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第1話 美少女ペットみい
#25 ペットの飼い主
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が。
だめだった。
何度やっても、だめだった。
ついに少女は息を吹き返すことなく、力尽きた杏里はその屍を抱いて泣き出した。
「ごめんね、私、つい夢中になっちゃって」
考えるまでもなく、この華奢な身体で杏里の相手は無理だったのだ。
おっぱいの大きさも体重も杏里の半分しかないのだから、もっと手加減してやるべきだったのだ。
「ごめんなさい。ほんとにごめん」
そうしてどのくらい泣き続けたのか。
ふいに鳴り響いたインターフォンの音に、杏里はぎくりと顔を上げた。
泣き疲れて、いつのまにか、うとうとしてしまっていたらしい。
見ると、縁側の外が白み始めていた。
のろのろとガウンを羽織り、力ない足取りで玄関に出て行くと、すりガラスの向こうにほっそりとした人影が所在なげにたたずんでいた。
「ごめんください。朝早く、申し訳ありません」
どこかで聞いた声。
杏里は青ざめた。
いけない!
隣の家のあの人だ。
「どうしても、みいのことが気になって…。夫にわがまま言って、一足先に帰ってきてしまいました」
観念するしかなかった。
警察にでも何でも行こう。
悪いのはこの私なのだから…。
「今開けます」
鍵を外し、立てつけの悪い引き戸を両手で引き開ける。
「ごめんなさいね。勝手なことばかり言って」
頭を下げ、女性が入ってきた。
ほのかな香の香りがふんわりと玄関に広がった。
「みいは元気かしら」
草履を脱ぎ、着物の裾を押さえながら上がってくる。
「それが…」
杏里はうなだれた。
「私の不注意で…彼女、死んじゃったんです」
口にするなり、どうしようもなく涙があふれてきた。
「え?」
女性が着物のたもとを口に当て、驚いたように目を見開く。
「人工呼吸とか、いろいろやってみたんですけど、だめでした」
「救急車は? 救急車は呼ばなかったの?」
「あ」
言われて、杏里は己の不明を恥じた。
そうだった。
まず119番すべきだったのに、私ときたら、完全に舞い上がってしまって…。
「思いつきませんでした。ごめんなさい」
呼べば、助かったかもしれないのに。
もう、杏里のばか!
自分の頭をげんこつでぽかりと叩いた時である。
「いえ、呼ばなくて正解だったわ。そんなことしたら、あなた笑いものになってたかも」
「笑いもの?」
「そう」
不思議なことに、女性はたもとで口を押えて、おかしそうにクックと笑っている。
「あの、何がおかしいんですか?」
杏里はむっとした。
「みいが、死んじゃったんですよ?」
「あの子、どこにいるの?」
女性が杏里の肩に手を置いた。
「会わせて。そうすれば、私の言ってる意味が、わかるから」
「こっちです」
女性に寄り添われ、杏里は奥の間に案内した。
布団の上で、少女が胎児のように丸くなっている。
「まあ、ずいぶん可愛がってくれたのね」
染みだらけの布団を目にとめて、感心したように女性が言った。
「あ、いえ、その」
しどろもどろになる杏里をしり目に、少女のかたわらに跪く。
「やっぱり…」
白魚のような指を伸ばして、赤い首輪をはずした。
うなじの中央を指でを押す。
すっと音もなく肌がスライドして、その下からコンセントのジャックが現れた。
「ただのバッテリー切れね。あんまりハッスルしすぎて、電池がなくなっちゃったのよ」
「で、電池、ですか?」
杏里は目をしばたいた。
何それ?
どういうこと?
茫然とする杏里を見上げ、女性が今にも吹き出しそうな表情で言った。
「わからなかった? みいは、最新型のラブドールなの。ね、すごいでしょ? ここまで人間そっくりだなんて」
だめだった。
何度やっても、だめだった。
ついに少女は息を吹き返すことなく、力尽きた杏里はその屍を抱いて泣き出した。
「ごめんね、私、つい夢中になっちゃって」
考えるまでもなく、この華奢な身体で杏里の相手は無理だったのだ。
おっぱいの大きさも体重も杏里の半分しかないのだから、もっと手加減してやるべきだったのだ。
「ごめんなさい。ほんとにごめん」
そうしてどのくらい泣き続けたのか。
ふいに鳴り響いたインターフォンの音に、杏里はぎくりと顔を上げた。
泣き疲れて、いつのまにか、うとうとしてしまっていたらしい。
見ると、縁側の外が白み始めていた。
のろのろとガウンを羽織り、力ない足取りで玄関に出て行くと、すりガラスの向こうにほっそりとした人影が所在なげにたたずんでいた。
「ごめんください。朝早く、申し訳ありません」
どこかで聞いた声。
杏里は青ざめた。
いけない!
隣の家のあの人だ。
「どうしても、みいのことが気になって…。夫にわがまま言って、一足先に帰ってきてしまいました」
観念するしかなかった。
警察にでも何でも行こう。
悪いのはこの私なのだから…。
「今開けます」
鍵を外し、立てつけの悪い引き戸を両手で引き開ける。
「ごめんなさいね。勝手なことばかり言って」
頭を下げ、女性が入ってきた。
ほのかな香の香りがふんわりと玄関に広がった。
「みいは元気かしら」
草履を脱ぎ、着物の裾を押さえながら上がってくる。
「それが…」
杏里はうなだれた。
「私の不注意で…彼女、死んじゃったんです」
口にするなり、どうしようもなく涙があふれてきた。
「え?」
女性が着物のたもとを口に当て、驚いたように目を見開く。
「人工呼吸とか、いろいろやってみたんですけど、だめでした」
「救急車は? 救急車は呼ばなかったの?」
「あ」
言われて、杏里は己の不明を恥じた。
そうだった。
まず119番すべきだったのに、私ときたら、完全に舞い上がってしまって…。
「思いつきませんでした。ごめんなさい」
呼べば、助かったかもしれないのに。
もう、杏里のばか!
自分の頭をげんこつでぽかりと叩いた時である。
「いえ、呼ばなくて正解だったわ。そんなことしたら、あなた笑いものになってたかも」
「笑いもの?」
「そう」
不思議なことに、女性はたもとで口を押えて、おかしそうにクックと笑っている。
「あの、何がおかしいんですか?」
杏里はむっとした。
「みいが、死んじゃったんですよ?」
「あの子、どこにいるの?」
女性が杏里の肩に手を置いた。
「会わせて。そうすれば、私の言ってる意味が、わかるから」
「こっちです」
女性に寄り添われ、杏里は奥の間に案内した。
布団の上で、少女が胎児のように丸くなっている。
「まあ、ずいぶん可愛がってくれたのね」
染みだらけの布団を目にとめて、感心したように女性が言った。
「あ、いえ、その」
しどろもどろになる杏里をしり目に、少女のかたわらに跪く。
「やっぱり…」
白魚のような指を伸ばして、赤い首輪をはずした。
うなじの中央を指でを押す。
すっと音もなく肌がスライドして、その下からコンセントのジャックが現れた。
「ただのバッテリー切れね。あんまりハッスルしすぎて、電池がなくなっちゃったのよ」
「で、電池、ですか?」
杏里は目をしばたいた。
何それ?
どういうこと?
茫然とする杏里を見上げ、女性が今にも吹き出しそうな表情で言った。
「わからなかった? みいは、最新型のラブドールなの。ね、すごいでしょ? ここまで人間そっくりだなんて」
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