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第124話 阻むもの
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8時を過ぎたのに、真由美が下りてこない。
まだ寝ているのだろうか。
また夜遅くまでスマホで動画でも見ていたに違いない。
「いつまで寝てるつもり? 真由美、遅刻しちゃうよ!」
私は洗いかけの食器を流しに放置したまま、階段を上る。
真由美の部屋は二階の突き当りだ。
ドアにコルクボードで作った表札がかけてある。
「ったく、何やってるの? 開けるよ」
我が家の方針として、子供部屋には鍵がない。
だから、ドアノブを回すととすぐにカチリと音がした。
その時である。
ーママ、助けて・・・。
消え入りそうな、真由美の声がした。
「どうしたの?」
不安が突き上げ、ドアを引く。
薄暗い部屋に、真由美はいた。
パジャマ姿で、クッション代わりのぬいぐるみを抱えて、ベッドの上にうずくまっている。
その姿に、ひとまずほっとした。
でも、どうしてあんなにおびえているのだろう?
「どうしたの? 起きてるなら早く出てきなさいよ」
口調を和らげてそう言った時、私は真奈美の視線が部屋の一点に注がれていることに気づいた。
「あれがいるから、通れない…」
おそるおそるといった感じで、その一点を指さす真由美。
「何?」
その方向にを転じたとたん、私は危うく声を上げそうになった。
本棚と衣装ダンスの境目の狭い隙間。
そこに、何かが詰まっている。
床すれすれに顔があり、ぺちゃんこになった黒い体が上まで伸びている。
ニンゲン?
戦慄で、うなじの産毛がぞわりと逆立った。
ヒヒヒヒヒ…。
私と目が合うと、黒い影が声を立てずに笑い始めた。
まだ寝ているのだろうか。
また夜遅くまでスマホで動画でも見ていたに違いない。
「いつまで寝てるつもり? 真由美、遅刻しちゃうよ!」
私は洗いかけの食器を流しに放置したまま、階段を上る。
真由美の部屋は二階の突き当りだ。
ドアにコルクボードで作った表札がかけてある。
「ったく、何やってるの? 開けるよ」
我が家の方針として、子供部屋には鍵がない。
だから、ドアノブを回すととすぐにカチリと音がした。
その時である。
ーママ、助けて・・・。
消え入りそうな、真由美の声がした。
「どうしたの?」
不安が突き上げ、ドアを引く。
薄暗い部屋に、真由美はいた。
パジャマ姿で、クッション代わりのぬいぐるみを抱えて、ベッドの上にうずくまっている。
その姿に、ひとまずほっとした。
でも、どうしてあんなにおびえているのだろう?
「どうしたの? 起きてるなら早く出てきなさいよ」
口調を和らげてそう言った時、私は真奈美の視線が部屋の一点に注がれていることに気づいた。
「あれがいるから、通れない…」
おそるおそるといった感じで、その一点を指さす真由美。
「何?」
その方向にを転じたとたん、私は危うく声を上げそうになった。
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そこに、何かが詰まっている。
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ニンゲン?
戦慄で、うなじの産毛がぞわりと逆立った。
ヒヒヒヒヒ…。
私と目が合うと、黒い影が声を立てずに笑い始めた。
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