上 下
150 / 463
第9部 倒錯のイグニス

#150 ふみ④

しおりを挟む
 刻印が、現れない…。
 これは、いったい、どういう、こと…?
 切れ切れの意識の中で、杏里は思った。
 その事実が表しているのは、ふみも外来種ではないということだ。
 全部、私の、カン違い、だったってこと…?
 それとも…・
 ふと浮かんだもうひとつの恐ろしい想像に、杏里は慄然とした。
 仲間の中に、外来種が、いるって、こと?
 胸の奥をえぐられるような不気味な感触とともに、また肋骨が何本か折れたようだった。
 支えを失い、杏里は冷凍マグロのようにごろりと支柱から落下した。
 マットに叩きつけられ、口から血反吐と一緒に折れた前歯を吐き出した。
 が、ふみはまだ杏里をフォールする気はないようだった。
 動けぬ杏里を軽々持ち上げると、両手と両足をロープに絡め、固定した。
 全裸の杏里は、両手と両足を水平に伸ばし、股間を前に突き出す格好でロープにはりつけになっている。
 その前に立つふみは、まるで酔っ払いのように巨体をふらふら揺すり、口からだらだら涎を垂らしている。
 肉に埋もれた豚のそれのように細い目は、異常な光を宿し、完全にイッてしまっているように見える。
 どうやら、杏里の分泌物が、ふみの脳神経をも狂わせてしまったようだった。
 快楽中枢だけでなく、大脳全体に媚薬成分が回り、麻薬中毒患者に近い状態に陥っているのかもしれなかった。
「げへへへ、杏里、可愛いよ、いいザマだよねえ。もっと、もっと、可愛がってあげるからねえ」
 げたげた笑いながら、短い手で、杏里の胸と言わず腹と言わず、柔らかい部分を狙ってがむしゃらに殴りつけてきた。
 手足こそ短いものの、ふみの怪力は雌外来種の零や武闘派パトスの由羅なみである。
 たちまち杏里の身体の前面は紫色に腫れあがり、あちこちで皮膚が破れて血が噴き出してきた。
 そこに、ロープの反動を使って、更にふみが体当たりを繰り返す。
 全身の骨が砕けるような感覚に、杏里は恍惚となった。
 ここまで滅茶苦茶にされるのは、この前、本部で零と戦って以来だ。
 この世で最も醜いふみの巨躯に蹂躙され、肉体を破壊され続ける美少女。
 その凄絶なイメージが、死への恐怖を通り越し、杏里を真のエロスに近づけていた。
 ふみの体重で肉が爆ぜる。
 その繰り返しで、身体中の骨がザクザクになり、毛穴という毛穴からじわじわと血がにじみ出してくる。
 ガタガタになった筋肉組織が、疼くような快感にさざ波のように痙攣した。
「もっと…」
 舌の千切れた口で、杏里は哀願する。
「いいよ、ふみ、もっと…」
 その時だった。
「いい加減にしやがれ!」
 ふみの何十回目の突進の前に、咲良が立ちはだかった。
 飛んできたふみの巨体を、相撲の構えでがっしりと受け止めた。
「おまえなんか、人間じゃない!」
 そこに、コーナーポストからジャンプした純が降ってきた。
 そして、純の肘が、ふみの頭頂部に激突した。
 
 
 

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

秘密のキス

廣瀬純一
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

兄の悪戯

廣瀬純一
大衆娯楽
悪戯好きな兄が弟と妹に催眠術をかける話

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

処理中です...