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覚悟

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その後、あの日に起こった事をお互いに話し合った
私に起こった全ての出来事は、ヴィル様の影と呼ばれる諜報員が全て伝えていたようだ
影はヴィル様の専属であり、何人かいるようだが、キーラ様でさえ顔を見たこともなければ話した事もないという
ヴィル様以外に情報を伝えることはない
そして、手出しをする事もないという
影の身に危険が及べば大事な情報が失われる為、誰にも見つからず決して存在を知られてはいけないのだという

「アリーを助けてあげられなくてすまなかった‥。許してくれ」

「そんな!頭を上げてくださいませ」

「俺の代わりに宰相の息子が助けてくれたようだな」

「はい。ルドルフ様がいらっしゃらなかったら、きっと私は今ここには居ないと思います。ルドルフ様には感謝しております」

「あぁそうだな。感謝してるよ、俺も。俺の影まで使ってくれるとは、なかなかの男なのだな‥」

「えっ?」

「いや、こちらの話だよ。宰相の息子は父親と姉とは意見が違うようだ。君を救う為、味方のように装っていたようだがな。息子は信用出来る」

「私の為に?ルドルフ様がそんな危ないことを?ご自分の立場が失われてしまうかもしれないのに‥」

「そうだな。それほどまでの想いが彼にもあったのだろう‥」

ヴィル様は手をギュッと固く握ると自分のももを思い切り叩いた
そして目を瞑り、眉間に皺を寄せた


その姿に私が彼を傷つけたのだと思った
ヴィル様だけでなく、ルドルフ様にも私のせいで辛い思いをさせたのだと思う



ー 彼ら騎士達を縛り付けるのはもう終わりにしましょう‥
私のことも自由にして欲しいの ー


え?

頭の中にふと言葉がよぎる

何のことだろう‥



「アリー?アリー?」

「あっ‥すみません」

「アリー、夜会は3日後だ。私と一緒に参加して欲しい。君にとって辛い事になるかもしれないが、母親の冤罪を晴らしたいのなら覚悟を持って欲しい」

「解っております。覚悟はできております。お願いしたのは私の方です。ヴィル様には、ご迷惑をお掛けしてしまって申し訳ありません」

「いや。私は君を妃にしたいという目的がある。そして私には、アルンフォルトの次期国王として、国の為になることをやらせて貰う。君を悲しませる結果になるかもしれないが‥」

「いえ、ヴィル様の思うようになさってください。信じて付いて行くと決めたのは私でございます」

「ありがとう。さぁ、それまでに少しでも良くなるように体を休めて。サアラ、後で薬湯を頼む。では、これで行くよ。また後で様子を見に来るよ。足も冷やさないとだからね」

ニッコリと笑い部屋を出て行った

戸が閉まると、体の力が抜け、思わずベッドに倒れ込んでしまう

「お嬢様、今薬湯をお持ちしますね」

「ええ、お願い」

足の痛みだけではなく、腹を蹴られたせいで全身に打ち身のような痛みが残っていた
皆が心配する為、我慢しているが、気を抜くと起きているのも辛くなる
寝返りすら痛みを感じる

ここまで人に恨まれるというのは、自分はそんなに悪い事をしたのだろうかと何度も考えた
殺したいほどに憎い‥
その対象は私だったのだ

「アリアンお嬢様、薬湯をお飲みください。体がお辛いのでしょう?」

「ありがとう、サアラ」

薬湯を飲むと痛みが和らぎ、眠たくなってくる

「少し休むわ」

「ええ、そうなさってくださいませ。お側におりますので、ご安心ください」

「いつもありがとう」

眠った後、アリアンの目からは一筋の涙が流れ落ちていた
サアラはその涙をそっと拭くと、彼女の悲しみがどれだけ深いのかと苦しくなったのだった







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