上 下
10 / 434

第10話 離島怪異譚①

しおりを挟む
 多胡島は伊勢湾に浮かぶ離島のひとつで、人口500人に満たない小さな島である。
 その名の通り蛸漁で有名なため、通称”蛸島”と呼ばれている。
 そんな目立たない島が急に脚光を浴びることになったのは、忌まわしい連続猟奇殺人事件が発端だった。
 島の海岸で、若い女性のバラバラ死体が続いて2体、発見されたからだ。
 ふたりとも観光客で、互いに接点はなかった。
 ひとりは大学のサークルの仲間と島を訪れていた女子大生。
 もうひとりは、家族旅行に来ていた結婚2年目の主婦である。
 発見場所は、島の東海岸の洞窟の中。
 海水浴場とは反対側の、蛸漁の漁師しか訪れないような足場の悪い岩場だった。
 死体は全裸にされたうえ、手足と首を引きちぎられていた。
 刃物で切断されたのではなく、文字通り力任せに引きちぎられていたのだ。
 しかも、気味の悪いことに、死体にはどちらも情交の痕跡があった。
 死ぬ直前、ふたりの女性は誰かと愛を交わしていたらしいのである。
 女子大生の死体が発見されたのが、7月半ば。
 その2週間後に、主婦の死体が発見されている。
 犯行の手口が同じことから連続殺人事件とみなされ、蛸島を管轄する愛知県警が動いた。
 が、夏の終わりを迎えても、捜査に進展はなかった。
 ふたりは死体の発見場所である洞窟の中で殺され、解体されたらしく、満潮時の海水がすべての証拠を運び去ってしまっていたのだ。

 私が蛸島に降り立ったのは、9月の初旬。
 南シナ海で発生した台風が近づきつつある、うだるように蒸し暑いある日の午後のことだった。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

意味がわかると怖い話ファイル01

永遠の2組
ホラー
意味怖を更新します。 意味怖の意味も考えて感想に書いてみてね。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

10秒で読めるちょっと怖い話。

絢郷水沙
ホラー
 ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
よくよく考えると ん? となるようなお話を書いてゆくつもりです 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

処理中です...