57 / 97
第一部隊の初仕事
しおりを挟む
王都から遠く離れた辺境の地
古い酒場のカウンターに、一人の男が座って酒を飲んでいる
白髪交じりで、身なりは豪華な生地で仕立てた長いジャケットを着ている
上流階級の人間だとすぐに分かる
「良い酒を飲んでいますね」
その声に男が振り返る
「誰だ?お前は」
「私は旅の者ですよ。こんな辺境の酒場で見かけないような身分の方だと思ったので」
「旅の者?用も無いのに気安く声を掛けるな」
「大変失礼いたしました」
「平民の分際で近寄るな」
「いえ、私の家は侯爵の爵位を賜っております」
「あ?侯爵?何処の家だ」
「私はこの国の者ではございませんので」
「侯爵家の者が何故そのような農夫の格好をしている」
「この辺りで人探しをするには、農夫の格好が一番動きやすいものですから」
「人探し?」
「ええ。この国の王宮侍医を」
ガターン!
男は勢いよく出口に走り出した
「おっと」
戸の前では、先程まで酒を飲んでいた客が二人立っている
「どけ!早くどけ!」
「あなたを探していたのに、逃すわけにはいきませんね」
「あ?何だお前は!客だろう!」
「いいえ、隣国アルンフォルトの王家直属の騎士団ですよ」
「何だと!」
腕を片方ずつ掴まれている
「放せ!手をどけろ!」
白髪交じりの男は力いっぱい腕を振るが男達は微動だにしない
後ろからゆっくりと先程の農夫姿の男がやって来た
「こんな辺境の地に隠れていたいのなら、せめて農夫の格好でもしたら良かったのではないですか?その様な身なりでは目立ちますからね」
「何なんだ、お前達は!何故私を捕まえる」
「ご自分が一番解ってるのではないですか?」
「何の事だ!お前達にこの国の事は関係ないだろう!隣国の人間が何の為にこんな事をするんだ!」
「我が主君のご命令ですからね。大人しく来ていただきましょう」
「手を放せ!私は侍医だぞ、騎士などとは立場が違う!無礼者、手を放せ!」
「そうですね。立場が違う。あなたはただの罪人だ」
「何だと貴様!偉そうな口を利くな」
「私はアルンフォルト国騎士団、第一部隊、隊長オリバーケイル。あなたを我が主君、ヴィルドルフ王太子殿下のもとへ連行する」
「何だと!やめろ!放せ!」
汗を流しながら必死に抵抗を続ける侍医に、相変わらず屈強な騎士は微動だにしない
「隊長!こいつうるさいので、大人しくさせてもいいですか?」
「あぁ、そうだな。理解力の足りない者にはその方が早い。だが、殿下の前では口を利ける程度にしておいてくれよ」
「はい。手加減はしますよ。俺も素人じゃありません」
ははははっ
店中の者が笑う
「お前に手加減なんて出来るのか?」
「手加減の意味知らないぜアイツは」
「そうそう、アイツの手加減は手加減とは言わないな」
店の中には農夫姿の客が10人
客の様に見えるが全員が騎士である
「先輩達、新人に冷たくないですか?」
「はははっ、俺達こんなに可愛がってるのにな?」
「あぁ、新人に大事な仕事を任せてやってるしな」
「隊長!これは苛めとは言わないんですか?」
「はぁ。こらこら、お前ら。第一部隊としてもっと品良くしてくれよ!また第二部隊のお坊ちゃん達に嫌味を言われるぞ!」
「はいはい!解りましたよ」
「アイツら偉ぶりすぎだよな!第一部隊は俺達だぜ」
「だよな」
「放せ!放せ!この野蛮な馬鹿ども」
叫び続ける王宮侍医は、突然「うっ」と声を上げると気を失った
「俺、手加減上手ですよね?」
「調子に乗るなよ、新人」
「はーい」
アルンフォルト国には、最強と謳われる王家直属の騎士団がある
騎士団第一部隊は、貴族の上流、中流、下流階級が混ざっている隊であった
階級では無く、剣術の腕前が一番重視されている
剣術大会で優勝した者や同等の実力を持つ騎士の精鋭部隊、強豪揃いなのである
