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第4話 転生! 凌辱学園
#68 悲しき再会①
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杏里の実家は、農家を改造した平屋建ての一軒家である。
主の小田切勇次は20代後半の苦み走ったイケメンだが、偏屈で性機能不全という特性を備えている。
内閣府の外郭機関に勤めるいわゆる”みなし公務員”で、仕事の内容は謎に包まれている。
元の世界では、中学2年生の春から杏里は小田切と暮らしている。
とある事情から、杏里には家族と呼べるものがないからだった。
だから杏里と小田切の関係は養父と養女ということになるのだが、それにしても年齢が近かった。
こっちの私が大人ということは、勇次は何歳になっているのだろう?
単純計算すると30代半ばの中年男性ということになるのだが、問題は杏里のことを知っているかどうかだった。
ひなびたあばら家に帰るのは、ずいぶん久しぶりな気がした。
雑草の伸びた前庭を横切って、玄関に立つ。
がたついた引き戸を開けて、
「勇次、いる?」
こわごわそう声をかけてみた。
小田切の勤務時間は昼近くから、という場合が多い。
だから、この時間帯は在宅している可能性が高いのだ。
「なんだ? その声は杏里じゃないか?」
意外に早く返事が返ってきて、薄暗い家の中からぼさぼさ頭の男が現れた。
よれよれのパジャマにフチなし眼鏡のイケメン顔は、まぎれもなく杏里の知っている小田切勇次である。
ただ、全体的に肌に張りがなく、加齢の印象は拭えない。
「どうした? 月曜日から仕事じゃなかったのか? それとも、もう音を上げて戻ってきたのか?」
よかった!
胸に温かいものがこみ上げてきた。
勇次は私を知っている。その口ぶりからすると、こっちの世界でも私は彼と暮らしていたのだ。
「そうじゃなくて。きょうはちょっと、着替えを取りに寄っただけ」
勇次が相手だと、杏里はとたんに強気になる。
いわゆる内弁慶というやつだ。
理由は勇次が性的不能者だからにほかならない。
杏里の身体に欲情しない数少ない人間、それがこの小田切勇次なのである。
「着替えだと? おまえ、引っ越しの時、全部持ってったんじゃなかったのか? まあ、部屋はまだそのままにしてあるから勝手に探せばいいが、それにしても、おまえが家を出てから何年経ってると思ってるんだ」
勇次がいぶかしがるのも不思議はない。
元の世界と同じだとすると、杏里がひとり暮らしを始めたのは、高校に入学した16の時。
今仮に22歳だとすると、6年以上経過していることになる。
「なんでもいいの。この際、高校の制服でも、残ってるものなら」
そういい置いて、畳敷きの部屋をいくつも横切り、かつての自分の部屋に直行した。
勇次の言う通り、部屋は元のままだった。
なつかしさがこみ上げてきたが、今はそれどころではない。
この皺くちゃのブラウスとスカートを脱ぎ、なんとかましな服に着替えたい。
が、しばらく探し回って、愕然とした。
クローゼットに入っていたのは、中学生の時のセーラー服が一着だけ。
下着の類いはなく、辛うじて体操着とブルマが1セット、見つかっただけだった。
「ま、いっか。何もないよりはマシって気がするし」
シャワーを浴びて、さっぱりしたところで、いよいよ試着である。
下着代わりに体操服とブルマを身に着け、その上からセーラー服を着る。
「うは、ちっちゃ!」
驚いたのは、体操着もブルマもセーラー服も、みんなワンサイズ小さいことだ。
中学生の頃から杏里は大人びた身体をしていたはずなのだが、やはり今のがずっと成熟しているらしい。
体操着は寸足らずでへそが出てしまうし、ブルマときたらまるでビキニパンティだった。
セーラー服はやけにスカートが短く、歩くと尻が見えてしまうほどだ。
その格好で台所兼居間に顔を出すと、煙草をくゆらせながら新聞を読んでいた小田切が、
「なんだ、その格好は? おまえ、気でも狂ったか?」
杏里をひと目見るなり、仰天して眼鏡をずり下げた。
「しょうがないでしょ。これしかなかったんだから」
ぷっと頬を膨らませ、小田切の目の前の皿からトーストを取って勝手にかじる。
「まさか、いい年して、それで外を歩くつもりじゃないだろうな」
「別にいいでしょ。勇次に迷惑かけるわけじゃなし。今日中にどうしても会いたい人がいるの」
「会うって、誰に?」
「広田美衣ちゃん。知ってる? 隣の広田紗彩さんの姪っ子なんだって」
「広田って、丘の上のあの豪邸の? なんでおまえがあんな富裕層の住人と顔見知りなんだ?」
「色々あんのよ。私にだって」
「別に止めはしないが、しかしその変態じみた格好は…」
「コスプレよ、コスプレ。けっこうセクシーで似合ってると思わない?」
「風俗の店のハロウィンパーティなら受けるだろうが…まあ、せいぜい目立たないように隅を歩くんだな」
「相変わらず女を見る目がないね、勇次は。こんなナイスな美女を目の前にして」
「いいから行くならとっとと行け。俺ももうすぐ出るからな」
「はいはい」
勇次のおかげで少し気分が軽くなったようだ。
少なくとも、帰る家はある。
そうわかっただけでも、精神的な負担はずいぶん違う。
よし、後はみいを探し出すだけだ。がんばるぞ。
部屋に戻って鏡を見ながら、杏里は手っ取り早く化粧を直し始めた。
主の小田切勇次は20代後半の苦み走ったイケメンだが、偏屈で性機能不全という特性を備えている。
内閣府の外郭機関に勤めるいわゆる”みなし公務員”で、仕事の内容は謎に包まれている。
元の世界では、中学2年生の春から杏里は小田切と暮らしている。
とある事情から、杏里には家族と呼べるものがないからだった。
だから杏里と小田切の関係は養父と養女ということになるのだが、それにしても年齢が近かった。
こっちの私が大人ということは、勇次は何歳になっているのだろう?
