上 下
78 / 89

戴冠の間8

しおりを挟む
「ライーズ・ブロイド公爵様です」

「ブロイド公爵⁈」

そんな‥‥ライーズ・ブロイド公爵は婚約者であったカイトの父親だ。
この国では由緒正しい家柄。 
何故そのようなことを‥‥信じられない。
思わずカイトを目でさがす。 
当主の列の後ろに並ぶ令息達の列に彼の姿はあった。
遠くからでも驚いている様子はわかる。

マリーの影であるバロンが嘘をつくはずはない。
それだけの証拠を押さえているはずだ。
一体どういうこと‥‥

頭の中でまたぐるぐると理由を模索する。
私が動揺してるなか、すぐに行動に移したのはリベール叔父様だった。

ブロイド公爵の所まで行き、胸ぐらを掴んで引っ張ってくると中央の紫色の絨毯の上に叩きつけた。

「ライーズ!!お前なのか!!
ブロイド家はずっと王家を支えてきた家門だろう、どういうことだ!!」

「何をするのです陛下!いや、リベール殿下と改めた方がよろしいのですか?
こんな子供じみた茶番劇に私はいつまで付き合わされるのですか?
私の家は代々王家を一番近くで支えてきた家門。
我がブロイド家ほど王家を崇拝してきた者はおりません! 
それはあなた様も十分に理解されておられるはずです。
それなのに、こともあろうに私がこの件に関係しているような根拠のないたわごとにはうんざりです。
あなた様に毒を盛ったのは給仕係であったはず。
自白し処刑されたはずです。
そして、ヴィルドルフ陛下は不運な事故だったのです。
エリック騎士団長が双子だとは初めて知りましたが、それが私に何の関係がありますか?
エリック騎士団長に非があることなら、そちらで話し合って下さい。
私は全くもって部外者。
今までの話もただ呆れて聞いているだけです。
ここにいる皆もそうでしょう。
わざわざ呼びつけられてこの茶番劇。
ルリア様が女王陛下などと、いい加減にしてください!
この国を率いるのが女などと恥ずかしくて他国には申せません!」

‥‥そうだったのね。
やっと点と点が繋がったわ。
彼の話の中に、その答えはあった。
人の本音とは隠せないもの‥‥
それが理由だったのね‥‥

「ライーズ・ブロイド。
あなたは女の私が王になるなど不服でしょうね。
あなたのブロイド家は、七代前の王弟殿下、ルークドリヒ・ブロイドを先祖にもつ由緒正しい家柄。
そして四代前の王妃は公爵家から嫁いできた令嬢だった。
その王妃の子が三代前の国王、ルークドリヒだった。
この王家と深い繋がりがあるブロイド家。
まさに王家を支えてきたわ」

「よくご存知でいらっしゃいます。
ならば私の言ってることはご理解くださいましたね?」

「ええ、十分に理解しました。
この国を思い、この王家を崇拝してきた家柄だからこその悪行です」

「⁈何ですと?」

「母がブルボマーナから嫁いできたことも、きっと面白くなかったでしょう。
そのうえ子供は娘の私一人。
後継者である王子を産むことができなかった母を疎んでいたのではないですか?
大国でありながら、子は女一人だなんて、隣国から陰口を叩かれていたことは耳にしたことがあります。
父はそれでも側妃を娶らなかった。
王家を支えてきたあなたは、父と母に憤りを感じていたことでしょう。
しかも、頼みの綱であったライナ王妃も王家の血を継がない子を産んでしまった。
ブロイド家が繋いできた王家の血は、何も残らなくなってしまった。
さぞ憎かったでしょうね?」

「はっ、そんな憶測で今度は私を陥れようとなさるのですか?
やはり頭がどうかされているのではないですか?
それに、そこのメイドや騎士は、この王宮では見たことのない人間です。
ここに仕えている者ではないはずです。
偽の使用人を用意して演技をさせるとは、ルリア様の方が随分とあくどいですね」

「あなたが王宮の人間を入れ替えたのね?
そうだったのね‥‥
確かに‥‥メイドと騎士はこの王宮の使用人ではありません」

「ははははっ!ついに認めましたね?
皆聞いたか?
この女王陛下は偽物まで用意した悪女だ!
かつて王を亡くした妃が、王位を狙って争いを起こしたのと同じだ!!
なんと欲深い‥。
女でありながら王位に就きたい為に自らこんな芝居をでっちあげたのだ!
何たる愚かな行為。
長い歴史をもつ我が国の汚点だ。
皆もこれで分かっただろう?
誰が一番の黒幕か、このルリア様こそが悪の根源だ!!」

両手を広げ、高らかに叫ぶ。
その表情は全て思い通りになったという自信に満ちていた‥‥。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。

三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。 それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。 頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。 短編恋愛になってます。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

【本編完結】若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!

はづも
恋愛
本編完結済み。番外編がたまに投稿されたりされなかったりします。 伯爵家に生まれたカレン・アーネストは、20歳のとき、幼馴染でもある若き公爵、ジョンズワート・デュライトの妻となった。 しかし、ジョンズワートはカレンを愛しているわけではない。 当時12歳だったカレンの額に傷を負わせた彼は、その責任を取るためにカレンと結婚したのである。 ……本当に好きな人を、諦めてまで。 幼い頃からずっと好きだった彼のために、早く身を引かなければ。 そう思っていたのに、初夜の一度でカレンは懐妊。 このままでは、ジョンズワートが一生自分に縛られてしまう。 夫を想うが故に、カレンは妊娠したことを隠して姿を消した。 愛する人を縛りたくないヒロインと、死亡説が流れても好きな人を諦めることができないヒーローの、両片想い・幼馴染・すれ違い・ハッピーエンドなお話です。

【書籍化決定】断罪後の悪役令嬢に転生したので家事に精を出します。え、野獣に嫁がされたのに魔法が解けるんですか?

氷雨そら
恋愛
皆さまの応援のおかげで、書籍化決定しました!   気がつくと怪しげな洋館の前にいた。後ろから私を乱暴に押してくるのは、攻略対象キャラクターの兄だった。そこで私は理解する。ここは乙女ゲームの世界で、私は断罪後の悪役令嬢なのだと、 「お前との婚約は破棄する!」というお約束台詞が聞けなかったのは残念だったけれど、このゲームを私がプレイしていた理由は多彩な悪役令嬢エンディングに惚れ込んだから。  しかも、この洋館はたぶんまだ見ぬプレミアム裏ルートのものだ。  なぜか、新たな婚約相手は現れないが、汚れた洋館をカリスマ家政婦として働いていた経験を生かしてぴかぴかにしていく。  そして、数日後私の目の前に現れたのはモフモフの野獣。そこは「野獣公爵断罪エンド!」だった。理想のモフモフとともに、断罪後の悪役令嬢は幸せになります! ✳︎ 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

処理中です...