4 / 416
第4話 人間原理
しおりを挟む
「人間原理宇宙論って、知ってるか?」
にたりと笑って、ヒロシが言った。
学食の片隅のテーブル。
ヒロシの横では、カノジョの有希が退屈そうに頬杖をついている。
「万物は、観測する人間がいるからこそ存在するって考え方だよ。つまり、俺がよそを向いている間は、トモユキ、おまえは存在しないってことになる」
「なんでそうなるんだよ」
僕は少なからずむっとした。
ヒロシは暇があると僕にからんでくる。
美人の彼女を見せつけたいのか、そんな時はたいてい有希も一緒である。
「なぜなら、俺こそが観測者、この宇宙の中心だからだ。その気になれば、おまえを消すことだってできるんだぜ」
「ばかばかしい、なら、やってみろよ」
呆れて言い返すと、ヒロシのにやにや笑いが大きくなった。
「言ったな。後悔してもしらないぞ」
そして、大げさに指をパチンと鳴らした。
が。
消えたのは、僕ではなく、ヒロシのほうだった。
「え?」
ぽかんと口を開ける僕に、それまで黙っていた有希が、投げやりな口調で言った。
「馬鹿かつーの。観測者は、このあたしだよ」
にたりと笑って、ヒロシが言った。
学食の片隅のテーブル。
ヒロシの横では、カノジョの有希が退屈そうに頬杖をついている。
「万物は、観測する人間がいるからこそ存在するって考え方だよ。つまり、俺がよそを向いている間は、トモユキ、おまえは存在しないってことになる」
「なんでそうなるんだよ」
僕は少なからずむっとした。
ヒロシは暇があると僕にからんでくる。
美人の彼女を見せつけたいのか、そんな時はたいてい有希も一緒である。
「なぜなら、俺こそが観測者、この宇宙の中心だからだ。その気になれば、おまえを消すことだってできるんだぜ」
「ばかばかしい、なら、やってみろよ」
呆れて言い返すと、ヒロシのにやにや笑いが大きくなった。
「言ったな。後悔してもしらないぞ」
そして、大げさに指をパチンと鳴らした。
が。
消えたのは、僕ではなく、ヒロシのほうだった。
「え?」
ぽかんと口を開ける僕に、それまで黙っていた有希が、投げやりな口調で言った。
「馬鹿かつーの。観測者は、このあたしだよ」
2
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる