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別れ

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別れの朝

王宮の前には沢山の馬車が並んだ

「準備が整いました、殿下」

「分かった、今行く」

ヴィルドルフはキーラの呼びかけに頷いた



「アリー、もうすぐ出発だよ」

「はい。ヴィル様」



私は王宮の前に立つ、父のスペンサー、ラリー伯父様、ラウル様の元へ別れの挨拶をする為向かった

三人を目の前にすると、自然と涙が溢れた

沢山言いたいことがあったのに、言葉がなかなか出てこない‥‥

涙だけがポロポロと零れ落ちた

私は父の目の前に立った

「アリアン。体に気をつけるんだよ。お前の幸せを誰よりも祈っている‥‥元気でな」

「お父様‥‥離宮で私を守り続けてくださったお父様に、感謝しております。どうか、お父様もお元気で‥‥」

父は私を抱きしめた
王である父には、あまり抱きしめられた事が無かった
けれどいつも気に掛けてくれ、父として出来る限りに母と私を守ってきたのだと思う
王妃やローズ、宰相の側に居ながら離宮を守るのは、きっと大変だっただろう‥

「アリアン。愛しているよ。どうか幸せに‥‥」

「はい。お父様」

父は抱きしめた手を放すと、私の額に口付けた
父は泣いていた‥‥
私は膝を曲げ、深く礼をした


隣に立つラリー伯父様の前に立った

「伯父様。私を守るため、お屋敷で匿ってくださった事、感謝しております。
今の私がこうして生きていられるのも、伯父様のおかげです」

「アリー。君が生きていてくれることが何よりも私の幸せだ。マリアの分もどうか幸せになってくれ。いつもアリーの幸せを祈っているよ」

伯父も私を抱きしめてくれた

「元気でねアリー。あまり無理をしないでくれ」

伯父も泣いていた

「はい。ラリー伯父様もどうかお元気で」

伯父は抱きしめた手を放すと、頬に軽く口付けをした

私は再び膝を曲げ、深く礼をした


その隣に立つラウル様の前に立つ

「ラウル様。お屋敷に慣れない私をいつも気遣ってくださり、ありがとうございました。
心から感謝しております。
屋敷の方に見つからないように、いつも声を掛け、励まし、支えてくださいましたね。そのおかげで私は辛い時も乗り越えられました。
感謝しております」

「アリー‥‥。アリーが屋敷から居なくなって寂しいよ。
アルンフォルトへ行っても、あまり無理をせず体に気をつけてね」

「はい。ラウル様もお体に気をつけて、どうかお元気で」

そう言い終えると同時にラウル様は私を強く抱きしめ、耳元でそっと言った

「アリーのこと、ずっと好きだったよ」

「え?」

私は驚いてしまった

ラウル様は少し体を離すと私の唇を塞いだ

「おい!ラウル!」

私の後ろで立っていたヴィル様が慌てて私を引き離す

「俺のアリーに何をするんだ!」

「ヴィルドルフ殿下は以前、私に褒美を取らせたいと仰ってくださいましたので、今、その褒美をいただきました」

「何と!‥‥。はぁ‥‥。わかった‥‥許そう」

ラウル様が私を見てニッコリと笑った

「いつでもサマフォートに戻って来ていいからね」

「アリーが戻ることは無い!」

ヴィル様は私の腰をがっちり抱き寄せた

「はははっ、ヴィルドルフ殿下。
アリーをよろしく頼みます」

「ああ。必ず幸せにすると約束する」


二人は固い握手を交わした


そして私達は馬車に乗り込み、故郷ブルボマーナを後にしたのだった‥‥




馬車の中では向かい合うように座ったヴィル様が、

「アリーは隙がありすぎるんだ!はぁ‥‥
‥」

「‥‥‥‥すみません」

それから暫くの間、ヴィル様の溜め息は続いた‥‥













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