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リベールの不安

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食堂へ向かうヴィルドルフとアリアンの後ろを歩きながら、リベールは思っていた‥‥



兄はとても賢い男だった
父が兄を高く評価していることは、よく解っていた

一つ違いでありながら、兄の視野の広さは群を抜いていた
兄が国王となり、その手足となる覚悟を決めていた

父は言った
兄が戦をせずに、民を傷つける事なく国を手に入れそうだと‥‥
やはり兄は尊敬すべき人だと、その手腕を是非とも自分の目で見たいと願い出て付いて来たのだ

そして、蓋を開けてみたら‥‥
これは国を手に入れたかったのではなく、アリアンという一人の女性を傷付けた者達を切り捨てたかっただけだろう
アリアンを妻にしたかっただけだ
国はオマケだ
しかも、宰相の息子と二人でアリアンを守ろうとしている

この女のせいで、兄は国を飛び出し、何ヶ月も留守にしていた
アリアンという女性は、確かに美しい
類い稀な美貌の持ち主だ
一目惚れした兄の気持ちも理解出来る
だが、こんなにも人が変わる程の影響を与えるとは、彼女は王妃に相応しいのか‥‥
国王となる兄は、国の為に正しい判断をしていけるのか‥‥

兄の後ろ姿を見ながら思った

隣に居るアリアンを、時折気遣いながら歩いている
今までの兄ならば、令嬢を気遣うことなど無い
それどころか、話しすらまともにしない男だった
せいぜい愛想笑いで場を凌ぐ程度だ
妃は国の為になればいいと言っていた

なのに、このざまだ

何度も顔を覗き込んでは、嬉しそうに微笑んでいる
別人だと言った私の意見は間違っていないのに、本人には全く自覚が無い

本当にこのまま我が国の王妃となってもいいのか‥‥

アルンフォルトは、ブルボマーナの20倍以上の国土を持ち、軍は最強を誇っている
その頂点に立つべき王が、女にうつつを抜かしているようでは、国が滅びる

このブルボマーナも、アリアンの母であるマリア側妃の存在によって内乱が起きて、結果国を失ったようなものだ

その娘が我が国を滅ぼすことになるのではないか‥‥
我が国に連れ帰っても大丈夫なのか‥‥
もし、この女のせいで我が国にも内乱が起きたらどうする‥‥
別人のようになった兄を公爵達が見放したらどうする‥‥

その不安を拭えないまま、食堂への長い廊下を歩いていた


















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