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カルロ•ハーラル•エドレッド2

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「またサボるのか?」

ベンチに現れた彼女に声を掛けると、

「あなたに言われたくないわ」

と言い返される。
この気の強さは意外とたまらない。
今まで俺にその様な言い方をする者はいないから新鮮だ。

「侯爵令嬢がいつもサボっていて何か言われないのか?」

「私の場合サボっているのではなくて自習ですわ。それに頭の悪い方達と授業を受けなくても常にテストは一位ですもの」

そう返される。

「一位?本当か?」

思わず聞いてみると、
「実際は二位ですけど‥」
と正直だ。
俺はもちろん知っているが、彼女にとっての俺は男爵家の三男だ。
別に正直に本当のことを言わなくてもいいのに真面目だ。
二位といっても、ほぼ一位と同格なのは俺が一番よく知っている。
こんなに正直で真面目で可愛らしい人がいたなんて‥‥
言葉を交わせることが嬉しかった。

「そもそもあなた、男爵家ならあちら側の棟でしょう?あちらのベンチを探しなさいよ」

突き放されたようで少しショックを受ける。

「随分と見下した言い方をするんだな。やっぱり妹をいじめているという噂は本当か?」

思わず口走ってしまう。
そのせいで彼女を傷つけてしまった様で、ポロッと涙を零した。
慌ててハンカチを渡すが手を払われた。
悪気は無かったのに、彼女を傷つけてしまった‥‥
その日、そのまま彼女は帰り、翌日も学園に来なかった。
急いで王宮へ帰ると、皆に今女性に人気の物は何かと聞いた。
見舞いなら、今は花よりフラワーケーキという物が女性に人気だという。

「ではそれを特大で作らせろ!」

彼女の家に届けさせた。
次の日も来なかった‥‥
怒って俺に会いたくないのかもしれない。

「おい!何か女性が喜ぶ物はないか?」

王宮内が騒がしくなる。

「殿下の一大事だ!皆、良い案はないか?」

コックが俺の元へ来た。

「殿下!珍しい果物が入っております。ゼリーなどはいかがでしょう?女性は喜ばれるかもしれません」

「よし!すぐ作って届けろ」

「はい。かしこまりました」

彼女は食べてくれるだろうか‥‥

「殿下、少しよろしいでしょうか?」

「何だ?」

父の従者であるサミュエルが俺の元へ来た。

「殿下がその様に女性を気に掛けることは初めてのことでございます。その方はどの様な女性なのですか?」

「どの様な‥‥。賢い女性だ」

「でしたら、本など読まれるのではないですか?」

「ああ、そうだな!本をよく読んでいる。本を届けよう」

「女性に人気の物がよろしいですか?」

「いや、彼女はあまりにも優秀だ。きっと俺よりも賢いだろう。普通の女性が読む物では物足りないだろう」

「でしたら、殿下が読まれている物はどうでしょう?それほどに賢い女性でしたら、良い案もお持ちかもしれません。お考えを聞かせていただいたらどうですか?」

「なるほど。彼女の感想が聞きたい」

「でしたら私が本を届けて参りましょう」

「ああ頼む」

「国王陛下も殿下の最近のご様子を大変気に掛けておられます。何かお伝えすることはございますか?」

「そうだな‥。彼女は優秀であるのに、今は授業が受けられない状況だ。何とか王族が使う場所を彼女に提供したい。父から学園の方に言ってもらいたい」

「なるほど‥‥かしこまりました。それで殿下はその女性をどう考えておられるのでしょう」

「俺は‥‥彼女を気に入っている。賢いだけでなく、真面目で正直者で美しい人で、笑うと可愛い人で、気は強いが繊細な人で、」

「もう十分ですよ!殿下」

「そうか?」

「陛下には全てお伝えしておきます。殿下が随分と惚れ込んでおられると‥」

「‥‥」



その夜、父に呼ばれた。
国王である父とは親子とはいえ、滅多に顔を合わせることはない。
特別な用がない限り簡単に会うことは出来ない。

「サミュエルから聞いている。随分と親しい女性ができたようだな」

「私の一方的な想いです」

「そうか。俺も父親として心配でな。彼女のことは色々と調べさせてもらっている。イザベラ•ボルヴァンドという女性は大変に賢く、使用人達からも慕われているようだな。父親が再婚したことにより、今は苦労しているようだな」

「はい‥。父上がその様に調べておられるとは知りませんでした」

「息子のお前には不自由な生活をさせてきている。何かお前の望みがあるようなら言ってみて欲しい。学園の事はすでに連絡してある。南の棟を使わせよう」

「ありがとうございます。では父上、ひとつお許しいただきたいことがございます」

「言ってみよ」

「イザベラ•ボルヴァンドを我が妃に望みます」

一瞬驚いたように目を大きくした。

「それが望みか?」

「それだけが望みです」

「わかった。認めよう」





翌日も彼女は来なかった。
もう来ない気だろうか‥‥
イザベラに会いたかった。
何かひと言、俺に話しかけてもらいたい。

「何かないだろうか‥‥」

「やっぱり女性は花じゃないですか?」

側近のデヴィットが軽くあしらうように言った。

「そうだな‥‥。山ほど花を贈ったら彼女は俺に文句のひとつも言いたくなるだろうか?」

「文句⁈」

「彼女には学園に来てもらいたい。少し大袈裟な事をしてみようか‥‥。おい!デヴィット!王都中の花屋に連絡しろ!」




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