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第10話 離島怪異譚①
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多胡島は伊勢湾に浮かぶ離島のひとつで、人口500人に満たない小さな島である。
その名の通り蛸漁で有名なため、通称”蛸島”と呼ばれている。
そんな目立たない島が急に脚光を浴びることになったのは、忌まわしい連続猟奇殺人事件が発端だった。
島の海岸で、若い女性のバラバラ死体が続いて2体、発見されたからだ。
ふたりとも観光客で、互いに接点はなかった。
ひとりは大学のサークルの仲間と島を訪れていた女子大生。
もうひとりは、家族旅行に来ていた結婚2年目の主婦である。
発見場所は、島の東海岸の洞窟の中。
海水浴場とは反対側の、蛸漁の漁師しか訪れないような足場の悪い岩場だった。
死体は全裸にされたうえ、手足と首を引きちぎられていた。
刃物で切断されたのではなく、文字通り力任せに引きちぎられていたのだ。
しかも、気味の悪いことに、死体にはどちらも情交の痕跡があった。
死ぬ直前、ふたりの女性は誰かと愛を交わしていたらしいのである。
女子大生の死体が発見されたのが、7月半ば。
その2週間後に、主婦の死体が発見されている。
犯行の手口が同じことから連続殺人事件とみなされ、蛸島を管轄する愛知県警が動いた。
が、夏の終わりを迎えても、捜査に進展はなかった。
ふたりは死体の発見場所である洞窟の中で殺され、解体されたらしく、満潮時の海水がすべての証拠を運び去ってしまっていたのだ。
私が蛸島に降り立ったのは、9月の初旬。
南シナ海で発生した台風が近づきつつある、うだるように蒸し暑いある日の午後のことだった。
その名の通り蛸漁で有名なため、通称”蛸島”と呼ばれている。
そんな目立たない島が急に脚光を浴びることになったのは、忌まわしい連続猟奇殺人事件が発端だった。
島の海岸で、若い女性のバラバラ死体が続いて2体、発見されたからだ。
ふたりとも観光客で、互いに接点はなかった。
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もうひとりは、家族旅行に来ていた結婚2年目の主婦である。
発見場所は、島の東海岸の洞窟の中。
海水浴場とは反対側の、蛸漁の漁師しか訪れないような足場の悪い岩場だった。
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