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第74話 離島怪異譚④
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「なんかヤバい。すぐ車を出して」
助手席に乗り込むと、息せき切って私は言った。
岩場のほうを振り返る。
セーラー服の少女が立ち上がり、じっとこちらを睨みつけている。
なぜだかわからないが、背筋がぞっとした。
ブラウスから出た二の腕に鳥肌が立っている。
見てはいけないものを見てしまった。
そんな気がしてならない。
このあたりの岩場には、洞窟が多い。
そのうちのいくつかが、殺人現場の東海岸の洞窟とつながっていたとしても、別段おかしくはないだろう。
「ど、どうしたんですか? 藪から棒に?」
野崎が窓から吸いかけの煙草を指で弾き、アクセルを踏む。
「ヤバいって、何を見たっていうんですか?」
「蛸」
短く、私は答えた。
「タコ?」
おうむ返しに野崎が言う。
「そりゃ、この島は多湖島っていうぐらいですから、タコの名産地ですけど」
「いいから早く」
視界の隅を何かがかすめた。
バックミラーを見る。
やはり、追ってくる。
あの少女が、潮だまりの間をぴょんぴょん飛びながら、車と並行して岩場を走っているのだ。
「早くって、どこへ?」
「宿」
「ホテル浦島ですか? ケイ先輩、温泉好きだからなあ。でも、残念でした。あそこ、HP見ましたけど、ホテルなんて名ばかりの、ただのちっぽけな民宿でしたよ」
助手席に乗り込むと、息せき切って私は言った。
岩場のほうを振り返る。
セーラー服の少女が立ち上がり、じっとこちらを睨みつけている。
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見てはいけないものを見てしまった。
そんな気がしてならない。
このあたりの岩場には、洞窟が多い。
そのうちのいくつかが、殺人現場の東海岸の洞窟とつながっていたとしても、別段おかしくはないだろう。
「ど、どうしたんですか? 藪から棒に?」
野崎が窓から吸いかけの煙草を指で弾き、アクセルを踏む。
「ヤバいって、何を見たっていうんですか?」
「蛸」
短く、私は答えた。
「タコ?」
おうむ返しに野崎が言う。
「そりゃ、この島は多湖島っていうぐらいですから、タコの名産地ですけど」
「いいから早く」
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やはり、追ってくる。
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