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未来永劫の誓い

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あれから一週間

最後の宿に着いた

私の願いが沢山叶った旅が終わろうとしている

「アリー、明日はアルンフォルトに入るよ」

「はい、分かりました」

「疲れただろう?こんなに長い距離は初めてだろうからね」

「いいえ。毎日がご褒美の様に楽しかったです」

「はははっ、俺もアリーと一緒に過ごせて幸せだったよ」

そう言って私の頬に軽く口付けると、私達は手を繋いだまま椅子に腰掛けた

私にとって初めての自由な旅だった

大きな街では買い物を初めて楽しむ事も出来たし、珍しいお菓子も食べられて、お祭りの広場では皆で手を繋いで踊った事もあった
どれも楽しい思い出になっている‥‥

ただ気になったのは、私が歩く時‥‥

右隣にはヴィル様が、左隣にはルドルフ様が、前にはオリバー様が、後ろにはロバート様が、ぴったりと張り付いていた事だ
今まで心配をかけてきたせいだろうか

まるで、四人の騎士に囲まれているようだった
‥‥四人の騎士‥‥どこかで聞いたような‥‥


明日はもうアルンフォルトへ入る
ちなみに、リベール様は私達よりも5日ほど早くブルボマーナを発っている
きっともうアルンフォルトに居られるだろう

ヴィル様の育った国
共に歩む私の国にもなるのね‥‥

明日の事を思うと少し緊張してしまう

目の前のテーブルには、温かいハーブティーが置かれた
心が落ち着く優しい香り

今日は皆で外でお食事をいただいてきた為、あとは明日に備えて眠るだけだ

「お嬢様!今日こそは早く寝てくださいね!明日は朝早くから準備致しますよ」

サアラに念を押される

毎日楽しくてなかなか寝付けない日々が続いていた
夜更かししている事がサアラにはばれている‥‥

「アリー?緊張するかい?」

「ええ、少し」

ヴィル様は握ったままの手を持ち上げ、私の指に長い口付けをすると、そのまま頬に押し当てた

「俺は嬉しくて仕方ないよ。やっとアリーを連れて帰れるんだ。俺の妃だと皆に見せることが出来る。俺だけの妃だ」

甘くて熱いその美しい瞳に、私の胸も熱くなって鼓動が速まる

この至近距離の美貌の方が緊張してしまう‥‥

胸が高鳴って今日も眠れなくなりそうだった



翌朝、サアラは張り切っていた

「アルンフォルトの皆様に初めてお披露目するんですもの!私が張り切らなくてどうするんですか?」

と興奮気味に言うと、次々と支度を進めていく

今日のドレスも素敵だった
Aラインのロングドレスは、首元までレースで編み上げられ、袖も五分袖のレースでとても品が良い
胸元からはエメラルドの光沢のある生地で、生地には銀糸で刺繍が施されている
とても美しくて形の綺麗な上品なドレスだった

「お嬢様よくお似合いです。ヴィルドルフ殿下はお嬢様のことを本当によく解っておいでですね」

スラリと背の高いアリアンはAラインのドレスを美しく着こなす

髪を結い上げ銀細工の髪飾りを付ける
化粧は少し濃いめに仕上げられた

「完璧ですよ、アリアンお嬢様。お美しいです。これで大国アルンフォルトの皆様も王太子妃として喜んでお迎えしてくださる筈です」

サアラは満足気に両手を組むと目を輝かせている

朝早くから長い支度を終えて、やっと一息つくと馬車へ向かった

宿の外にはいつもよりも馬車が多く並んでいる

「アリー!すまない、迎えに行く時間を過ぎていたね」

「いいえ、気になさらないでください。今日は馬車や人が多い気がいたしますね」

「ああ。父がアルンフォルトから迎えを寄越してね。その対応で忙しくなってしまったんだ。ごめんよアリー」

「お忙しくされていたのですね。何も知らずに申し訳ありません」

ヴィル様をはじめ、騎士の方達も今日は正装で立派な身なりをされている
その姿を見て私も身の引き締まる思いがした

馬車の前には護衛騎士のルドルフ様とオリバー様とロバート様が立っておられた

「ルドルフ様、オリバー様、ロバート様、今日もよろしくお願い致します」

頭を下げると三人は笑った

「毎日律儀ですね、王女様」

ロバート様はふっと笑ったかと思うと、私の前で突然跪いた

「?‥‥ロバート様?」

「少しだけお時間をいただけますか?アリアン王女」

「ええ、勿論です」

そう言うと、隣のオリバー様もロバート様と同じように跪いた

「?‥‥」

何があるのかしら?
私は黙って二人を見た



ルドルフはその姿に目を見開いてポツリと呟いた
‥‥まさか‥‥



二人は剣を胸に当てると私を真っ直ぐに見た

「アリアン・カスティーヌ王女に未来永劫の忠誠をお誓い致します。
あなたの魂がこの世にある限り、必ずお側で守り抜くことを今ここで神に誓います。
いついかなる時も、あなたの剣となり盾となって未来永劫お守り致します」

二人は声を揃えて頭を下げた

「アリアン王女、どうか私達に『許す』と仰ってください」

「え?」

「どうか一言、お願いです」

二人は顔を上げると真剣に私を見つめた

つい頷いてしまった‥‥

「‥‥許します‥‥?」

「アリアン‼︎」
「アリー‼︎」

ルドルフ様とヴィル様が慌てて叫ぶのと同時に、私は深く考えずに思わず許しますと言葉を発した

その瞬間、頭の中で悲鳴が聞こえたけれど、何かしら?
気のせい‥‥かしら‥ね










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