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第9部 倒錯のイグニス
#327 ラストステージ②
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聞こえてきたのが璃子の声だったことに、杏里はもっと警戒すべきだったのかもしれない。
両開きの扉を辛うじて通れるほど開き、中に滑り込んだ、その瞬間だった。
腹部に強烈な打撃を受けて、杏里は身体をくの字に折った。
「会いたかったよォ」
涙でにじむ眼で見上げると、目の前にふみの巨体が立ちはだかっていた。
レスリング部のビキニタイプのユニフォームを着込んだふみは、さながら直立した巨大なボンレスハムだった。
「ねえ、もっとお顔を見せてよう」
ふみが髪の毛をつかんで杏里をひきずり起こす。
よける暇もなく、いきなりキャッチャーミットのような分厚い手のひらが飛んできて、杏里の右頬を張り飛ばした。
更に鳩尾に蹴りを入れられ、ものすごい力で床に投げ飛ばされた。
大して衝撃を受けなかったのは、床がマットレスに覆い尽くされているからだった。
血反吐を吐きながら、身を起こす。
が、両手を突いて立ち上がりかけた時、その背中のくぼみを象のような脚でふみが踏みつけてきた。
あうっ。
背骨が軋み、身体が背中側に湾曲する。
上がった下顎を、ふみが蹴り上げる。
たまらず転がると、今度は脇腹に体育館シューズのつま先が突き刺さった。
「おお、あたしの杏里、可哀想に。でも、まず逃げられないようにしなきゃね。ちょっと痛いけど、ごめんね」
マットに右頬を埋めてうつぶせに倒れた杏里の腰に、ふみがまたがった。
蟹股のままジャンプすると、その大質量の重い尻で杏里を押し潰す。
まるでレスリング部の紅白戦の再現だった。
性的な悪戯を仕掛ける前に、ふみはどうやら杏里を戦闘不能の状態に追い込むつもりらしかった。
顎に両手をかけ、ふみの怪力が杏里の上半身を引き上げにかかった。
起重機並みの膂力を誇るふみのキャメル・クラッチに、杏里の背骨がぎしぎしと悲鳴を上げる。
限界まで折り曲げられ、杏里の口の端から鮮血の混じった白い泡が噴き出した。
ボンテージスーツの胸の穴から突き出した乳房の頂で、ピンクの乳首が震えている。
立て続けの暴力に、杏里の防御機能もまだ働き出していなかった。
痛みを快感に変える間も与えず、連続してふみが攻撃を加えてくるせいだ。
ふみの手が顎から首に移り、喉を潰さんばかりの勢いで締め上げてくる。
気管が塞がり、呼吸を遮断されて杏里は白目を剥いた。
苦しかった。
殺される、と思った。
不死身の生命体、タナトスの唯一の弱点は脳だ。
脳への酸素供給が途絶えれば、さすがのタナトスも脳死状態に陥ってしまうのだ。
意識が朦朧とし、閉じたまぶたの裏に白い光が広がっていく。
「気持ちいいかい?」
杏里の首に卍型に太い両腕をかけ、ふみが訊いた。
杏里の返事も待たず、無造作に左にひねった。
ぐきりと嫌な音がして、杏里の首が不自然な向きに曲がる。
「あら、ごめんなさい」
瞳孔の開き切った杏里の瞳を覗き込み、ふみが素っ頓狂な声を上げた。
「あたし、ちょっとやりすぎちゃったかな? なんか、杏里ちゃん、死んじゃったみたい」
両開きの扉を辛うじて通れるほど開き、中に滑り込んだ、その瞬間だった。
腹部に強烈な打撃を受けて、杏里は身体をくの字に折った。
「会いたかったよォ」
涙でにじむ眼で見上げると、目の前にふみの巨体が立ちはだかっていた。
レスリング部のビキニタイプのユニフォームを着込んだふみは、さながら直立した巨大なボンレスハムだった。
「ねえ、もっとお顔を見せてよう」
ふみが髪の毛をつかんで杏里をひきずり起こす。
よける暇もなく、いきなりキャッチャーミットのような分厚い手のひらが飛んできて、杏里の右頬を張り飛ばした。
更に鳩尾に蹴りを入れられ、ものすごい力で床に投げ飛ばされた。
大して衝撃を受けなかったのは、床がマットレスに覆い尽くされているからだった。
血反吐を吐きながら、身を起こす。
が、両手を突いて立ち上がりかけた時、その背中のくぼみを象のような脚でふみが踏みつけてきた。
あうっ。
背骨が軋み、身体が背中側に湾曲する。
上がった下顎を、ふみが蹴り上げる。
たまらず転がると、今度は脇腹に体育館シューズのつま先が突き刺さった。
「おお、あたしの杏里、可哀想に。でも、まず逃げられないようにしなきゃね。ちょっと痛いけど、ごめんね」
マットに右頬を埋めてうつぶせに倒れた杏里の腰に、ふみがまたがった。
蟹股のままジャンプすると、その大質量の重い尻で杏里を押し潰す。
まるでレスリング部の紅白戦の再現だった。
性的な悪戯を仕掛ける前に、ふみはどうやら杏里を戦闘不能の状態に追い込むつもりらしかった。
顎に両手をかけ、ふみの怪力が杏里の上半身を引き上げにかかった。
起重機並みの膂力を誇るふみのキャメル・クラッチに、杏里の背骨がぎしぎしと悲鳴を上げる。
限界まで折り曲げられ、杏里の口の端から鮮血の混じった白い泡が噴き出した。
ボンテージスーツの胸の穴から突き出した乳房の頂で、ピンクの乳首が震えている。
立て続けの暴力に、杏里の防御機能もまだ働き出していなかった。
痛みを快感に変える間も与えず、連続してふみが攻撃を加えてくるせいだ。
ふみの手が顎から首に移り、喉を潰さんばかりの勢いで締め上げてくる。
気管が塞がり、呼吸を遮断されて杏里は白目を剥いた。
苦しかった。
殺される、と思った。
不死身の生命体、タナトスの唯一の弱点は脳だ。
脳への酸素供給が途絶えれば、さすがのタナトスも脳死状態に陥ってしまうのだ。
意識が朦朧とし、閉じたまぶたの裏に白い光が広がっていく。
「気持ちいいかい?」
杏里の首に卍型に太い両腕をかけ、ふみが訊いた。
杏里の返事も待たず、無造作に左にひねった。
ぐきりと嫌な音がして、杏里の首が不自然な向きに曲がる。
「あら、ごめんなさい」
瞳孔の開き切った杏里の瞳を覗き込み、ふみが素っ頓狂な声を上げた。
「あたし、ちょっとやりすぎちゃったかな? なんか、杏里ちゃん、死んじゃったみたい」
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