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第9部 倒錯のイグニス

#252 最後の夜⑤

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 気がつくと、真っ裸のまま、部屋の真ん中に倒れていた。
 糸に引かれて乳房が妙な角度で上を向いてしまっている。
 苦労して乳首から糸をはずし、畳の上に転がっているスマホを手に取ると、すでに通話は切れていた。
 杏里の倒れていたあたりを中心にして、畳全体がバケツで水をぶちまけたように黒く湿っている。
 もちろんそれは水などではなく、杏里が分泌した汗と唾液と淫汁の混合液である。
 物憂げに起き上がり、机の上の目覚まし時計に目をやると、すでに夜の11時を過ぎていた。
「いけない…。明日の準備をして、もう寝なきゃ」
 よろよろと立ち上がり、ベッドサイドに腰を下ろした。
 それにしても、さっきのは何だったのだろう…?
 途中で電話の相手が、ヤチカから他に誰かに替わったようだった。
 そのとたん、”舌”が激しく反応して…。
 -その身体、私がもらったわー
 声は、確かにそう告げた。
 意味が分からないし、そもそもあれはいったい、誰だったのか?
 思い当たる節は、ないこともない。
 でも、あり得ない組み合わせだと思う。
 ヤチカが、あの女と一緒にいるなんて…。
 あまり考えたくないことだった。
 ヤチカと凛子・ふみのペアとの組み合わせだけでも十分不吉なのに、その上…。
 でも、似ていた。
 あの声。
 かつて私を狂わせた、あの魔性の女の声に…。 
 
 もう一度シャワーを浴び、こびりついた体液を洗い流した。
 明日のことを思い、特に膣の中は念入りにきれいにする。
 ふかふかのバスタオルで髪と身体を拭き、人心地を取り戻すと、杏里はそのままの格好で机の前に座った。
 引き出しから明日のために準備した品々を取り出して、机の上に並べていく。
 すべてもっくんのアダルトショップ、『ドリームハウス』で購入したものばかりである。
 黒い錠剤の『性露丸マグナム』。
 塗り薬の『ロイヤルゼラチン』。
 そして、セクシーな下着の数々。
 制服も、これまで以上に過激なものを着ていく必要がある。
 久しぶりに、化粧をしていくのも悪くない。
 明日の段取りを思い返してみる。
 正式なルール説明は明日の朝だろうが、わかっているのは、校庭に設置されたあのミニシアターからイベントがスタートするということ。
 第一の難関は、そこでのオープニングセレモニーだ。
 レスリング部のメンバーと、再戦しなければならないのである。
 凛子とふみはいないらしいが、代わりに紅白戦では味方だった純や咲良、美穂が敵に回ってしまう。
 できればここで彼女たち全員を一度に浄化し、スムーズなスタートを切りたいものだった。

 準備を整えると、杏里は全裸でベッドに入った。
 明日の朝、二種類の媚薬を服用したら、当分の間、気が休まることはなくなるはずだ。
 その意味でも、これがゆっくり休息できる最後の夜なのだ…。

 だが、眠ろうと意識すればするほど、目が冴えてきて眠れなかった。
 すべてを忘れて、眠るためよ。
 そう念じながら、杏里がいつものように自慰を始めるのに。大して時間はかからなかった…。
 






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