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ヴィルの嫉妬と謎の美女2
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皆の表情が強張っているのを感じて私も息苦しくなっていた
「それじゃあ屋敷に戻るよ。急用が入ったようだからね」
「そうなのですね。お忙しいのに私の為に申し訳ございませんでした」
「いや、いいんだ。俺にとっても至福の時間だったよ。アリー美味しかったかい?」
「はい。とても美味しくて感激いたしました」
「それは良かった」
いつもの優しい笑顔に戻っている
私の方に歩いて来ると手を取り立ち上がらせてくれた
一歩踏み出した途端、その手を思い切り引き寄せられ、前のめりになると次の瞬間ヴィル様の胸の中に強く抱き締められていた
「君の為なら何でもするが、君を離してあげることは出来ない。ごめんねアリー」
その力は段々と強くなり息さえ出来ない
苦しい‥もう‥止めて
「殿下!お止めください」
キーラ様が急いでヴィル様の手を緩めると私は思わずふらついてしまい、キーラ様が咄嗟に支えてくれる
「アリアン様を潰すおつもりですか!」
はぁ‥はぁ‥はぁ‥呼吸を何度も繰り返す
頭が真っ白になるようだ
「アリーすまない!許してくれ、大丈夫か?」
キーラ様の手から奪い返すように私の腰を支えると心配そうに謝った
自分でも驚いているかのようだ
「感情が抑えられなかった、すまない。どうか許してくれ」
「いえ、大丈夫ですから‥気になさらないでください」
少し、もたれかかるようになりながら気丈に振る舞った
私が何か嫌な思いをさせてしまったのだ
「ごめん。アリーが奪われそうで怖かったんだ‥」
私の指を掬い上げると唇を押し付けそのまま頬へずらすと
「指先が冷たい、俺のせいだね」
と温めるように頬に強く押し付けた
泣きそうな顔をしている
それは怯えるような不安な表情に見えた
先程まで私に自信を持ってと力強く話してくれたヴィル様とは正反対だ
そもそも誰に奪われるというのだろう‥
ヴィル様は心配性のようだ
「誰も奪いませんよ」
何だか可愛らしく思えて笑ってしまう
ふふっと笑った私の顔を見てヴィル様はホッとしたように急に笑顔になった
「あぁそうだね。アリーは俺のものだから奪わせないよ。絶対に」
額をコツンと合わせ、愛してるよアリー
と囁いた
「さぁ、行こう。皆すまなかった」
重苦しかった空気がぱっと軽くなったようにヴィルドルフは軽やかに歩き出した
後ろに続くキーラとラウルとサアラの表情が曇っていた事などヴィルドルフは気付かない
キーラはすぐ後ろを歩きながら恐ろしく思っていた
こんな些細な事でも感情を抑えられないこの男が、アリアンを妃にして国を背負っていけるのかと‥
もし万が一にも、アリアンが離れようとしたならば、この男はどうなってしまうのだろうかと‥
自然と三人は顔を見合わせた
何も口にしないが、同じような不安を覚えたのは間違いないだろう
店の外は今だに人が大勢集まっている
まるで出て来るのを待ち続けていたかのようだ
入った時よりも多くなっているのは気のせいではないだろう
馬車はすぐ側まで来ていたが、店の前ではなかった
ヴィルドルフのエスコートでアリアンは馬車に向かって歩き出した
きっと王太子を一目見ようと噂が広まったのね‥
仕方がないわ、普段は無い事だもの
こんなに素敵なヴィル様を見たいと思うのは当たり前だわ‥
心の中で呟くと馬車に乗り込んだ
ー 実際は、すごい美人が見れると噂が広がったのだが知る由もないことである ー
馬車が行った後、残された民衆は大騒ぎしていた
「見たかよあの美人」
「すごいよな、何者なんだろうな」
「まるで絵本から出てきたお姫様ね」
「あんな嫁が居たら家に飾っておくな」
「緊張して手も握れないだろうな」
「それどころか心配で側を離れられないだろうな」
「肌が透き通るように白くて綺麗だったわね!私なんてシミだらけよー」
「あんなに美人に生まれたら幸せでしょうね」
それから暫く王都の街は、謎の美女の噂で持ち切りになったのである
