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新時代
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「女王陛下の威厳あるお姿、大変勉強になりました。
ここには私の他にも他国から女王陛下へのご挨拶にいらっしゃってる方がおられますわ」
「⁈」
ベルラードを見ると軽く首を振る。
叔父を見れば同じように一度首を横に振った。
誰も聞いていない。
一体誰がここへ来てるというの?
‥‥私は全く知らないのだけど。
マリーは後ろを向き、スッと手を上げ合図する。
会場の隅からは黒い外套のフードまですっぽり被った背の高い男性が歩いて来るのが見える。
私はてっきり影の一人かと思っていた人物だ。
彼は歩きながらフードを上げ、外套を脱ぎ捨てた。
「!!あなたは」
私に向かって真っ直ぐに歩いて来る男性は褐色の肌をし、カラフルな民族衣装を身に纏っている。
いつぞやの少女のようだ。
「お初にお目にかかります、ルリア女王陛下。
ラヌー国のジャイロ・ラムールと申します。
この度は随分と珍しいものを見せていただきました」
「あなたは‥‥」
「こちらはラヌー国の現王ジャカル様の弟君で有らせられます」
「王弟殿下?」
「先触れもなく、このように女王陛下に謁見させていただくことをお許し下さい。
ダルトタナード国のマリエット王女様からお話をいただき、急いで飛んで参った次第です」
「?」
マリーを見ればとても楽しそうな表情だ。
彼女にとったら何もかもがゲームのようで、まるで自分の思い通りに駒を動かしているように思える。
今度は何をしようというの‥‥
「その節はルリア女王陛下に甥を助けていただいたそうで、そのお礼もできないままで大変失礼致しました」
「甥?」
男の子に会ったかしら‥‥
私が不思議そうな顔をしてたのか、ジャイロ王弟殿下は声を出して笑った。
「ダルトタナードで迷子になった子は私の甥です。
姉の息子です」
「え?あの少女は男の子だったの?」
「はははっ、はい、そうです。
我が国も王位継承は男のみ。ですので、甥にも順位は低いですが継承権があります。
ですからある一定の歳になるまでは命を守る為、女として生活をさせております。
我が国でも王族の命や王位を狙う者達がおりますのでご理解ください」
「そうですか。
あの子は元気にしておられますか?」
「ええ、もちろん。
助けてくださったルリア女王陛下を天使様と呼んでいて、もう一度天使様に会いたいと駄々をこねております。
甥の話では、天使のように美しい人だったと聞いておりましたが、本当に天上の女神のようにお美しい。
あの時私がダルトタナードを訪れていればよかったと後悔しております。
もっと早くお会いできれば違っていたかもしれませんから」
「おい、何が言いたい」
ベルラードは私の隣に立ちジャイロ王弟殿下を睨みつける。
「ダルトタナードの王太子はあまり感情を表に出さないタイプだと聞いておりましたが随分と分かりやすい方ですね」
「無礼だな」
「もぅお兄様!すぐにそうやって喧嘩腰になるのはおやめください!
ここが何処であるかお分かりですの?」
「‥‥」
置き去りにされたような貴族達は、為す術もなく推移を見守るしかなかった‥‥
「えっ‥と‥ジャイロ王弟殿下、この国に来てくださった理由は何かおありなのですか?」
「その理由は私がこれから申し上げます!」
マリーは声を張る。
そしてベルラードと私を交互に見て笑うと、
「アルンフォルト、ダルトタナード、ラヌー国の三つの国を統一し、アシュアリア帝国の復活を宣言致します!!」
「!!帝国⁈」
驚いて皆固まる。
何故かマリーが得意げに宣言してしまっている。
「おい、‥‥マリー」
「お兄様は私よりも迷信を教え込まれているのに何故考えなかったのですか?
ねーさまは帝国復活の象徴に相応しい方です!
ラヌー国の王も、見ず知らずのラヌー国の子供を助けてくれた女性ならば信用できると賛同くださいました。
今までの閉鎖的な考えは改め、共によい国にすると書状をいただいております。
よって、ダルトタナード国のベルラード・エルフィリオとアルンフォルト国のルリア・アルンフォルトとの婚姻を認め、二人がアシュアリア帝国の皇帝と皇后になることを三国一致で承認致します!!」
「あっ‥えっ?」
何と言っていいか分からず言葉が続かない。
驚きすぎて頭が真っ白になる。
「それじゃあ、ルリアを妃にできるのか?
私の妃にできるんだな?」
「お兄様、大きな貸しですわよ」
「ああ!!もちろん!!この借りは返す」
ベルラードは私を横向きに抱え上げ、まるでお姫様抱っこのようにすると、
「私は民が安心して暮らせるよう豊かな国造りに尽力し争いのない平和な世の中にすることを約束する!
