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第121話 案山子
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「うち、変なことに気づいちゃったんだよね」
ため息をつきながら、真奈美が言った。
授業後の教室。
私たちはなんとなく、掃除が終わった後も、教室に残って、だらだらしていた。
真奈美は机の上に写真を並べている。
写真部の彼女は、1眼レフのカメラとか持っていて、写真を撮るのが趣味なのだ。
私など、イマドキ写真なんてスマホで簡単に撮れるのに、と思ってしまうのだが、趣味人からすると、そういうものでもないらしい。
「変なことって?」
机の上に並んだ写真は3枚で、どれも風景写真で、なぜかみんな同じ景色である。
憂鬱な灰色の空を背景に、ただ延々と田んぼが広がっているだけだ。
「最近この町で続いて起きてる、女子高生失踪事件、知ってるでしょ」
「ああ、うん」
写真を覗き込みながら、私はうなずいた。
「先月、3人目が消えたっていうやつ?」
「あれ、1か月にひとりずつなんだよね」
そこでまたため息をついて、
「そんでもって、これ」
真奈美が一番右端の写真から、順番に指さしていく。
「この写真が3か月前。そしてこれが、2か月前。で、こっちが先月撮ったやつ」
「みんなおんなじに見えるけど」
「よく見て。一点だけ、違うとこがあるから」
「あ」
私は小さく声を上げた。
「案山子。案山子が、ひとつずつ、増えてる」
田んぼのあぜ道には、粗末な布切れをまとい、麦わら帽子をかぶった案山子が立っているのだがー。
それが、3か月前の写真では1体だったのが、2か月前の写真では2体、先月の写真では更に増えて、3体になっているのだ。
「何が言いたいの?」
私は立ち上がった。
「単なるうちの妄想だといいんだけどさ」
真奈美はまだ写真を眺めている。
「ここって、明菜の家の地所だよね?」
「そうだよ」
私は裁縫ばさみを振りかぶった。
「ちょうどよかったよ。気づいてくれて。またひと月経ったからさ、そろそろやらなきゃって、思ってたところだったんだ」
ため息をつきながら、真奈美が言った。
授業後の教室。
私たちはなんとなく、掃除が終わった後も、教室に残って、だらだらしていた。
真奈美は机の上に写真を並べている。
写真部の彼女は、1眼レフのカメラとか持っていて、写真を撮るのが趣味なのだ。
私など、イマドキ写真なんてスマホで簡単に撮れるのに、と思ってしまうのだが、趣味人からすると、そういうものでもないらしい。
「変なことって?」
机の上に並んだ写真は3枚で、どれも風景写真で、なぜかみんな同じ景色である。
憂鬱な灰色の空を背景に、ただ延々と田んぼが広がっているだけだ。
「最近この町で続いて起きてる、女子高生失踪事件、知ってるでしょ」
「ああ、うん」
写真を覗き込みながら、私はうなずいた。
「先月、3人目が消えたっていうやつ?」
「あれ、1か月にひとりずつなんだよね」
そこでまたため息をついて、
「そんでもって、これ」
真奈美が一番右端の写真から、順番に指さしていく。
「この写真が3か月前。そしてこれが、2か月前。で、こっちが先月撮ったやつ」
「みんなおんなじに見えるけど」
「よく見て。一点だけ、違うとこがあるから」
「あ」
私は小さく声を上げた。
「案山子。案山子が、ひとつずつ、増えてる」
田んぼのあぜ道には、粗末な布切れをまとい、麦わら帽子をかぶった案山子が立っているのだがー。
それが、3か月前の写真では1体だったのが、2か月前の写真では2体、先月の写真では更に増えて、3体になっているのだ。
「何が言いたいの?」
私は立ち上がった。
「単なるうちの妄想だといいんだけどさ」
真奈美はまだ写真を眺めている。
「ここって、明菜の家の地所だよね?」
「そうだよ」
私は裁縫ばさみを振りかぶった。
「ちょうどよかったよ。気づいてくれて。またひと月経ったからさ、そろそろやらなきゃって、思ってたところだったんだ」
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