隊員は30人程で構成されていた
対する第二部隊は、上流階級のみの騎士で隊を構成されている
公爵家の次男坊を隊長とし、頭脳派集団と呼ばれている
勿論、第二部隊というだけあり、腕前も一流だ
第一部隊の者には及ばずとも、十分精鋭部隊と呼べる腕前だ
第二部隊も30人程である
部隊は、第十部隊まである
第五部隊以降は、隊員数も増える
第十部隊は、庶民達との距離が近い存在であり、街の治安を守る為巡回などをしたり、国の式典などには警備や護衛を任されている
隊員は300人を超えている
ちなみに第五部隊は、影の集団となっている
そして、その騎士団を束ねる騎士団長は、キーラの父親なのであった
古い酒場のカウンターに、一人の男が座って酒を飲んでいる
白髪交じりで、身なりは豪華な生地で仕立てた長いジャケットを着ている
上流階級の人間だとすぐに分かる
「良い酒を飲んでいますね」
その声に男が振り返る
「誰だ?お前は」
「私は旅の者ですよ。こんな辺境の酒場で見かけないような身分の方だと思ったので」
「旅の者?用も無いのに気安く声を掛けるな」
「大変失礼いたしました」
「平民の分際で近寄るな」
「いえ、私の家は侯爵の爵位を賜っております」
「あ?侯爵?何処の家だ」
「私はこの国の者ではございませんので」
「侯爵家の者が何故そのような農夫の格好をしている」
「この辺りで人探しをするには、農夫の格好が一番動きやすいものですから」
「人探し?」
「ええ。この国の王宮侍医を」
ガターン!
男は勢いよく出口に走り出した
「おっと」
戸の前では、先程まで酒を飲んでいた客が二人立っている
「どけ!早くどけ!」
「あなたを探していたのに、逃すわけにはいきませんね」
「あ?何だお前は!客だろう!」
「いいえ、隣国アルンフォルトの王家直属の騎士団ですよ」
「何だと!」
腕を片方ずつ掴まれている
「放せ!手をどけろ!」
白髪交じりの男は力いっぱい腕を振るが男達は微動だにしない
後ろからゆっくりと先程の農夫姿の男がやって来た
「こんな辺境の地に隠れていたいのなら、せめて農夫の格好でもしたら良かったのではないですか?その様な身なりでは目立ちますからね」
「何なんだ、お前達は!何故私を捕まえる」
「ご自分が一番解ってるのではないですか?」
「何の事だ!お前達にこの国の事は関係ないだろう!隣国の人間が何の為にこんな事をするんだ!」
「我が主君のご命令ですからね。大人しく来ていただきましょう」
「手を放せ!私は侍医だぞ、騎士などとは立場が違う!無礼者、手を放せ!」
「そうですね。立場が違う。あなたはただの罪人だ」
「何だと貴様!偉そうな口を利くな」
「私はアルンフォルト国騎士団、第一部隊、隊長オリバーケイル。あなたを我が主君、ヴィルドルフ王太子殿下のもとへ連行する」
「何だと!やめろ!放せ!」
汗を流しながら必死に抵抗を続ける侍医に、相変わらず屈強な騎士は微動だにしない
「隊長!こいつうるさいので、大人しくさせてもいいですか?」
「あぁ、そうだな。理解力の足りない者にはその方が早い。だが、殿下の前では口を利ける程度にしておいてくれよ」
「はい。手加減はしますよ。俺も素人じゃありません」
ははははっ
店中の者が笑う
「お前に手加減なんて出来るのか?」
「手加減の意味知らないぜアイツは」
「そうそう、アイツの手加減は手加減とは言わないな」
店の中には農夫姿の客が10人
客の様に見えるが全員が騎士である
「先輩達、新人に冷たくないですか?」
「はははっ、俺達こんなに可愛がってるのにな?」
「あぁ、新人に大事な仕事を任せてやってるしな」
「隊長!これは苛めとは言わないんですか?」
「はぁ。こらこら、お前ら。第一部隊としてもっと品良くしてくれよ!また第二部隊のお坊ちゃん達に嫌味を言われるぞ!」
