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第3話 ずっとあなたとしたかった
#13 お引越し①
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みいとお風呂の中で1時間ほどたわむれた。
久しぶりの愛撫に没頭して、ふたりそろってのぼせそうになり、命からがら浴室を出た時である。
「あれ? 杏里さま」
桜色に上気した顔で、みいが振り向いた。
「どうしたの?」
バスタオルで身体を拭きながら訊くと、
「何か変です。さっきまでと、どこか違ってます」
ひどく真剣な表情で、みいが言った。
「違ってるって、何が?」
注意して周囲を見回してみると、閉めたはずのサッシ窓が少し開いて、風が吹き込んでいた。
「おかしいなあ、ちゃんと閉めたはずなんだけど」
近づいてベランダをのぞくと、床に足跡のようなものがついていた。
「げ。まさか」
杏里は絶句した。
「泥棒でしょうか」
おびえた口調で、みいが言う。
「泥棒なら、まだいいけど…」
周りをひと通り見回してみたが、なくなっているものはなさそうだ。
「覗き魔かな」
突き出した乳の下で腕組みして、杏里はつぶやいた。
「今の、ひょっとして、見られてたのかも」
「えーっ」
みいが悲鳴のような声を上げた。
「許せませんっ! そんなの」
真っ赤になって、抗議する。
「だよねえ。まだその辺に隠れてるかも。見つけたら、捕まえて、警察に突き出してやって」
「誰がですか? ひょっとして、みいが、ですかあ?」
「当然でしょ。私より、みいのほうが強いもの」
限りなく人間に近いものの、最新式AI搭載のラブドール型ペットロイドのみいは、クレーン車並みの馬鹿力の持ち主なのである。
「足跡は、右隣の部屋から続いているみたいです」
ベランダに出て、足跡を観察していたみいが言った。
「きっと、この仕切り壁を乗り越えて入ってきたんだと思います」
「そっか。なら、話は早いよ。隣に誰が住んでるか、管理人さんに聞けばいいもの」
「ですよね。いきなり乗り込むより、そのほうが得策かもですね」
こくんとみいがうなずいた。
身体と髪を乾かし、元のように服を着終えると、ふたりは廊下に出た。
管理人室にいるのが、あの青年だといいな。
鍵を閉めながら、ふと杏里は思った。
そういえば、1階のどこが、ハナコばあさんと青年の住居なのだろう。
「でも、杏里さま、女のひとり暮らしは、気をつけないといけませんね」
そんなことを考えていると、ふいに、心配そうな口調でみいが言った。
「これからも、何かあったら、すぐにみいを呼んでくださいね」
久しぶりの愛撫に没頭して、ふたりそろってのぼせそうになり、命からがら浴室を出た時である。
「あれ? 杏里さま」
桜色に上気した顔で、みいが振り向いた。
「どうしたの?」
バスタオルで身体を拭きながら訊くと、
「何か変です。さっきまでと、どこか違ってます」
ひどく真剣な表情で、みいが言った。
「違ってるって、何が?」
注意して周囲を見回してみると、閉めたはずのサッシ窓が少し開いて、風が吹き込んでいた。
「おかしいなあ、ちゃんと閉めたはずなんだけど」
近づいてベランダをのぞくと、床に足跡のようなものがついていた。
「げ。まさか」
杏里は絶句した。
「泥棒でしょうか」
おびえた口調で、みいが言う。
「泥棒なら、まだいいけど…」
周りをひと通り見回してみたが、なくなっているものはなさそうだ。
「覗き魔かな」
突き出した乳の下で腕組みして、杏里はつぶやいた。
「今の、ひょっとして、見られてたのかも」
「えーっ」
みいが悲鳴のような声を上げた。
「許せませんっ! そんなの」
真っ赤になって、抗議する。
「だよねえ。まだその辺に隠れてるかも。見つけたら、捕まえて、警察に突き出してやって」
「誰がですか? ひょっとして、みいが、ですかあ?」
「当然でしょ。私より、みいのほうが強いもの」
限りなく人間に近いものの、最新式AI搭載のラブドール型ペットロイドのみいは、クレーン車並みの馬鹿力の持ち主なのである。
「足跡は、右隣の部屋から続いているみたいです」
ベランダに出て、足跡を観察していたみいが言った。
「きっと、この仕切り壁を乗り越えて入ってきたんだと思います」
「そっか。なら、話は早いよ。隣に誰が住んでるか、管理人さんに聞けばいいもの」
「ですよね。いきなり乗り込むより、そのほうが得策かもですね」
こくんとみいがうなずいた。
身体と髪を乾かし、元のように服を着終えると、ふたりは廊下に出た。
管理人室にいるのが、あの青年だといいな。
鍵を閉めながら、ふと杏里は思った。
そういえば、1階のどこが、ハナコばあさんと青年の住居なのだろう。
「でも、杏里さま、女のひとり暮らしは、気をつけないといけませんね」
そんなことを考えていると、ふいに、心配そうな口調でみいが言った。
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