当の本人は全く知らないところで有名人となっていたのはまた別のお話である
「それじゃあ屋敷に戻るよ。急用が入ったようだからね」
「そうなのですね。お忙しいのに私の為に申し訳ございませんでした」
「いや、いいんだ。俺にとっても至福の時間だったよ。アリー美味しかったかい?」
「はい。とても美味しくて感激いたしました」
「それは良かった」
いつもの優しい笑顔に戻っている
私の方に歩いて来ると手を取り立ち上がらせてくれた
一歩踏み出した途端、その手を思い切り引き寄せられ、前のめりになると次の瞬間ヴィル様の胸の中に強く抱き締められていた
「君の為なら何でもするが、君を離してあげることは出来ない。ごめんねアリー」
その力は段々と強くなり息さえ出来ない
苦しい‥もう‥止めて
「殿下!お止めください」
キーラ様が急いでヴィル様の手を緩めると私は思わずふらついてしまい、キーラ様が咄嗟に支えてくれる
「アリアン様を潰すおつもりですか!」
はぁ‥はぁ‥はぁ‥呼吸を何度も繰り返す
頭が真っ白になるようだ
「アリーすまない!許してくれ、大丈夫か?」
キーラ様の手から奪い返すように私の腰を支えると心配そうに謝った
自分でも驚いているかのようだ
「感情が抑えられなかった、すまない。どうか許してくれ」
「いえ、大丈夫ですから‥気になさらないでください」
少し、もたれかかるようになりながら気丈に振る舞った
私が何か嫌な思いをさせてしまったのだ
「ごめん。アリーが奪われそうで怖かったんだ‥」
私の指を掬い上げると唇を押し付けそのまま頬へずらすと
「指先が冷たい、俺のせいだね」
と温めるように頬に強く押し付けた
泣きそうな顔をしている
それは怯えるような不安な表情に見えた
先程まで私に自信を持ってと力強く話してくれたヴィル様とは正反対だ
そもそも誰に奪われるというのだろう‥
ヴィル様は心配性のようだ
「誰も奪いませんよ」
何だか可愛らしく思えて笑ってしまう
ふふっと笑った私の顔を見てヴィル様はホッとしたように急に笑顔になった
「あぁそうだね。アリーは俺のものだから奪わせないよ。絶対に」
額をコツンと合わせ、愛してるよアリー
と囁いた
「さぁ、行こう。皆すまなかった」
重苦しかった空気がぱっと軽くなったようにヴィルドルフは軽やかに歩き出した
後ろに続くキーラとラウルとサアラの表情が曇っていた事などヴィルドルフは気付かない
キーラはすぐ後ろを歩きながら恐ろしく思っていた
こんな些細な事でも感情を抑えられないこの男が、アリアンを妃にして国を背負っていけるのかと‥
もし万が一にも、アリアンが離れようとしたならば、この男はどうなってしまうのだろうかと‥
自然と三人は顔を見合わせた
何も口にしないが、同じような不安を覚えたのは間違いないだろう
店の外は今だに人が大勢集まっている
まるで出て来るのを待ち続けていたかのようだ
入った時よりも多くなっているのは気のせいではないだろう
馬車はすぐ側まで来ていたが、店の前ではなかった
ヴィルドルフのエスコートでアリアンは馬車に向かって歩き出した
きっと王太子を一目見ようと噂が広まったのね‥
仕方がないわ、普段は無い事だもの
こんなに素敵なヴィル様を見たいと思うのは当たり前だわ‥
心の中で呟くと馬車に乗り込んだ
ー 実際は、すごい美人が見れると噂が広がったのだが知る由もないことである ー
馬車が行った後、残された民衆は大騒ぎしていた
「見たかよあの美人」
「すごいよな、何者なんだろうな」
「まるで絵本から出てきたお姫様ね」
「あんな嫁が居たら家に飾っておくな」
「緊張して手も握れないだろうな」
「それどころか心配で側を離れられないだろうな」
「肌が透き通るように白くて綺麗だったわね!私なんてシミだらけよー」
「あんなに美人に生まれたら幸せでしょうね」
それから暫く王都の街は、謎の美女の噂で持ち切りになったのである
当の本人は全く知らないところで有名人となっていたのはまた別のお話である
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