「はいはい!解りましたよ」
「アイツら偉ぶりすぎだよな!第一部隊は俺達だぜ」
「だよな」
「放せ!放せ!この野蛮な馬鹿ども」
叫び続ける王宮侍医は、突然「うっ」と声を上げると気を失った
「俺、手加減上手ですよね?」
「調子に乗るなよ、新人」
「はーい」
アルンフォルト国には、最強と謳われる王家直属の騎士団がある
騎士団第一部隊は、貴族の上流、中流、下流階級が混ざっている隊であった
階級では無く、剣術の腕前が一番重視されている
剣術大会で優勝した者や同等の実力を持つ騎士の精鋭部隊、強豪揃いなのである
隊員は30人程で構成されていた
対する第二部隊は、上流階級のみの騎士で隊を構成されている
公爵家の次男坊を隊長とし、頭脳派集団と呼ばれている
勿論、第二部隊というだけあり、腕前も一流だ
第一部隊の者には及ばずとも、十分精鋭部隊と呼べる腕前だ
第二部隊も30人程である
部隊は、第十部隊まである
第五部隊以降は、隊員数も増える
第十部隊は、庶民達との距離が近い存在であり、街の治安を守る為巡回などをしたり、国の式典などには警備や護衛を任されている
隊員は300人を超えている
ちなみに第五部隊は、影の集団となっている
そして、その騎士団を束ねる騎士団長は、キーラの父親なのであった
11
お気に入りに追加
440
あなたにおすすめの小説
【完結】いくら溺愛されても、顔がいいから結婚したいと言う男は信用できません!
大森 樹
恋愛
天使の生まれ変わりと言われるほど可愛い子爵令嬢のアイラは、ある日突然騎士のオスカーに求婚される。
なぜアイラに求婚してくれたのか尋ねると「それはもちろん、君の顔がいいからだ!」と言われてしまった。
顔で女を選ぶ男が一番嫌いなアイラは、こっ酷くオスカーを振るがそれでもオスカーは諦める様子はなく毎日アイラに熱烈なラブコールを送るのだった。
それに加えて、美形で紳士な公爵令息ファビアンもアイラが好きなようで!?
しかし、アイラには結婚よりも叶えたい夢があった。
アイラはどちらと恋をする? もしくは恋は諦めて、夢を選ぶのか……最後までお楽しみください。
【コミカライズ決定】魔力ゼロの子爵令嬢は王太子殿下のキス係
ayame
恋愛
【ネトコン12受賞&コミカライズ決定です!】私、ユーファミア・リブレは、魔力が溢れるこの世界で、子爵家という貴族の一員でありながら魔力を持たずに生まれた。平民でも貴族でも、程度の差はあれど、誰もが有しているはずの魔力がゼロ。けれど優しい両親と歳の離れた後継ぎの弟に囲まれ、贅沢ではないものの、それなりに幸せな暮らしを送っていた。そんなささやかな生活も、12歳のとき父が災害に巻き込まれて亡くなったことで一変する。領地を復興させるにも先立つものがなく、没落を覚悟したそのとき、王家から思わぬ打診を受けた。高すぎる魔力のせいで身体に異常をきたしているカーティス王太子殿下の治療に協力してほしいというものだ。魔力ゼロの自分は役立たずでこのまま穀潰し生活を送るか修道院にでも入るしかない立場。家族と領民を守れるならと申し出を受け、王宮に伺候した私。そして告げられた仕事内容は、カーティス王太子殿下の体内で暴走する魔力をキスを通して吸収する役目だったーーー。_______________
心が読める私に一目惚れした彼の溺愛はややヤンデレ気味です。
三月べに
恋愛
古川七羽(こがわななは)は、自分のあか抜けない子どもっぽいところがコンプレックスだった。
新たに人の心を読める能力が開花してしまったが、それなりに上手く生きていたつもり。
ひょんなことから出会った竜ヶ崎数斗(りゅうがざきかずと)は、紳士的で優しいのだが、心の中で一目惚れしたと言っていて、七羽にグイグイとくる!