単純計算すると30代半ばの中年男性ということになるのだが、問題は杏里のことを知っているかどうかだった。
ひなびたあばら家に帰るのは、ずいぶん久しぶりな気がした。
雑草の伸びた前庭を横切って、玄関に立つ。
がたついた引き戸を開けて、
「勇次、いる?」
こわごわそう声をかけてみた。
小田切の勤務時間は昼近くから、という場合が多い。
だから、この時間帯は在宅している可能性が高いのだ。
「なんだ? その声は杏里じゃないか?」
意外に早く返事が返ってきて、薄暗い家の中からぼさぼさ頭の男が現れた。
よれよれのパジャマにフチなし眼鏡のイケメン顔は、まぎれもなく杏里の知っている小田切勇次である。
ただ、全体的に肌に張りがなく、加齢の印象は拭えない。
「どうした? 月曜日から仕事じゃなかったのか? それとも、もう音を上げて戻ってきたのか?」
よかった!
胸に温かいものがこみ上げてきた。
勇次は私を知っている。その口ぶりからすると、こっちの世界でも私は彼と暮らしていたのだ。
「そうじゃなくて。きょうはちょっと、着替えを取りに寄っただけ」
勇次が相手だと、杏里はとたんに強気になる。
いわゆる内弁慶というやつだ。
理由は勇次が性的不能者だからにほかならない。
杏里の身体に欲情しない数少ない人間、それがこの小田切勇次なのである。
「着替えだと? おまえ、引っ越しの時、全部持ってったんじゃなかったのか? まあ、部屋はまだそのままにしてあるから勝手に探せばいいが、それにしても、おまえが家を出てから何年経ってると思ってるんだ」
勇次がいぶかしがるのも不思議はない。
元の世界と同じだとすると、杏里がひとり暮らしを始めたのは、高校に入学した16の時。
今仮に22歳だとすると、6年以上経過していることになる。
「なんでもいいの。この際、高校の制服でも、残ってるものなら」
そういい置いて、畳敷きの部屋をいくつも横切り、かつての自分の部屋に直行した。
勇次の言う通り、部屋は元のままだった。
なつかしさがこみ上げてきたが、今はそれどころではない。
この皺くちゃのブラウスとスカートを脱ぎ、なんとかましな服に着替えたい。
が、しばらく探し回って、愕然とした。
クローゼットに入っていたのは、中学生の時のセーラー服が一着だけ。
下着の類いはなく、辛うじて体操着とブルマが1セット、見つかっただけだった。
「ま、いっか。何もないよりはマシって気がするし」
シャワーを浴びて、さっぱりしたところで、いよいよ試着である。
下着代わりに体操服とブルマを身に着け、その上からセーラー服を着る。
「うは、ちっちゃ!」
驚いたのは、体操着もブルマもセーラー服も、みんなワンサイズ小さいことだ。
中学生の頃から杏里は大人びた身体をしていたはずなのだが、やはり今のがずっと成熟しているらしい。
体操着は寸足らずでへそが出てしまうし、ブルマときたらまるでビキニパンティだった。
セーラー服はやけにスカートが短く、歩くと尻が見えてしまうほどだ。
その格好で台所兼居間に顔を出すと、煙草をくゆらせながら新聞を読んでいた小田切が、
「なんだ、その格好は? おまえ、気でも狂ったか?」
杏里をひと目見るなり、仰天して眼鏡をずり下げた。
「しょうがないでしょ。これしかなかったんだから」
ぷっと頬を膨らませ、小田切の目の前の皿からトーストを取って勝手にかじる。
「まさか、いい年して、それで外を歩くつもりじゃないだろうな」
「別にいいでしょ。勇次に迷惑かけるわけじゃなし。今日中にどうしても会いたい人がいるの」
「会うって、誰に?」
「広田美衣ちゃん。知ってる? 隣の広田紗彩さんの姪っ子なんだって」
「広田って、丘の上のあの豪邸の? なんでおまえがあんな富裕層の住人と顔見知りなんだ?」
「色々あんのよ。私にだって」
「別に止めはしないが、しかしその変態じみた格好は…」
「コスプレよ、コスプレ。けっこうセクシーで似合ってると思わない?」
「風俗の店のハロウィンパーティなら受けるだろうが…まあ、せいぜい目立たないように隅を歩くんだな」
「相変わらず女を見る目がないね、勇次は。こんなナイスな美女を目の前にして」
「いいから行くならとっとと行け。俺ももうすぐ出るからな」
「はいはい」
勇次のおかげで少し気分が軽くなったようだ。
少なくとも、帰る家はある。
そうわかっただけでも、精神的な負担はずいぶん違う。
よし、後はみいを探し出すだけだ。がんばるぞ。
部屋に戻って鏡を見ながら、杏里は手っ取り早く化粧を直し始めた。
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