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第3話 ずっとあなたとしたかった
#5 杏里と卒業式①
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「きょうは卒業式じゃなかったか?」
味噌汁を一口すすって、小田切が言った。
3月7日の朝。
合格通知をもらってから、1か月が経っている。
「そうだよ」
杏里はすでに朝食を食べ終え、キッチンの壁の鏡に向かっていた。
肩まで伸びた髪を、ポニーテールにまとめているところだ。
「卒業式ぐらい、普通の格好で行ったらどうだ。もう、中学でやることは残っていないんだろ?」
杏里の服装を見て、わずかに顔をしかめる小田切。
杏里は黒いセーラー服に、赤と黒のタータンチェックのプリーツスカートといったいでたちだ。
丈の短い上着は爆乳にひっかかり、背中と臍が出ている。
スカートときたらマイクロミニに更に”超”がつくほどの短さで、少しかがんだだけで尻が丸見えの状態だ。
そのまあるい尻を包んでいるのは、純白のショーツだが、上下の幅が狭いため、ほぼ半ケツ。
しかも生地が薄いせいで、肉球の間のラインがくっきり見えていた。
「いいの、これで。校長先生が、いつもの格好で来いって言ってるから」
唇にリップクリームを塗りながら、杏里が答える。
セーラー服の襟元からのぞく胸の谷間は、一流のAV女優顔負けに深い。
「校長先生?」
「うん。杏里が卒業生代表で、式辞を読むんだよ」
「はあ?」
小田切の目が、眼鏡の奥で点になった。
「なんでまたおまえなんかが? 成績もよくないし、素行も悪いのに」
「ちょっと、人を不良みたいに言わないでくれる?」
振り向いて眉を吊り上げる杏里。
「これでも一応、推薦入試、特待生合格なんだからね。親孝行な娘でしょ」
「俺はおまえの親じゃない」
憮然とする小田切。
まだ20代の彼にしてみれば、こんな大きな娘がいるとは思われたくないのだろう。
「一応保護者なんだから、同じじゃん。トレーナーとしての自覚が足りないよ」
「まあ、そう言われれば、そうなんだが…。ところで、引っ越し先は決めたのか?」
旗色が悪くなり、小田切が話題を変えた。
「あー、忘れてる。この前話したでしょ? 駅の近くにいい物件見つけたって」
「そ、そうだったかな」
「日曜日の夜、お風呂から出た時話したじゃない。家賃4万円のワンルームでさ、インターネット代込み」
「4万? 馬鹿に安いな」
「うん。隣が墓地だから」
鏡の前でポーズをとって、何の屈託もない口調で、杏里が答えた。
「墓地?」
またしても、目を点にする小田切。
「大丈夫なのか? そんなところで?」
「え? なんで?」
「だってその…出るかもしれないだろ?」
「出る? 何が?」
「霊とか、何か、そんなような…」
きゃははは。
声を立てて杏里は笑った。
「勇次って、案外迷信深いんだ。そんなの、いるわけないじゃん! 出るとしたらせいぜい下着泥か変質者だよ」
「何にせよ、施錠には気をつけろ。まあ、相手が幽霊の場合、無駄かもしれんが」
「まだ言ってる」
鞄を手に取り、玄関に行く。
「あ、それでさ、きょう式の後、お引っ越しの下見で向こうへ直行するから、帰り、ちょっと遅くなる」
「待て。部屋を借りる手続きはどうなってる? 保証人がいるだろう?」
「大家さんがね、紗彩さんの知り合いだから、正式な手続きは後でいいって。今度ハンコだけ押しに来て」
「紗彩さんって、誰だ?」
「丘の上の一軒家の、奥様だよ。私、そこのみいと友だちなの」
「みい? 娘さんか?」
「違うよ。みいはペットなの。でも、頭もいいし、力持ちで、それにとってもかわいいんだ」
「ペットだと?」
小田切の目が点になるのは、きょうはもう、これで三度目だ。
「相変わらず、おまえの言うことはわけがわからん」
ムスッとして、電子煙草をくわえた。
「じゃね。来週には引っ越すから、勇次もそのつもりでね」