実は御曹司でもあるハイスペックイケメンの彼に押し負ける形で、彼の親友である田中新一(たなかしんいち)と戸田真樹(とだまき)と楽しく過ごしていく。
新一と真樹は、七羽を天使と称して、妹分として可愛がってくれて、数斗も大切にしてくれる。
しかし、起きる修羅場に、数斗の心の声はなかなか物騒。
ややヤンデレな心の声!?
それでも――――。
七羽だけに向けられるのは、いつも優しい声だった。
『俺、失恋で、死んじゃうな……』
自分とは釣り合わないとわかりきっていても、キッパリと拒めない。二の足を踏む、じれじれな恋愛模様。
傷だらけの天使だなんて呼ばれちゃう心が読める能力を密かに持つ七羽は、ややヤンデレ気味に溺愛してくる数斗の優しい愛に癒される?
【心が読める私に一目惚れした彼の溺愛はややヤンデレ気味です。】『なろうにも掲載』
森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。
玖保ひかる
恋愛
[完結]
北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。
ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。
アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。
森に捨てられてしまったのだ。
南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。
苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。
※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。
※完結しました。
辺境の獣医令嬢〜婚約者を妹に奪われた伯爵令嬢ですが、辺境で獣医になって可愛い神獣たちと楽しくやってます〜
津ヶ谷
恋愛
ラース・ナイゲールはローラン王国の伯爵令嬢である。
次期公爵との婚約も決まっていた。
しかし、突然に婚約破棄を言い渡される。
次期公爵の新たな婚約者は妹のミーシャだった。
そう、妹に婚約者を奪われたのである。
そんなラースだったが、気持ちを新たに次期辺境伯様との婚約が決まった。
そして、王国の辺境の地でラースは持ち前の医学知識と治癒魔法を活かし、獣医となるのだった。
次々と魔獣や神獣を治していくラースは、魔物たちに気に入られて楽しく過ごすこととなる。
これは、辺境の獣医令嬢と呼ばれるラースが新たな幸せを掴む物語。
変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!
utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑)
妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?!
※適宜内容を修正する場合があります
政略結婚だけど溺愛されてます
紗夏
恋愛
隣国との同盟の証として、その国の王太子の元に嫁ぐことになったソフィア。
結婚して1年経っても未だ形ばかりの妻だ。
ソフィアは彼を愛しているのに…。
夫のセオドアはソフィアを大事にはしても、愛してはくれない。
だがこの結婚にはソフィアも知らない事情があって…?!
不器用夫婦のすれ違いストーリーです。
【完結】余命三年ですが、怖いと評判の宰相様と契約結婚します
佐倉えび
恋愛
断罪→偽装結婚(離婚)→契約結婚
不遇の人生を繰り返してきた令嬢の物語。
私はきっとまた、二十歳を越えられないーー
一周目、王立学園にて、第二王子ヴィヴィアン殿下の婚約者である公爵令嬢マイナに罪を被せたという、身に覚えのない罪で断罪され、修道院へ。
二周目、学園卒業後、夜会で助けてくれた公爵令息レイと結婚するも「あなたを愛することはない」と初夜を拒否された偽装結婚だった。後に離婚。
三周目、学園への入学は回避。しかし評判の悪い王太子の妾にされる。その後、下賜されることになったが、手渡された契約書を見て、契約結婚だと理解する。そうして、怖いと評判の宰相との結婚生活が始まったのだが――?
*ムーンライトノベルズにも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる