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満月の下で‥‥

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一ヶ月が経とうとする頃、私は全員分の刺繍入りハンカチを完成させていた

王宮の部屋には日中常に人の出入りがあり、なかなか作業が進まなかった
その為、毎晩一人になってからの作業だった

そのせいで私は、日中時々寝てしまい、皆には具合が悪くなったのかと心配され、何度も侍医の診察を受けることになってしまった

夜中にせっせと刺繍をしていることは、皆には内緒の為、健康である事を主張する為にも食事はしっかり食べていた
甘い物も沢山食べていた

「これだけ食べられるようなら大丈夫ですよ」

侍医が来るたびに、私の食事の量を見て笑っていた

刺繍は集中力が必要だから、体力の消耗と脳の疲れが大きい‥‥
その為、よく食べてしまうのだと思う


「お嬢様、言い訳ですか?」

サアラは、時々辛辣だった‥‥



私はアルンフォルトへの出発の前日
晩餐で皆が集まった時に、一人一人にハンカチを差し出し、手渡しで感謝を伝えた

一人ずつに紋章や柄、色を変え作った物だ
全員が驚いて喜んでくれたように思う

このくらいでしかお返し出来ないが、心だけは込めたつもりだ

ブルボマーナで過ごす最後の夜

やはり少し寂しい気持ちになっていた‥‥

思い出せば、色々な事があったけれど、今は後悔など無いし、今の私は幸せだ


晩餐を終えた私は一人でバルコニーに出ていた

今日の月は満月で、とても綺麗だった

あの日、ヴィル様と再会した夜を思い出す‥‥


「あの日、君に再会した夜と同じだ」

私は驚いて振り返る
まるで心の中を読まれたようだった

「ヴィル様」

「君に出会えた俺は世界一幸せな男だ。君に出会う為に生まれてきたのだと思う」

「そんな‥‥大袈裟です」

「いや、今それを確信しているよ。アリーの側に居れることが何よりも俺の幸せなんだ」

「ヴィル様‥‥。私もヴィル様と共に歩める人生に感謝しております。この様な私をいつも支えてくださったヴィル様が居なければ、今日の私はおりません」

「アリー。私達が共に居ることは運命だ。離れることはできない。これからもずっと俺の側に居てくれるね?」

「はい。私でよろしいのであれば」

「君以外には考えられない。初めて結婚を申し込んだ時にそう言ったはずだ。
やっと俺の願いが叶うよ。ありがとう」

満月の月明かりにヴィル様のエメラルドの瞳はキラキラと光る

この美しい瞳は、いつも真っ直ぐ私を見つめてくれた

初めて王宮の庭園で声を掛けてくれたあの日と何も変わらない

私もこの瞳からは離れられないだろう

ヴィル様の手が頬を包む

「愛してるよ。アリー」

私は目を瞑った

満月の下、私達は永遠を誓う口付けを交わした







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