私が皇帝となり、ここにアシュアリア帝国の復活を宣言する!!」
自然と拍手が沸き起こり、私は一日で王女から女王、女王から皇后となり受け入れられる許容範囲を超えたせいか、その後の記憶がなくなった‥‥。
ここには私の他にも他国から女王陛下へのご挨拶にいらっしゃってる方がおられますわ」
「⁈」
ベルラードを見ると軽く首を振る。
叔父を見れば同じように一度首を横に振った。
誰も聞いていない。
一体誰がここへ来てるというの?
‥‥私は全く知らないのだけど。
マリーは後ろを向き、スッと手を上げ合図する。
会場の隅からは黒い外套のフードまですっぽり被った背の高い男性が歩いて来るのが見える。
私はてっきり影の一人かと思っていた人物だ。
彼は歩きながらフードを上げ、外套を脱ぎ捨てた。
「!!あなたは」
私に向かって真っ直ぐに歩いて来る男性は褐色の肌をし、カラフルな民族衣装を身に纏っている。
いつぞやの少女のようだ。
「お初にお目にかかります、ルリア女王陛下。
ラヌー国のジャイロ・ラムールと申します。
この度は随分と珍しいものを見せていただきました」
「あなたは‥‥」
「こちらはラヌー国の現王ジャカル様の弟君で有らせられます」
「王弟殿下?」
「先触れもなく、このように女王陛下に謁見させていただくことをお許し下さい。
ダルトタナード国のマリエット王女様からお話をいただき、急いで飛んで参った次第です」
「?」
マリーを見ればとても楽しそうな表情だ。
彼女にとったら何もかもがゲームのようで、まるで自分の思い通りに駒を動かしているように思える。
今度は何をしようというの‥‥
「その節はルリア女王陛下に甥を助けていただいたそうで、そのお礼もできないままで大変失礼致しました」
「甥?」
男の子に会ったかしら‥‥
私が不思議そうな顔をしてたのか、ジャイロ王弟殿下は声を出して笑った。
「ダルトタナードで迷子になった子は私の甥です。
姉の息子です」
「え?あの少女は男の子だったの?」
「はははっ、はい、そうです。
我が国も王位継承は男のみ。ですので、甥にも順位は低いですが継承権があります。
ですからある一定の歳になるまでは命を守る為、女として生活をさせております。
我が国でも王族の命や王位を狙う者達がおりますのでご理解ください」
「そうですか。
あの子は元気にしておられますか?」
「ええ、もちろん。
助けてくださったルリア女王陛下を天使様と呼んでいて、もう一度天使様に会いたいと駄々をこねております。
甥の話では、天使のように美しい人だったと聞いておりましたが、本当に天上の女神のようにお美しい。
あの時私がダルトタナードを訪れていればよかったと後悔しております。
もっと早くお会いできれば違っていたかもしれませんから」
「おい、何が言いたい」
ベルラードは私の隣に立ちジャイロ王弟殿下を睨みつける。
「ダルトタナードの王太子はあまり感情を表に出さないタイプだと聞いておりましたが随分と分かりやすい方ですね」
「無礼だな」
「もぅお兄様!すぐにそうやって喧嘩腰になるのはおやめください!
ここが何処であるかお分かりですの?」
「‥‥」
置き去りにされたような貴族達は、為す術もなく推移を見守るしかなかった‥‥
「えっ‥と‥ジャイロ王弟殿下、この国に来てくださった理由は何かおありなのですか?」
「その理由は私がこれから申し上げます!」
マリーは声を張る。
そしてベルラードと私を交互に見て笑うと、
「アルンフォルト、ダルトタナード、ラヌー国の三つの国を統一し、アシュアリア帝国の復活を宣言致します!!」
「!!帝国⁈」
驚いて皆固まる。
何故かマリーが得意げに宣言してしまっている。
「おい、‥‥マリー」
「お兄様は私よりも迷信を教え込まれているのに何故考えなかったのですか?
ねーさまは帝国復活の象徴に相応しい方です!
ラヌー国の王も、見ず知らずのラヌー国の子供を助けてくれた女性ならば信用できると賛同くださいました。
今までの閉鎖的な考えは改め、共によい国にすると書状をいただいております。
よって、ダルトタナード国のベルラード・エルフィリオとアルンフォルト国のルリア・アルンフォルトとの婚姻を認め、二人がアシュアリア帝国の皇帝と皇后になることを三国一致で承認致します!!」
「あっ‥えっ?」
何と言っていいか分からず言葉が続かない。
驚きすぎて頭が真っ白になる。
「それじゃあ、ルリアを妃にできるのか?
私の妃にできるんだな?」
「お兄様、大きな貸しですわよ」
「ああ!!もちろん!!この借りは返す」
ベルラードは私を横向きに抱え上げ、まるでお姫様抱っこのようにすると、
「私は民が安心して暮らせるよう豊かな国造りに尽力し争いのない平和な世の中にすることを約束する!
私が皇帝となり、ここにアシュアリア帝国の復活を宣言する!!」
自然と拍手が沸き起こり、私は一日で王女から女王、女王から皇后となり受け入れられる許容範囲を超えたせいか、その後の記憶がなくなった‥‥。
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