが乗っ取られた。
イースター島のモアイ像みたいなのが画面に大写しになり、日本語でしゃべり始めたのである。
ー地球人のみなさん、おつかれさまでした。あなたたちはわれわれX星人の家畜です。立派に育ってくれてありがとう。本日はいよいよ、収穫にやってまいりましたー
「昔読んだSF小説に、こんなのがあったな」
電子タバコをくゆらせながら義父がつぶやいた。
「いやですよ、じいさん、何のんびりしてるんですか」
編み物しながら、義母がたしなめる。
「まあ、これが本当なら、そのうち避難命令が出るだろう。今は様子見だな」
夫の発言に、私は内心舌を巻いた。
さすが親子。肝が据わっているのか、あるいは単なる馬鹿なのか。
家族はあんなだけど、これはひそかに逃げる準備をしておいたほうがいいかもしれない。
ひとりそう心に決めた時である。
画面が東京都心に切り替わり、恐ろしい光景が映し出された。
着陸した巨大UFOの側面にぽっかり四角い穴が開き、そこに大勢の人間たちが吸い込まれていくのである。
まるで何かに操られているかのようにー。
「さすがにこれ、ヤバくね?」
トーストをくわえて次男が目を丸くする。
「だからそんなのフェイク動画だって!」
うるさそうに長女が言った時、画面が更なる衝撃的な映像に切り替わった。
ーでは、さっそく試食してみたいと思います。2万年待った甲斐がありました。うわあ、おいしそうですねえ。
UFOの中にはあのモアイに似た巨人たちが待ち構えていて、引き入れた人間たちを裸に剥くと、頭からむしゃむしゃ食べ始めたのだ。
「エグっ。あいつら、ガチみたいだよ」
「うえ、キモッ! 朝っぱらからこんなキショい番組やんないでよ!」
「うーん、これが本当だったら、きょうは会社、休みかもなあ」
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呆れるほど牧歌的な一家である。
こいつらのことは放っておいて、これは私一人、今すぐ遁走すべきかもしれない。
決心した瞬間である。
ーうげええええええっ!
絶叫とともに、画面の中の巨人たちが、嘔吐し始めた。
ーなんだ、こいつら! 中身、腐ってる!
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