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夜会の知らせ

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ヴィル様とお会いした夜から一週間後の昼過ぎ
急に屋敷が慌ただしくなった
昼食をレイと食べ終えた頃、サリーが駆け込んで来た

「旦那様が王宮から帰っていらしたそうよ。それで皆に話があるから広間に集まって欲しいって。使用人も全員だって。
急いで」

「何かあったの?」

「さぁ、ここ最近王宮に泊まり込みでお仕事されていたようだから何かあったのかもしれないわね」

ドクンと心臓が大きく音を立てた

「とにかく早く広間に向かうわよ」

廊下に出ると使用人達があちこちから小走りに広間に向かっている
私達もその波にのまれ広間に移動した
使用人達の並びも、前列は執事や侍女頭を先頭に侍女やメイド達貴族出身の者達から並んでいる
平民の使用人は一番後ろだ
私はレイとサリーと一緒に一番後ろに並んだ
しばらくして主人のラリー・サマフォート公爵が入って来た
その後に長男ラウル、妻リリアーナ、娘のエリナが続いた
執事が全員揃ったことを告げると頷いた 
妻のリリアーナは後妻で、エリナを連れて公爵家に嫁いできた
ラウルの母は、ラウルが6才の時に亡くなったらしい
レイが教えてくれた
リリアーナとは王宮で面識があるが、私がここで使用人をしていることは知らない
知られてはいけないのである
公爵はコホンと咳をひとつすると

「忙しいところ、皆に集まってもらったのには訳がある。この度、隣国アルンフォルトから王太子殿下がおいでになられた。そこで、王家主催の夜会が開かれることとなった。
貴族は皆招待され、令嬢はデビュタントを終えた者が招待される
ただし王太子殿下は以前、王妃主催の茶会にいらしたことがある
その時の茶会に出席した令嬢は、デビュタントを果たしていなくとも全員招待される
たとえその令嬢が貴族でなくとも出席せよと命じられている」

ラリー公爵は目で私を探すように見回し、私と目が合うと僅かに頷いた

「お父様、貴族でないとはどういう意味ですの?その者がなぜ招待を?」

「まだ話は途中だ」

「申し訳ございません」

声を上げたエリナを強く制した公爵は話を続けた

「夜会は一ヶ月後に王宮で行われる。
その間、王太子殿下は四大公爵家を回り領地の視察もされる。
我がサマフォート家にも王太子殿下がおいでになる。
我が公爵家は四番目で三週間後だ。
皆には準備を進めて貰いたい。
晩餐の用意は間に合うか?ダン」

「はい、お任せください」

「よし」

「お泊まりになられるから客室も用意せよ」

「かしこまりました」

侍女頭が頭を下げる

「では以上だ。皆王太子殿下に粗相の無いよう準備せよ」

「かしこまりました」

全員が頭を下げる
使用人が次々と広間を出る
その流れに沿って私達も出た

心臓がドクドクとうるさい
私はデビュタントを果たしていない
その年を迎えているが出席を許されていなかった
私の存在など誰も知らないだろう
貴族ではなくなった私のことを言っているのだろうか
何かが動き出すような期待と不安が次々溢れ出てくる
何が起ころうとしているの‥


広間には主人のラリー、ラウル、リリアーナ、エリナの4人が残っていた

「お父様、王太子殿下はローズ王女と婚約されているのですよね?」

「あぁ今はな」

「では、我が公爵家を訪れて、もし王太子殿下が心変わりをされたら新たな婚約者になれるかしら?」

「さぁな、婚約者が変わるかもしれないな」

「まぁお母様!私自信がありますわ。
王太子殿下に見初められれば大国の王妃ですわ」

「そうね、エリナは美人だからきっと王太子殿下は声を掛けてくださるわ。早くドレスを仕立てなきゃいけないわね、何着いるかしら?夜会もあるから混み合うわよ。とにかく急がなきゃいけないわ。
今すぐ馬車を用意させましょ」

二人は興奮して慌てて部屋を出て行った

「哀れな人間だな」

「まったくです」

ラリーは大きくため息をつき、ラウルも嘲笑った
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