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第47話 ちょっといい話
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満員電車の中。
優先席に茶髪の女子高生がふんぞり返って、しきりにスマホを弄っている。
その前には腰の曲がった老婆がひとり。
立っているのがいかにもつらそうに、吊り革につかまって揺れている。
たまりかねて、私は言った。
「ちょっとあんた、お年寄りが立ってるの、見えないの? そこ、優先席でしょ? 席、譲ってあげなさいよ」
女子高生がキッと顔を上げた。
「黙れババア。うざい。マジむかつく」
吐き捨てるようにそう言って、またスマホに目を落とす。
「何よ、その口の利き方! あんた、学校で敬語ってもの、習わなかったの?」
売り言葉に買い言葉で、ついそう怒鳴った時だった。
「いいんですよ」
柔和に微笑んで、老婆が言った。
「この子には、さっき私が席を譲ってあげたのです。なぜって、ほら、この子の方が、寿命短そうだから」
老婆の視線を追った私は、そこで初めて気づいた。
少女は、ゾンビだったのだ。
優先席に茶髪の女子高生がふんぞり返って、しきりにスマホを弄っている。
その前には腰の曲がった老婆がひとり。
立っているのがいかにもつらそうに、吊り革につかまって揺れている。
たまりかねて、私は言った。
「ちょっとあんた、お年寄りが立ってるの、見えないの? そこ、優先席でしょ? 席、譲ってあげなさいよ」
女子高生がキッと顔を上げた。
「黙れババア。うざい。マジむかつく」
吐き捨てるようにそう言って、またスマホに目を落とす。
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「いいんですよ」
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