スキップするように外に出ると、春の日差しが暖かく杏里の全身を包み込んだ。
味噌汁を一口すすって、小田切が言った。
3月7日の朝。
合格通知をもらってから、1か月が経っている。
「そうだよ」
杏里はすでに朝食を食べ終え、キッチンの壁の鏡に向かっていた。
肩まで伸びた髪を、ポニーテールにまとめているところだ。
「卒業式ぐらい、普通の格好で行ったらどうだ。もう、中学でやることは残っていないんだろ?」
杏里の服装を見て、わずかに顔をしかめる小田切。
杏里は黒いセーラー服に、赤と黒のタータンチェックのプリーツスカートといったいでたちだ。
丈の短い上着は爆乳にひっかかり、背中と臍が出ている。
スカートときたらマイクロミニに更に”超”がつくほどの短さで、少しかがんだだけで尻が丸見えの状態だ。
そのまあるい尻を包んでいるのは、純白のショーツだが、上下の幅が狭いため、ほぼ半ケツ。
しかも生地が薄いせいで、肉球の間のラインがくっきり見えていた。
「いいの、これで。校長先生が、いつもの格好で来いって言ってるから」
唇にリップクリームを塗りながら、杏里が答える。
セーラー服の襟元からのぞく胸の谷間は、一流のAV女優顔負けに深い。
「校長先生?」
「うん。杏里が卒業生代表で、式辞を読むんだよ」
「はあ?」
小田切の目が、眼鏡の奥で点になった。
「なんでまたおまえなんかが? 成績もよくないし、素行も悪いのに」
「ちょっと、人を不良みたいに言わないでくれる?」
振り向いて眉を吊り上げる杏里。
「これでも一応、推薦入試、特待生合格なんだからね。親孝行な娘でしょ」
「俺はおまえの親じゃない」
憮然とする小田切。
まだ20代の彼にしてみれば、こんな大きな娘がいるとは思われたくないのだろう。
「一応保護者なんだから、同じじゃん。トレーナーとしての自覚が足りないよ」
「まあ、そう言われれば、そうなんだが…。ところで、引っ越し先は決めたのか?」
旗色が悪くなり、小田切が話題を変えた。
「あー、忘れてる。この前話したでしょ? 駅の近くにいい物件見つけたって」
「そ、そうだったかな」
「日曜日の夜、お風呂から出た時話したじゃない。家賃4万円のワンルームでさ、インターネット代込み」
「4万? 馬鹿に安いな」
「うん。隣が墓地だから」
鏡の前でポーズをとって、何の屈託もない口調で、杏里が答えた。
「墓地?」
またしても、目を点にする小田切。
「大丈夫なのか? そんなところで?」
「え? なんで?」
「だってその…出るかもしれないだろ?」
「出る? 何が?」
「霊とか、何か、そんなような…」
きゃははは。
声を立てて杏里は笑った。
「勇次って、案外迷信深いんだ。そんなの、いるわけないじゃん! 出るとしたらせいぜい下着泥か変質者だよ」
「何にせよ、施錠には気をつけろ。まあ、相手が幽霊の場合、無駄かもしれんが」
「まだ言ってる」
鞄を手に取り、玄関に行く。
「あ、それでさ、きょう式の後、お引っ越しの下見で向こうへ直行するから、帰り、ちょっと遅くなる」
「待て。部屋を借りる手続きはどうなってる? 保証人がいるだろう?」
「大家さんがね、紗彩さんの知り合いだから、正式な手続きは後でいいって。今度ハンコだけ押しに来て」
「紗彩さんって、誰だ?」
「丘の上の一軒家の、奥様だよ。私、そこのみいと友だちなの」
「みい? 娘さんか?」
「違うよ。みいはペットなの。でも、頭もいいし、力持ちで、それにとってもかわいいんだ」
「ペットだと?」
小田切の目が点になるのは、きょうはもう、これで三度目だ。
「相変わらず、おまえの言うことはわけがわからん」
ムスッとして、電子煙草をくわえた。
「じゃね。来週には引っ越すから、勇次もそのつもりでね」
スキップするように外に出ると、春の日差しが暖かく杏里の全身を包み込んだ。
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