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#97 〇〇〇爆弾④

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 落ちていくよだかは次第に光を放ち始めた。

 作品のラストシーンをなぞって、星になっているのだ。

 今のよだかは、いわば流星爆弾だった。

 又三郎が空を振り仰ぎ、何か叫んだようだった。

 その懐に飛び込むように、一筋の光が突き刺さる。

「やった!」

 ダーク=トルストイ、いや、今となってはカンパネルラとなった少年が、快哉の叫び声を上げた。

「ガラスのマントが砕けたぞ! よだか爆弾が、バリアを打ち破ったんだ!」

 その時にはすでに、私は砲塔の風防ガラスを開け、銀河鉄道の鼻先によじ登っていた。

「次は私の番! 白黒つけるから、このまま列車をMに衝突させて!」

 両手をメガホンにして、叫び返した。

 よだかに続き、銀河鉄道それ自体も爆弾として使う。

 それが私の考えた計画なのだ。

 そして、奥の手はー。

「わかった。やってやるよ。どうせカンパネルラはこの銀河鉄道を降りたら死ぬんだ。特攻して死んだところで同じことさ」
 
 風に逆らって、カンパネルラの声が途切れ途切れに聞こえてきた。

 私は銀河鉄道の鼻先にまたがった。

 正面から吹きつけてくる烈風に、眼を開けているのもひと苦労だ。

 線路は大きく弧を描き、いったん地上すれすれまで下がった後、急角度で上昇している。

 正直、ジェットコースターは大の苦手だけれど、この際文句を言ってもいられない。

 次の山の向こうが、魔王M-風の又三郎の立つ街である。

 頂点まで登り切ると、魔王の真っ黒な巨体と、驚愕に歪んだ顔が視界に入ってきた。

 銀河鉄道が坂を下り始め、速度がマックスに達した瞬間、私は列車の屋根を蹴って宙に飛び出した。

「賢治お兄ちゃん! トシはここだよ! もう悲しむことなんてないんだよ!」 
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