上 下
177 / 475
第3話 ずっとあなたとしたかった

#18 JKへの道②

しおりを挟む
 10分後、何事もなかったような顔で、杏里は保健室を出た。
 保健室のベッドでは、今頃例の熟女がいびきをかいて寝ているはずである。
 杏里にいたずらをしかけるものは、概してこうなることが多い。
 途中で興奮の極みに達し、自分ひとり先にイッてしまうのである。
 そうして脱力したように眠る。
 起きた時には何があったかまるで覚えていない。
 そのおかげで、杏里はあまり最後までやられたことがないのだ。
 校長室は、1階の奥、職員室の隣に位置していた。
「失礼します」 
 ノックをして声をかけると、
「入りたまえ」
 どこかで聞いたような、しわがれた声が返ってきた。
 ドアを開け、45度の角度で一礼する。
「座って」
 顔を上げると、深々としたソファの向こうに、小テーブルをはさんで鶴のように痩せた老人が座っていた。
 やっぱり。
 杏里は心の中でつぶやいた。
 あの時の面接官のひとりである。
 だが、杏里が驚いたのは、そのことではなかった。
 テーブルの上に、色とりどりの布切れが広げられている。
 手に取って見るまでもなかった。
 全部女性用下着だった。
 それもなぜかパンティばかり。
 老人は、それを一枚一枚手にとっては、鼻先に近づけ、匂いを嗅ぐようなしぐさをしている。
「笹原杏里君だね。わしはこの清流院高校の校長、二宮正太郎だ」
 黒いレースに鼻づらをうずめながら、二宮校長が言った。
「初めまして。笹原杏里です。ところで、校長先生、あの、これは…?」
 杏里は及び腰で向かい側のソファに尻をうずめると、テーブルの上の下着を目で示した。
「いや、実は君の中学校の卒業式の動画が、教育委員会で今注目を集めていてね。先頃の職員会議で、せっかく君が入学してくれるなら、このチャンスを逃す手はない、うちの入学式も、その方式でやったらどうかという案が出たんだよ」
 卒業式の動画?
 杏里は眉をひそめた。
 誰かがスマホで撮影してネットにでも流したのだろうか。
 それにしても、その動画を問題視するというならまだならわかるけど、注目しちゃってどうするのだ?
「でね、その時、どの下着を穿いてもらうとよりセクシーに見えるか、君と相談しようと思って、色々買いそろえておいたのだ。もちろん、わしが女性下着売り場に直接買いに行くわけにはいかんから、全部ネット通販で購入したものなのだがね」
 校長は異様に熱心である。
 どうも、冗談で言っているわけではないらしい。
「は、はあ」
 杏里は長い睫毛をぱちぱちさせた。
 この人、頭、大丈夫なのだろうか?
 そう思って、少しこわくなったのだ。
「なんならここで試着してもらってもいい。おお、我ながら名案だな。そうだ、それがいい。そうしよう」
「そ、そんな…」
 杏里はぽかんと口を開けた。
 開いた口が塞がらないとは、まさにこのことだ。
「職員室の先生たちも呼んで、投票で決めてもいいな。うーん、しかし、当日まで伏せておいて、その時あっと驚かせるという手もあるな。せっかくの機会だ。わしひとりでじっくり鑑賞したい気もするし…悩むのう」
「やめてください」
 杏里はきっぱりと言い切った。
「入学式のパフォーマンスは、別にかまいません。でも、パンティは私に選ばせてください。私には私なりの、下着の美学というものがありますから」
「ほほう。下着の美学とな」
 校長が身を乗り出してきた。
「面白そうだ。わしに教えてくれんかな」
「シンプル・イズ・ベスト」
 杏里は一枚の白いパンティをつまみ上げた。
「色は白。生地はうすうす。形はビキニ。これこそが、パンチラの時、もっともそそるパンティなのです。以上。証明終わり」


 


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

奇妙な日常

廣瀬純一
大衆娯楽
新婚夫婦の体が入れ替わる話

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...